公開日: 2026-02-17
株のPBRとは株価純資産倍率のことで、株価が企業の純資産に対して何倍まで買われているかを示す指標です。
企業の貸借対照表に基づく「資産価値」と、実際の株価を比較するために使われます。
純資産は、企業がすべての資産を現金化し、負債を返済した後に残る価値であるため、PBRはしばしば企業の「解散価値」と株価の関係を表す指標と説明されます。
一般的に、PBRが1倍であれば、株価は理論上の純資産価値と同水準にあると考えられます。
投資家がPBRを重視する理由は、株価が割安かどうかを判断する材料になるためです。
特に日本株ではPBR1倍を下回る企業も多く、バリュー株投資や中長期投資において、重要な基礎指標として広く活用されています。

PBRの計算方法と具体例
PBRは、現在の株価が企業の純資産に対して何倍で評価されているかを示す指標で、計算方法は非常にシンプルです。
■ PBRの計算式
PBR = 株価 ÷ 1株当たり純資産(BPS)
ここでいう
株価:市場で取引されている現在の株価
1株当たり純資産(BPS):企業の純資産を発行済株式数で割った数値
となります。
■ 実際の株価を使った簡単な計算例
例えば、
株価:2.000円
1株当たり純資産(BPS):1.600円
この場合のPBRは、
2.000円 ÷ 1.600円 = 1.25倍
となります。
これは、企業の純資産価値に対して25%上乗せされた価格で株が取引されていることを意味します。
■ 証券会社の画面での確認方法
実際の投資では、PBRを自分で計算する必要はほとんどありません。
多くのネット証券や株式情報サイトでは、銘柄情報の中に
PBR
PER
ROE
などの指標があらかじめ表示されています。
銘柄詳細画面の「指標」「財務情報」「企業情報」といった項目を確認すれば、最新のPBRをすぐにチェック可能です。
そのため、投資家は数値の意味を理解し、他銘柄や過去水準と比較することが重要になります。
株のPBR目安|1倍は何を意味するのか
PBRを見るうえで、投資家がまず注目する基準が「1倍」です。
この数値は、株価と企業の純資産価値の関係を判断する目安として広く使われています。
■ PBR=1倍の意味
PBRが1倍とは、株価が1株当たり純資産(BPS)と同じ水準で取引されている状態を指します。
理論上は、企業を解散して資産をすべて現金化し、負債を返済した場合に残る価値と、株価が一致している水準です。
そのため、PBR1倍は
割高でも割安でもない
市場が企業価値を「資産ベース」で評価している
と考えられる基準点とされています。
■ PBRが低い株(1倍割れ)の特徴
PBRが1倍を下回る株は、純資産価値よりも低い評価で取引されていることになります。
一見すると「割安」に見えるため、バリュー投資家の注目を集めやすい水準です。
ただし、PBR1倍割れの企業には、
業績の伸び悩み
将来の成長性に対する不安
収益力(ROE)が低い
といった理由があるケースも少なくありません。
単純に「安いから買い」と判断するのではなく、なぜ低いのかを確認することが重要です。
■ PBRが高い株に多い企業の傾向
一方で、PBRが高い株は、純資産に対して株価が大きく上乗せされている状態です。
これは、市場がその企業に対して
高い成長性
将来の収益拡大
ブランド力や技術力
といった無形の価値を評価していることを意味します。
IT企業や成長企業にPBRが高い傾向が見られるのは、資産よりも将来の利益創出力が重視されるためです。
ただし、期待が先行しすぎると、業績悪化時に株価が大きく調整されるリスクもあります。
PBRが低い=割安とは限らない理由

PBRが低い銘柄、特に1倍を下回る株は一見すると割安に見えますが、必ずしも投資妙味があるとは限りません。
その理由は、株価が低く評価されている背景に、企業固有の問題が隠れていることが多いためです。
■ 業績悪化・構造的問題を抱えるケース
PBRが低い企業の中には、
売上や利益が長期的に減少している
主力事業の競争力が低下している
市場そのものが縮小している
といった構造的な業績悪化を抱えている場合があります。
このような企業では、純資産が存在していても、将来その資産を十分に活用して利益を生み出せないと市場が判断しているため、株価が低迷し、PBRも低くなります。
■ 不採算事業・過去の資産評価の影響
PBRは貸借対照表上の「純資産」を基に算出されますが、その中には
採算の合わない事業に投下された資産
実態より高く評価された固定資産
過去の買収によるのれん
などが含まれている場合があります。
これらの資産は帳簿上は価値があっても、実際の収益力には結びつかないことがあり、将来的に減損処理が行われると、純資産自体が目減りする可能性もあります。
