公開日: 2025-12-22
近年、「NTT株価はなぜ安い」と検索する投資家が増えています。NTTは日本を代表する超大型企業であり、配当利回りも高水準ですが、株価は長期間にわたり大きく上昇していません。そのため、「割安なのに買われないのはなぜか?」と疑問を持つ人が多くなっています。
本記事では、NTT株価が安いと言われる理由を整理したうえで、本当に割安なのか、将来性はあるのかを解説します。さらに、どのような投資家に向いている銘柄なのかという投資判断のポイントも分かりやすく紹介します。
NTTの基本情報と現在の株価状況
1.事業概要:日本最大の通信・ICT企業
NTT(日本電信電話)は、国内最大手の通信事業グループであり、固定電話・携帯電話・インターネット等の通信サービスを提供する持株会社です。NTTドコモ、NTT東日本・西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTデータなど多くの子会社を傘下に持つ総合ICT企業でもあります。総合ICT事業、地域通信事業、グローバル・ソリューション事業に加えて不動産・エネルギー関連も展開しています。
2.主力事業
国内通信サービス
固定電話、光ファイバー、携帯通信(ドコモ)など日本国内で高いシェアを持つコア事業
グローバル・ソリューション事業
世界各国向けにネットワーク・ITソリューション提供。特にデータセンターやクラウドなど成長が期待される分野も進めています。
先端技術・新領域
AI・ブロックチェーン関連事業、IOWN(光通信技術)といった次世代インフラの研究・開発にも取り組んでいます。
3.株価水準と時価総額の特徴

NTTは、東京証券取引所のコード9432で取引されています。株価はおよそ150円〜160円台 前後で推移し、52週レンジも同様の水準で安定しています。
時価総額は 約13〜14兆円前後 と、日本企業の中でも上位クラスに位置します(例:SoftBankよりは小さいが、同じ通信大手の中では大きい部類)。
また、PERやPBRはそれぞれ PER約12倍前後、PBR約1.38倍前後 と、通信業界の平均レベルで落ち着いた評価です。
4.日経平均・TOPIXとの比較
NTTは日経平均株価指数(Nikkei 225) やTOPIX Core30に採用される大型株であり、日本市場全体を代表する銘柄のひとつです。
ただし、株価上昇率は日経平均や市場全体に比べてやや低調な傾向があります。たとえば過去1年では、NTT株のトータルリターンは通信業界平均と同水準である一方、市場全体(TOPIXや日経平均)の上昇には届かない動きでした。
NTT株価はなぜ安いのか?主な理由
1. 政府保有株による「成長制限」
NTT株価が伸びにくい最大の要因のひとつが、政府が一定割合の株式を保有している点です。NTTは民営化された企業ではあるものの、政府は現在も法律上、株式の一部を保有することが定められています。
このため、経営判断においては「国のインフラ企業」としての役割が重視されやすく、大胆な事業再編や高リスク・高成長の投資が行いにくいという側面があります。また、料金引き下げ要請など政策的な影響を受けやすく、利益最大化を最優先できない構造が、株価評価を抑える要因となっています。
2. 成長期待が低い成熟産業
通信業界はすでに成熟段階に入っており、急成長が見込みにくい産業と見られています。日本国内ではスマートフォンや光回線の普及が一巡し、新規契約の大幅な増加は期待しづらい状況です。
さらに、通信料金の引き下げ競争が続いており、売上や利益の伸びが限定的になりやすい点もマイナス評価につながります。投資家は将来の成長性を重視するため、どうしても通信株は「安定はしているが成長しない銘柄」と見られ、株価が上がりにくくなります。
3. 株式分割後のイメージ低下
NTTは過去に株式分割を実施し、現在の株価は数百円以下という水準になっています。これにより、実際の企業価値とは関係なく、「安い株=成長性が低い」という心理的な印象を持たれやすくなっています。
本来、株価水準そのものと企業価値は無関係ですが、個人投資家の中には「株価が低い=人気がない」と感じる人も多く、結果として需給面で不利になりやすい点が、株価の伸びを抑える一因となっています。
4. 海外投資家からの評価が低い理由
海外投資家の視点では、NTTはグローバルでの成長ストーリーが弱い企業と見られがちです。GAFAやAI関連企業のように、急成長が期待できる分野と比べると、NTTはどうしても保守的な企業に映ります。
また、日本特有の規制環境や政府関与の強さも、海外投資家が投資を控える要因となっています。海外マネーが流入しにくいことで、株価が大きく評価されにくい構造が続いています。
5. 大型株ゆえの株価の重さ
NTTは時価総額が非常に大きい超大型株です。そのため、株価を大きく押し上げるには、莫大な資金流入が必要になります。中小型株のように、材料一つで急騰することは期待しにくい銘柄です。
また、株主構成も機関投資家が中心で、短期的な売買よりも安定運用が重視されます。この結果、値動きは穏やかになりやすく、「株価がなかなか上がらない」と感じられやすいのです。

NTT株は本当に「割安」なのか?
