利上げなのに円安はなぜ起きる?その理由をわかりやすく解説
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利上げなのに円安はなぜ起きる?その理由をわかりやすく解説

著者: 高橋健司

公開日: 2025-12-25

一般的に、中央銀行が利上げを行うと金利の高い通貨が買われやすくなり、「利上げ=円高」になると考えられています。しかし現実の為替市場では、日本が利上げを発表した後でも円安が進む場面が少なくありません。このギャップに疑問を感じる人も多いでしょう。


本記事では、利上げなのに円安はなぜ起きるのかについて、市場の仕組みや投資家の考え方を踏まえ、初心者にも分かりやすく解説していきます。

直近6ヶ月の米ドル円

利上げと為替の基本関係

為替相場は、各国の通貨の需要と供給によって決まります。その中でも特に重要な要素が金利です。一般的に、金利が高い国の通貨は、利回りを求める投資資金が集まりやすくなるため、通貨価値が上昇しやすい傾向があります。


高金利通貨が買われやすい理由は、預金や債券などで得られる利息が多くなるからです。投資家は、より高い金利を得るために資金を低金利の国から高金利の国へ移動させます。この動きは「金利差取引(キャリートレード)」として知られており、結果として高金利国の通貨が買われ、低金利国の通貨が売られやすくなります。


このため、教科書的には中央銀行が利上げを行うと、その国の通貨は魅力が高まり、為替市場では通貨高が進むと説明されます。「利上げ=円高」と考えられるのは、こうした金利と資金移動の基本的な仕組みに基づいているためです。ただし、実際の市場ではこの関係が必ずしも単純に成り立つわけではありません。


利上げなのに円安はなぜ起きるの?主な理由

① すでに市場に織り込まれている

利上げが市場予想どおりであった場合、為替市場はその情報を前もって価格に織り込んでしまいます。


日銀が利上げすると見込まれていたため、実際の利上げ発表後に新たな買い材料とはならず、むしろ「材料出尽くし」として円売りが進むことがあります。実際、日銀が政策金利を0.75%へ引き上げた際には、事前に織り込まれていたため為替は逆に円安方向へ進む場面が見られました。


② 海外との金利差が依然として大きい

利上げをしても、日本の金利水準は他国に比べて低いままという状況が続いています。例えば米国や欧州は既に高金利を維持しており、依然として日米の金利差が大きいため、投資家はより高い利回りを求めてドルなどの通貨を選好します。この金利差が縮まりにくい限り、円は買われにくい状態が続きやすいのです。


③ 利上げの目的が「景気抑制」ではない

日本の場合、利上げはインフレを抑えるというより、長年のデフレ脱却と緩やかな物価上昇の定着を目指す側面が強く、実質金利は依然として低く緩和的です。このため市場には「利上げしても金融引き締めとは言えない」との見方が広がっており、円高材料として評価されにくくなっています。実際、日銀自身が利上げ後の声明で「まだ緩和的な金融環境」と表現していることが報じられています。


④ 投資家心理・リスク選好の影響

投資家心理やリスク選好も為替に影響します。


  • リスクオンの局面(株高・景気期待)では、安全資産とされる円が売られやすくなります。

  • 一方で金利差が大きいと、アービトラージとして「円を借りて高金利通貨を買う」といったキャリートレードが活発になり、円安圧力が強まります。実際、日銀の利上げ観測が高まっても、市場ではキャリートレードのポジションが残っているとの見方が出ています。


投資・FX取引への影響

利上げと円安の関係を正しく理解することは、株式投資やFX取引において非常に重要です。ニュースの見出しだけを見て判断すると、思わぬ損失につながる可能性があります。


1.為替相場を読む際の注意点

為替相場は、「事実」ではなく「期待と比較」で動きます。


利上げそのものよりも、「市場がどこまで織り込んでいたのか」「想定より強い内容だったのか」が重要です。発表内容が予想通り、あるいは弱いと判断されれば、利上げ後でも円安が進むことがあります。投資家は政策の背景や声明文、今後の利上げペースまで含めて総合的に判断する必要があります。


2.「利上げ=買い」という単純思考の危険性

「利上げ=円高=円を買えばいい」という考え方は、実際の市場では通用しにくくなっています。


特に日本の場合、利上げ幅が小さく、海外との金利差が大きいままだと、円は引き続き売られやすい通貨と見なされます。表面的な材料だけで取引すると、高値づかみや逆行リスクが高まるため注意が必要です。


3.長期・短期での見方の違い

短期的には、利上げ発表直後の値動きは市場のサプライズ度や投資家心理に左右されます。一方、長期的には金利差の縮小、経済成長率、貿易収支などのファンダメンタルズが為替を方向づけます。


そのため、デイトレードや短期売買ではイベントリスク管理が重要となり、長期投資では「本当に円高につながる環境が整っているか」を見極める視点が欠かせません。


よくある質問(FAQ)

Q1.利上げすれば必ず円高になりますか?

いいえ、必ず円高になるわけではありません。


利上げは本来、通貨高要因とされますが、為替相場は「利上げしたかどうか」よりも市場の予想との違いや他国との金利差を重視します。すでに利上げが予想されていた場合は、発表後に円が買われず、逆に円安が進むこともあります。


Q2.今後、日本が本格的に利上げすれば円高になりますか?

本格的な利上げが行われ、海外との金利差が明確に縮小すれば、円高要因になる可能性は高まります。


ただし、利上げのペースが緩やかで、米国などが高金利を維持している場合は、円高効果は限定的になることもあります。円高になるかどうかは、金融政策だけでなく、景気動向や投資家心理も含めて判断されます。


Q3.為替介入と利上げの違いは?

為替介入と利上げは、目的も手段も異なります。


  • 利上げは、中央銀行が政策金利を引き上げ、金融環境を調整する中長期的な政策です。

  • 為替介入は、政府・財務省が市場で直接円を買ったり売ったりして、短期的に為替の急変を抑える措置です。


為替介入は即効性がありますが、効果は一時的になりやすく、利上げは効果が出るまで時間がかかるという特徴があります。


結論

利上げなのに円安はなぜ起きるのかを探る投資家について、重要なのは、日本の金利が上がったかどうかではなく、他国と比べてどうなのかという「相対的な金利差」です。海外の金利が依然として高ければ、円は買われにくい状態が続きます。


また、市場は実際の利上げよりも事前の期待や予想との違いを重視します。利上げが想定内であれば、円高材料とはならず、円安が進むこともあります。今後の為替を見る際は、政策の内容だけでなく、市場の期待や金融政策の方向性全体をあわせて判断することが重要です。


免責事項:この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。