その結果、「PBRが低い=安全」という前提が崩れることも少なくありません。
■ 「PBR低下トラップ」に注意
このように、PBRが低い状態が長期間続き、株価がなかなか上昇しない銘柄は、いわゆる「PBR低下トラップ」に陥っている可能性があります。
PBR低下トラップとは、
数値上は割安に見える
しかし業績改善の兆しがなく
市場評価が回復しない
という状態を指します。
こうした銘柄を避けるためには、
ROEや営業利益率など収益力指標を確認する
事業構造改革や成長戦略が進んでいるかを見る
過去数年のPBR推移を比較する
といった複数指標を組み合わせた判断が不可欠です。
PBRとPERの違いと使い分け
株式投資では、PBRと並んでPER(株価収益率)も非常によく使われます。
どちらも「割安・割高」を判断する指標ですが、見ているポイントがまったく異なるため、使い分けが重要です。
■ PBR:資産価値重視の指標
PBRは、企業が保有している純資産に対して株価が何倍かを見る指標です。
貸借対照表をベースにしており、企業の財務の厚み・安全性を評価するのに向いています。
PBRが参考になりやすいのは、
銀行・保険などの金融株
製造業・商社など資産を多く持つ企業
業績が安定している成熟企業
といった、資産価値が企業評価に直結しやすい銘柄です。
■ PER:利益水準重視の指標
一方、PERは
PER = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
で計算され、現在の利益水準に対して株価が何倍かを示します。
PERは、
企業がどれだけ効率よく利益を生み出しているか
投資資金を何年で回収できる水準か
といった視点で使われ、収益力や成長性の評価に適しています。
■ 成長株・バリュー株での使い分け方
PBRとPERは、投資スタイルによって使い分けるのが基本です。
バリュー株投資では、
PBRが低い
財務が健全
ROEが改善傾向
といった条件を重視し、PBRを軸に割安性を判断するケースが多くなります。
一方、成長株投資では、
将来の利益成長が期待される
現時点では利益が小さい
といった企業が多いため、PBRが高くても問題視されにくく、PERや利益成長率が重視されます。
■ PBRとPERは組み合わせて使うのが基本
実際の投資判断では、
PBRが低く、PERも極端に高くない
PBRは高めでも、PERが低下傾向
など、両指標を組み合わせて確認することが重要です。
PBRは「守り」、PERは「攻め」の指標とも言われ、両方を理解することで、よりバランスの取れた投資判断が可能になります。
業種別に見るPBRの考え方
PBRはすべての業種に同じ基準で当てはめられる指標ではありません。
業種ごとにビジネスモデルや資産構成が大きく異なるため、適正なPBR水準も変わる点を理解することが重要です。
■ 銀行・保険など金融株のPBR
銀行や保険会社などの金融株は、PBRが特に重視されやすい業種です。
その理由は、ビジネスモデルが資産(貸出金・有価証券)を使って利益を生み出す構造になっているためです。
金融株では、
純資産=事業の土台
ROEとPBRの関係が明確
という特徴があり、PBR1倍が一つの重要な評価基準として使われることが多くなります。
一般的に、
ROEが低い銀行 → PBRは1倍を下回りやすい
ROEが安定して高い銀行 → PBRは1倍超
となる傾向があります。
そのため金融株では、PBR単体ではなくROEとセットで判断することが不可欠です。
■ 製造業・商社のPBR
製造業や総合商社は、
工場
設備
在庫
投資有価証券
など、実物資産を多く保有する業種です。
このため、PBRは企業価値を測るうえで比較的参考になりやすい指標とされています。
ただし製造業では、
設備投資の負担が重い
景気変動の影響を受けやすい
といった特性があり、PBRが低くても業績の波が大きい企業も存在します。
商社の場合は、
資源価格
投資先企業の価値
などが純資産に影響するため、PBRの水準だけでなく、資産の中身を確認することが重要になります。
■ IT・グロース株でPBRが高くなりやすい理由
IT企業やグロース株では、PBRが数倍〜10倍以上になることも珍しくありません。
これは割高というよりも、PBRの前提となる純資産に表れない価値が大きいためです。
具体的には、
ソフトウェアやプラットフォーム
技術力・データ
ブランド力
将来の成長性
といった無形資産が、貸借対照表に十分反映されていないケースが多くなります。
そのため、IT・グロース株では
PBRの水準そのものは参考程度
売上成長率や利益成長、ビジネスモデル
