公開日: 2025-12-12
S&P500は、アメリカを代表する大企業500社で構成される指数で、世界でも最も投資家から注目されている株価指標の一つです。過去数十年にわたり安定した成長を続けており、S&P500の年利の高さは長期的な資産形成に大きく貢献してきました。
日本でも投資信託やETFを通じて手軽に投資できることから、インデックス投資の中心として個人投資家から強い支持を得ています。
S&P500の年利とは?(長期データの紹介)

S&P500の平均年利は、長期で見るとおおむね年7〜10%前後と言われています。これは、過去数十年にわたり米国経済全体が継続して成長し、主要企業が株価指数の中で入れ替わりながら進化してきたことによるものです。
また、年利を語る際にはインフレ調整前後の違いも重要です。
名目ベース(インフレ調整前)では7〜10%程度
実質ベース(インフレ調整後)では5〜7%程度に落ち着くことが多く、物価の影響を差し引くと実際の購買力の伸びがより明確になります。
S&P500のリターンが比較的安定しているのは、構成銘柄が固定ではなく、常にアメリカの成長企業が選び直される仕組みによるものです。景気低迷で業績が落ち込んだ企業は除外され、新たに成長力のある企業が加わることで、指数全体として「強い企業の集合体」として維持されます。そのため、長期的に見ると安定した年利を生み出しやすい特性があります。
S&P500の年利が高い理由
S&P500の年利が長期的に高い水準を維持してきた背景には、いくつかの構造的な強みがあります。
① 採用銘柄が成長企業に常に入れ替わる仕組み
S&P500は、一度選ばれた企業が固定されるわけではなく、業績が悪化したり競争力を失った企業は指数から除外されます。代わりに、新たに成長性の高い企業や市場をリードする企業が組み込まれます。この“自然な新陳代謝”によって、指数全体が常にアメリカ経済の最前線に立つ企業群で構成されるため、長期的なリターンが高まりやすくなっています。
② テクノロジー企業の比率が高い
現代のS&P500では、Apple、Microsoft、NVIDIA、Amazonといった世界トップクラスのテック企業が大きなウェイトを占めています。テクノロジー分野は成長スピードが速く、利益率も高いことから、指数全体のパフォーマンスを押し上げる原動力になっています。特に近年は、AI・クラウド・半導体などの分野が長期的成長を牽引しています。
③ アメリカ経済の長期的な拡大
アメリカは長年にわたり人口増加、消費力の強さ、革新的な企業文化などを背景に、経済規模を拡大し続けてきました。GDPが成長するということは、企業の売上や利益も伸びるということであり、それが株価の上昇につながります。S&P500はアメリカ経済全体の成長をそのまま反映しやすい指数といえます。
④ 世界中の投資資金が流入する
S&P500は世界でもっとも注目されている株価指数であり、海外の機関投資家や個人投資家から継続的に資金が流れ込んでいます。資金流入は株価を押し上げる要因になるため、指数が長期的に上昇しやすい環境が整っています。また、米国市場の透明性や企業情報の開示レベルの高さも、安全性を求める投資家の資金を惹きつけています。
過去の相場動向:暴落と回復のサイクル
1. リーマンショック(2007〜2009年)
2007〜2009年の世界金融危機では、S&P500は高値から約50〜56%下落しました。この期間は「弱気相場」とされ、株価が急激に落ち込んだだけでなく、景気悪化の影響も大きかったため、回復までに時間がかかりました。実際、ピーク時の水準に戻るには約5年半〜6年程度を要したという分析もあります。
2. コロナショック(2020年)
一方、2020年のコロナショックでは、S&P500は約1ヶ月ほどの短い期間で30%超の急落を記録しましたが、その後の回復は非常に早く、わずか数カ月〜半年ほどで短期的に高値圏へ戻ったことが特徴です(一般論として、コロナショックの下落と回復はより短期的でした)。
3. 弱気相場・暴落は何度も起きている
