好きな会社の株を買う|その両面性を解説
简体中文 繁體中文 English 한국어 Español ภาษาไทย Bahasa Indonesia Tiếng Việt Português Монгол العربية हिन्दी Русский ئۇيغۇر تىلى

好きな会社の株を買う|その両面性を解説

著者: 高橋健司

公開日: 2025-12-21

日常的に使っている商品やサービスを提供する企業には、自然と親近感が湧きやすく、「この会社なら成長しそうだ」「応援したい」「好きな会社の株を買う」という気持ちが投資行動につながりやすくなります。こうした考え方は、企業の理念や姿勢に共感して投資する応援投資・共感投資とも呼ばれています。


一方で、株式投資はお金が関わるため、好きという感情が判断に影響しやすく、冷静な分析よりも直感を優先してしまう場面が生まれやすい点には注意が必要です。

株式投資を行う男

好きな会社の株を買う【メリット】

1. 企業理解が深くなりやすい

好きな会社は、すでに商品やサービスを利用していることが多く、ビジネスモデルや強みを直感的に理解しやすいという利点があります。普段の利用体験から「どこが評価されているのか」「なぜ選ばれているのか」を実感できるため、企業分析の出発点が明確になります。


また、ニュースや決算発表に対しても自然と関心が向きやすく、情報を能動的に追い続けられる点もメリットです。


2. 長期保有しやすい

企業そのものに愛着や信頼があるため、短期的な株価の上下に一喜一憂しにくくなります。一時的な下落があっても、事業の価値や将来性を信じられることで、冷静に保有を続けやすくなります。


この姿勢は、企業の成長をじっくり待つ長期投資と相性が良く、売買を繰り返すことで発生する取引コストや判断ミスを抑える効果も期待できます。


3. 投資のモチベーションが高まる

好きな会社への投資は、「お金を増やす手段」だけでなく、「企業の成長に参加する行為」として捉えやすくなります。そのため、投資を自分ごととして考えられ、継続的な学習や情報収集の意欲が高まりやすくなります。


結果として、決算書を読む習慣が身についたり、業界全体への理解が深まったりと、投資スキル向上につながる好循環が生まれやすくなります。


好きな会社の株を買う【デメリット】

1. 客観性を失いやすい

好きな会社に対しては、無意識のうちに評価が甘くなりやすくなります。業績の悪化や不祥事、競争環境の変化といった悪材料が出ても、「一時的な問題だろう」「この会社なら大丈夫だ」と都合よく解釈してしまいがちです。


また、自分の考えを肯定する情報だけを集め、否定的な意見やデータを避けてしまう確証バイアスに陥るリスクも高まります。その結果、冷静な投資判断ができなくなる可能性があります。


2. 割高でも買ってしまう可能性

企業が好きという理由だけで投資すると、株価がすでに割高な水準にあるかどうかを十分に確認しないまま購入してしまうことがあります。PERやPBRなどの株価指標を軽視し、「将来はもっと成長するはず」という期待だけで判断してしまうケースも少なくありません。


しかし、市場では成長期待がすでに株価に織り込まれていることも多く、好材料が出ても株価が思ったほど上がらない、あるいは下落することもあります。


3. 損切り判断が遅れやすい

感情的なつながりが強いほど、含み損を抱えたときの損切り判断は難しくなります。「ここで売ったら負けを認めることになる」「いつか必ず戻るはずだ」と考え、損切り注文を出せないまま保有を続けてしまうことがあります。


その結果、損失が拡大し、資金効率が大きく悪化する恐れがあります。投資では、企業への好意と資金管理を切り離して考える姿勢が重要になります。


感情投資と合理的投資の違い

1.好き=良い投資先とは限らない理由

魅力的な商品や強いブランド力を持つ企業であっても、それが必ずしも「良い投資先」とは限りません。投資では、将来の成長や収益性がすでに株価にどこまで織り込まれているかが重要になります。