1. PER・PBRから見たNTTのバリュエーション
NTT株は、一般的な株価指標で見ると割安水準にあると評価されることが多い銘柄です。
PER(株価収益率)は市場平均と比べて低めで推移する傾向があり、「利益に対して株価が抑えられている」状態と言えます。また、PBR(株価純資産倍率)も極端に高くなく、過度に買われている状況ではありません。
ただし、この割安感は「将来の高成長があまり期待されていない」ことの裏返しでもあります。つまり、数字上は安いが、成長プレミアムが付いていないという評価です。
2. 同業他社(KDDI・ソフトバンク)との比較
通信大手である KDDI や ソフトバンク(通信事業) と比べると、NTTは最も「安定寄り」の評価を受けています。
KDDI:安定性+株主還元が評価されやすい
ソフトバンク:事業の柔軟性や成長戦略への期待がある
NTT:規模は最大だが、成長性は控えめと見られがち
このため、投資資金が流入しやすいのはKDDIやソフトバンクで、NTTは相対的に株価評価が低くなりやすい傾向があります。
「同じ通信株でも、どこに投資妙味を見出すか」で評価が分かれている状態です。
3. 高配当利回りの魅力と注意点
NTT株の大きな魅力のひとつが、安定した高配当です。株価水準が低いため、配当利回りは相対的に高く見えやすく、インカムゲインを重視する投資家には人気があります。
一方で注意点もあります。
NTTの配当は「急成長による増配」ではなく、安定収益を前提とした配当です。そのため、配当を目的とした長期保有には向いていますが、配当+株価急騰を同時に狙う銘柄ではない点は理解しておく必要があります。
4. 割安だが「再評価」には条件がある
まとめると、NTT株は
指標面では割安
配当面では魅力的
ただし成長期待は低め
という特徴を持つ銘柄です。
今後、株価が大きく再評価されるためには、海外事業の成長加速やIOWNなど次世代技術の収益化といった、明確な成長ストーリーが必要になります。
NTTの将来性と成長シナリオ
1. データセンター・IOWN構想の可能性
NTTの将来性を語るうえで欠かせないのが、データセンター事業とIOWN(アイオン)構想です。
近年、AI・クラウド・生成AIの普及により、世界的にデータセンター需要は急拡大しています。NTTは国内外で大規模なデータセンターを保有・運営しており、通信インフラと組み合わせた総合ICTサービスを提供できる点が強みです。
また、IOWN構想は、従来の電気信号ではなく光を基盤とした次世代通信インフラを目指す長期プロジェクトです。実用化・収益化には時間がかかるものの、
超低遅延
低消費電力
大容量通信
といった特性は、将来的にAI・自動運転・スマートシティなどの分野で重要な基盤となる可能性があります。
IOWNが事業として数字を生み始めれば、NTTの評価が大きく変わる可能性があります。
2. 海外事業の拡大余地
NTTは国内通信企業というイメージが強い一方で、実は海外売上比率も着実に高まっている企業です。特にNTTデータを中心としたITサービス・システム開発は、欧米を含むグローバル市場で展開されています。
国内通信市場は成熟していますが、
海外ITサービス
グローバル向けデータセンター
企業向けDX支援
といった分野では、まだ成長余地があります。今後、海外事業の利益比率が高まれば、「日本の通信会社」から「グローバルICT企業」への評価転換が進む可能性があります。
ただし、海外事業は競争も激しく、短期間で成果が出るとは限らないため、中長期視点での成長ドライバーと考えるのが現実的です。
3. 中長期で株価上昇が期待できる条件
NTT株が今後大きく上昇するためには、いくつかの条件が必要です。
1つ目は、成長分野の収益化が明確になることです。
データセンターやIOWNが「将来構想」から「利益を生む事業」へと移行すれば、市場の評価は変わります。
2つ目は、海外事業の存在感拡大です。
海外売上・利益の割合が高まることで、成長企業としてのストーリーが描きやすくなります。
3つ目は、株主還元の継続・強化です。
大きな成長がなくても、安定した増配や自社株買いが続けば、長期投資マネーが流入しやすくなります。
これらが重なった場合、NTT株は「安定高配当株」から「安定+成長期待のある銘柄」として再評価される可能性があります。
NTT株に投資するメリット・デメリット
メリット①:安定した配当
NTT株の最大の魅力は、安定した配当収入が期待できる点です。通信インフラ事業は景気変動の影響を受けにくく、業績が大きく崩れにくいため、配当も比較的安定しています。