株式市場は長期トレンドとして上昇してきましたが、その道のりには複数の弱気相場や暴落がありました。例えば、1970年代のオイルショックや1987年のブラックマンデー、2000年代初頭のドットコムバブル崩壊など、株価が大きく落ち込んだ局面は歴史的に何度も起きています。これらの局面では下落幅や原因が異なりますが、いずれもその後の回復局面が訪れてきた歴史があります。
4. 長期投資で見る回復の強さ
過去のデータを総合すると、株価が一時的に大きく下落しても、長期で持ち続けることでトータルリターンがプラスに転じる可能性が高いという特徴があります。実際、S&P500は短期的な下落後も、1年・5年・10年といった長期期間で見ると累積リターンがプラスになるケースが多く、これは時間を味方につける長期投資戦略の重要性を示しています。
5. ボラティリティ(変動幅)の特徴
株式市場は常に一定のペースで上昇するわけではなく、短期的には急落と急騰を繰り返します。この変動幅(ボラティリティ)は、投資家が一喜一憂する要因となる一方、長期では上昇トレンドが維持される傾向が観察されています。これはS&P500の歴史的チャートからも確認でき、暴落やショック局面がある一方で、全体としては右肩上がりの成長が続いていることが分かります。
S&P500の年利と複利効果
1. 過去の平均リターンから見る複利の力
長期的に見たS&P500の平均年利は、ドル建てで概ね 約10%前後 というデータがあります。インフレを考慮しない名目リターンではこの水準ですが、インフレを考えると6〜7%程度になるという見方もあります。
この平均リターンを「複利(利回りを再投資)」として計算すると、時間の経過ごとに資産が雪だるま式に増えていくため、長期で持つことの効果がとても大きくなるのが特徴です。
2. 複利の具体例:年利8〜10%でも資産は大きくなる
たとえば、年利8%〜10%で複利運用した場合、以下のように資産が増えるイメージになります(理論上の例):
10年後
仮に 100万円 → 約215万円〜260万円に増加
(年利8〜10%で累積)
※増え方は年ごとの変動で変わりますが、積み上げるほど複利効果が効いてきます。
20年後
同じ条件(年利8〜10%)で運用を続けると → 約 465万円〜672万円 以上に増加。
これは配当を再投資し続けた場合の複利効果の例です。
30年後
長期になるほど複利効果は加速度的に大きくなり、
元本100万円 → 数千万円単位になる可能性もある計算になります。
(※実際の市場では年ごとのリターンの変動があり、必ずこの通りになるわけではありませんが、長期・複利のポテンシャルを示す例です。)
なぜ複利が効くのか?
複利効果とは、「得られた利益を再び投資に回して、その利益もさらに利益を生む」仕組みです。
年々利息が「利息を生む」ようになり、時間が長くなるほど増え方が加速します。
これは単純に「年利が良い」というだけでなく、投資した期間が長いほど利益が大きくなる理由でもあります。具体的には:
$100万円 → 年利8% → 10年で約2倍
同じ年利 → 20年で約4倍以上
というように、期間が倍になれば資産増加の効果は単純な足し算ではなく指数的に伸びるというのが複利の力です。
時間を味方につけるメリット
株価は年ごとに大きく変動しますが、20年以上保有する投資家の多くはプラスリターンを得ているという長期データが示す傾向があります。
特に短期では下落局面もありますが、複利効果と時間が重なることで長期投資の成果が出やすくなるのがS&P500の特徴です。
S&P500の年利を左右する要因
S&P500の年利は、長期では安定的に推移してきていますが、短期〜中期ではさまざまな要因によって大きく変動します。ここでは年利に影響を与える主要要因をわかりやすく整理します。
① FRB(米連邦準備制度)の金融政策
S&P500に最も強い影響を与えるのが、FRBによる金融政策です。
利上げ
→ 企業の借入コスト上昇、景気冷え込み、株価は下がりやすい
利下げ
→ お金が回りやすくなり、企業業績が改善し株価は上がりやすい
量的緩和(QE)
→ 市場にマネーが大量に供給され、S&P500が強く上昇しやすい
投資家は、FRBの声明や利上げ・利下げペースを常に注視しており、年利はこれらの政策によって大きく揺れ動きやすくなります。