といった成長指標を重視する判断が一般的です。
PBRが高いからといって、必ずしも割高とは限らない点が、この業種の大きな特徴です。
PBRを使った実践的な投資判断のコツ
PBRは便利な指標ですが、単独で使うと誤った判断につながる可能性があります。
実践的な投資判断では、他の指標や時間軸と組み合わせて使うことが重要です。
■ ROEと組み合わせて見る重要性
PBRを見る際に、最も重要な組み合わせがROE(自己資本利益率)です。
ROEは、純資産を使ってどれだけ効率よく利益を生み出しているかを示す指標で、PBRと密接な関係があります。
一般的に、
ROEが高い企業 → 市場評価が高まり、PBRも高くなりやすい
ROEが低い企業 → 純資産を十分に活用できておらず、PBRは低迷しやすい
という傾向があります。
そのため、
PBRが低く、ROEが改善傾向にある企業
PBRが1倍未満でも、ROEが安定して高い企業
は、将来的な評価見直し(リレーティング)が起こる可能性があり、投資対象として注目されます。
■ 過去のPBRレンジとの比較
株のPBRとは、過去と比較することで初めて意味を持つ指標でもあります。
同じ企業でも、業績や市場環境によってPBRの水準は大きく変動します。
例えば、
過去5年間はPBR1.2〜1.5倍で推移
現在はPBR0.8倍
といった場合、市場評価が大きく低下していることがわかります。
この評価低下が一時的な要因なのか、それとも構造的な問題なのかを見極めることが重要です。
過去のPBRレンジと比べて、
業績は改善している
財務は悪化していない
にもかかわらずPBRが低い場合、見直し買いの余地がある銘柄と判断されることがあります。
■ 中長期投資での活用方法
PBRは、短期的な売買よりも中長期投資に向いた指標です。
なぜなら、企業の純資産や財務体質は、短期間で大きく変化しにくいためです。
中長期投資では、
PBRが低水準で推移している
財務が健全で倒産リスクが低い
ROEや利益率が徐々に改善している
といった条件を満たす企業を選び、企業価値の向上に伴う株価上昇を狙う戦略が有効です。
特に日本株では、
自社株買い
配当強化
資本効率改善(ROE向上)
などを通じて、PBR改善を意識した経営が進んでおり、中長期での評価見直しが期待できる場面も増えています。
よくある質問(FAQ)
Q1.株のPBRがマイナスになることはある?
PBRがマイナスになることはあります。PBRは株価を1株当たり純資産で割って算出されるため、企業の純資産がマイナスの場合、PBRもマイナスになります。これは累積赤字や大規模な減損処理などにより、負債が資産を上回っている状態を意味します。純資産がマイナスの企業は財務リスクが非常に高く、一般的には長期投資やバリュー投資の対象としては慎重な判断が求められます。
Q2.日本株はなぜPBRが低い企業が多い?
日本株にPBRが低い企業が多い背景には、いくつかの構造的な要因があります。日本企業は伝統的に内部留保を重視し、資本効率よりも財務の安定性を優先してきました。その結果、自己資本が厚くなる一方で、ROEが低水準にとどまりやすく、市場から高い評価を受けにくい傾向があります。また、成長投資や株主還元が控えめであったことも、株価が純資産に対して割安に放置されやすい要因となっています。
Q3.PBR改善を重視する東証の取り組みとは?
東京証券取引所は近年、特にPBR1倍を下回る企業に対して、資本効率や株価を意識した経営を求める姿勢を強めています。企業に対し、PBRが低迷している理由の分析や、ROE向上・株主還元強化・事業ポートフォリオの見直しといった具体的な改善策の開示を促しています。これにより、市場では自社株買いや配当強化、経営改革に踏み切る企業が増え、PBR改善を通じた企業価値向上が重要な投資テーマとして注目されています。
結論|株のPBRは「使い方」が重要
株のPBRとは、株価が企業の純資産に対して割安か割高かを判断するうえで有用な指標ですが、単独で投資判断を行うには限界があります。PBRが低いからといって、必ずしも将来株価が上昇するとは限りません。
そのため、実際の投資では、ROEやPER、業績動向など他の指標と組み合わせて判断することが重要です。特に、PBRが低くても収益力が改善している企業は、市場評価が見直される可能性があります。
初心者がまず意識すべきポイントは、PBRの数値そのものよりも「なぜその水準なのか」を考えることです。企業の財務状況や事業内容を確認し、PBRを企業分析の入り口として活用することで、より納得感のある投資判断につながります。
免責事項:この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。