株価水準が低いため、配当利回りが高く見えやすいのも特徴で、インカムゲインを重視する投資家にとっては魅力的な銘柄です。
また、NTTは株主還元を重視する姿勢を示しており、長期保有を前提とした配当戦略が取りやすい点も評価されています。
メリット②:倒産リスクの低さ
NTTは日本を代表する通信インフラ企業であり、事業の公共性が非常に高い会社です。固定電話・通信ネットワークは社会インフラとして不可欠であり、需要が急激に消えることは考えにくいです。
さらに、政府が一定割合の株式を保有していることもあり、経営の安定性は極めて高いと言えます。倒産リスクを抑えつつ、株式投資を行いたい人にとって、安心感のある銘柄です。
メリット③:長期保有向きの銘柄
NTT株は、短期的な値上がり益を狙う銘柄ではなく、時間を味方につけて保有するタイプの株です。株価の変動が比較的穏やかで、日々の値動きに振り回されにくいため、精神的な負担も小さくなります。
「毎年の配当を受け取りながら、ゆっくり資産形成をしたい」という投資スタイルには、NTT株は非常に相性が良いと言えるでしょう。
デメリット①:短期的な株価上昇は期待しにくい
NTT株は時価総額が大きい超大型株であるため、短期間で株価が急騰する可能性は低い銘柄です。好材料が出たとしても、株価への反映は緩やかになりやすく、短期売買を目的とする投資家には物足りなく感じられます。
そのため、「すぐに利益を出したい」「短期で資金を回したい」という投資スタイルには向いていません。
デメリット②:成長株投資には不向き
NTTは安定した事業基盤を持つ一方で、急成長が期待される成長株ではありません。売上や利益が何倍にも拡大するようなフェーズの企業ではないため、テンバガーを狙う投資には不向きです。
AIや新技術への取り組みはあるものの、収益化には時間がかかるため、成長性よりも安定性を重視する銘柄と理解しておく必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. NTT株は今後も上がらない?
NTT株が急騰する可能性は高くありませんが、「まったく上がらない」と言い切ることもできません。
NTTは成熟企業であり、株価は業績や配当を反映して緩やかに推移する傾向があります。そのため、短期間で大きな値上がりを期待する銘柄ではありません。
一方で、
データセンター事業の拡大
IOWN構想の収益化
海外事業の成長
といった要素が評価されれば、中長期的に株価が見直される可能性はあります。
「値上がり益よりも安定性重視」という前提で考えるのが現実的です。
Q2. NTTは減配する可能性がある?
現時点では、減配リスクは比較的低いと考えられています。
NTTは通信インフラという安定収益を持つ企業で、過去を見ても配当は比較的安定して推移しています。また、株主還元を重視する姿勢を明確にしており、急な減配が起こりにくい企業体質です。
ただし、
大規模な設備投資
海外事業での想定外の損失
政策的な料金引き下げ圧力
などが重なった場合、配当が据え置かれたり、増配が止まる可能性はあります。
「高配当=絶対安全」ではない点は理解しておく必要があります。
Q3. 今はNTT株の買い時なのか?
NTT株は、投資目的によって買い時かどうかが分かれる銘柄です。
配当狙い・長期保有が目的の場合
→ 株価が大きく上下しにくいため、タイミングを過度に気にせず分散購入する戦略が有効です。
短期売買・値上がり益狙いの場合
→ 値動きが小さいため、あまり向いていないと言えます。
NTT株は「安いから一気に上がる」というタイプではなく、時間をかけて配当を受け取りながら保有する銘柄です。自分の投資スタイルに合っているかを確認したうえで判断することが重要です。
結論
NTT株価はなぜ安いかについて、政府関与による成長制限や通信業界の成熟化、超大型株ゆえの値動きの重さといった構造的な要因があります。そのため、業績が安定していても株価は大きく上がりにくい状況が続いています。
ただし、株価が安い=企業価値が低いというわけではありません。NTTは安定した収益基盤と高配当を維持しており、長期視点では堅実な銘柄と言えます。
投資判断としては、
配当重視・長期保有を考える投資家には向いている
短期の値上がり益や成長株投資を狙う人には不向き
という位置づけです。自分の投資目的に合うかどうかを基準に、NTT株を検討することが重要です。
免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。