② 企業決算(業績)の強さ
S&P500の構成企業(Apple、Microsoft、Amazonなど)は世界を代表する大企業です。これらの企業が好決算を出すことで、指数全体の年利も押し上げられます。
売上・利益が市場予想を上回る → 株価上昇
決算が予想以下 → 株価下落し年利を押し下げる
特にS&P500は時価総額加重方式のため、「巨大企業の決算が指数全体を強く動かす」という特徴があります。
③ 景気サイクル(インフレ・利下げ局面など)
アメリカ経済の景気サイクルは、S&P500の年利に直結します。
インフレ期 → 金利上昇 → 株価は下がりやすい
景気後退期 → 業績悪化 → 株価下落
利下げ局面 → 市場に資金が戻り、株価が回復し上昇へ
景気拡大期 → 企業利益増 → 年利はプラスに寄与
S&P500は短期の景気ショックで下落しても、景気回復期に力強く戻る傾向があります。
④ 為替(円安・円高)が日本人投資家に与える影響
ドル建てのS&P500を日本人が投資すると、円とドルの為替変動もリターンに影響します。
円安(例:1ドル=100円 → 150円)
→ ドル資産の価値上昇 → 日本円ベースのリターンは増加
円高(例:1ドル=150円 → 120円)
→ ドル資産の目減り → 日本円ベースのリターンが減少
米国株自体が上がっても、円高になれば年利が押し下げられることがあります。
逆に米国株が横ばいでも、円安が進めば日本円ベースの年利は大きくプラスになることもあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. S&P500の平均年利はどれくらいですか?
一般的には、長期では 年7〜10%前後と言われています。インフレ調整後でも5〜7%程度と比較的高く、長期投資に向いている指数です。
Q2. 毎年7〜10%で増えるという意味ですか?
いいえ。
年利は毎年一定ではなく、上昇する年もあればマイナスになる年もあります。
長期で平均すると7〜10%前後になる傾向がある、という意味です。
Q3. 暴落が起きた場合、年利はどうなりますか?
短期では大きくマイナスになることもありますが、過去のデータでは暴落後の数年で回復するケースが多いです。長期保有を前提とすれば、暴落は必ずしも悪いことではなく、積立で安く買える機会にもなります。
Q4. 日本円で投資している場合、年利は変わりますか?
はい、為替(円高・円安)が影響します。
円安 → 日本円ベースのリターンは増えやすい
円高 → 日本円ベースのリターンは減りやすい
特に最近は円安の影響で、日本人投資家の実質リターンが大きくなっています。
Q5. 積立投資と一括投資では年利に差がありますか?
年利そのものは変わりませんが、積立投資は暴落時にも自動的に買い増せるため、平均取得価格を下げやすいというメリットがあります。一括投資は長期では最も効率がよいと言われますが、短期ではタイミングの影響を受けやすくなります。
Q6. S&P500はこれからも年利7〜10%で成長すると考えてよいですか?
保証はできませんが、アメリカの人口増加・イノベーション・企業の強さを考えると、長期的な成長が期待されているというのが一般的な見方です。ただし、短期的には調整やリスクイベントが起きる可能性があります。
Q7. S&P500は個別株より安全ですか?
相対的には安全と言われます。
500銘柄に自動で分散され、弱い企業は指数から除外されるため、個別株よりリスクが低く、安定した年利を得やすいのが特徴です。
結論:S&P500の年利は長期投資の強い味方
S&P500は、長期で安定した年利を維持してきたことから、資産形成に非常に適した指数です。米国経済の成長力がリターンを支えており、個別株よりリスクを抑えながら世界有数の企業群に分散投資できる点も大きな魅力です。また、複利効果が長期で効いてくるため、保有期間が長いほど資産が増えやすい特徴があります。こうした要因により、S&P500は長期投資の中心として多くの投資家に選ばれています。
免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。