どれほど人気のある企業でも、市場の期待が過度に高まっている場合、業績が順調でも株価が伸び悩むことがあります。このように、「好き」という感情と「投資の成果」は必ずしも一致しない点が、感情投資の落とし穴です。


2.企業の魅力と株式価値の違い

企業として魅力があることと、株式として割安・割高であることは別の概念です。優れた企業であっても、株価が高すぎれば期待通りのリターンを得ることは難しくなります。


株式投資では、企業そのものではなく、「その企業の将来価値を、いくらで買うか」が問われます。商品やサービスへの好意だけで判断すると、株価水準という重要な視点が抜け落ちてしまいがちです。


3.投資判断に必要な視点(業績・成長性・財務)

合理的な投資を行うためには、感情とは切り離して、数値やデータに基づく確認が欠かせません。具体的には、売上や利益が安定して成長しているか、今後の成長余地がどの程度あるか、財務体質は健全かといった点を冷静に見る必要があります。


これらの指標を確認することで、「好きだから買う」から「納得できる条件で投資する」へと判断軸を移すことができ、感情に振り回されにくい投資判断につながります。


好きな会社に投資する際のチェックポイント

1. 業績・財務状況の確認

どれほど好きな会社であっても、まず確認すべきは業績と財務の実態です。売上や利益が中長期的に成長しているかどうかは、企業の競争力や市場での立ち位置を判断する重要な材料になります。一時的な好調ではなく、継続性があるかを意識して見ることが大切です。


また、財務の健全性も欠かせません。流動比率や自己資本比率などを確認することで、景気悪化や不測の事態に耐えられる体力があるかを把握できます。好きという感情があるからこそ、数字で裏付けを取る姿勢が重要になります。


2. 株価の妥当性を確認

次に確認したいのが、現在の株価が企業価値に対して妥当かどうかです。PERやPBRといった指標を用いることで、市場がその企業にどの程度の期待を織り込んでいるのかを客観的に把握できます。


さらに、同業他社と比較することで、その企業が割安なのか、あるいは人気先行で割高なのかが見えやすくなります。好きな会社ほど「将来性があるから高くて当然」と考えがちですが、比較の視点を持つことで冷静な判断が可能になります。


3. 投資ルールを事前に決める

感情に左右されないためには、投資前にルールを明確にしておくことが欠かせません。具体的には、どの水準まで上がれば利益確定をするのか、どの水準まで下がれば損切り注文を出すのかをあらかじめ決めておくことが重要です。


また、投資期間を短期・中期・長期のどれにするのかを明確にすることで、値動きに対する受け止め方も変わります。ルールを先に決めておけば、「好きだから」という理由だけで判断を先延ばしにするリスクを抑えることができます。


好きな会社の株と上手に付き合う考え方

1.「ファン」と「投資家」を切り分ける

好きな会社を応援する気持ちと、投資家として資産を増やす目的は、本来別のものです。商品やサービスが好きであること自体は、企業理解を深めるうえで大きな強みになりますが、その感情をそのまま投資判断に持ち込むと、冷静さを失いやすくなります。


そのため、「ファンとしての自分」と「投資家としての自分」を意識的に切り分け、投資判断は業績や株価水準といった客観的な指標に基づいて行う姿勢が重要になります。


2.ポートフォリオの一部として組み入れる

好きな会社の株は、資産のすべてを任せる対象ではなく、ポートフォリオの一部として位置づけるのが現実的です。特定の企業に偏りすぎると、その企業固有のリスクを過度に抱えることになります。


業種や地域、投資スタイルを分散させたうえで、「この企業には共感しているから一定割合を持つ」という考え方を取ることで、感情とリスク管理のバランスを取りやすくなります。


3.応援投資は余裕資金で行う重要性

企業への共感や応援の気持ちを重視した投資は、精神的な満足感を得られる一方で、必ずしも高いリターンが期待できるとは限りません。そのため、応援投資は生活資金や将来必要になる資金とは切り離し、余裕資金で行うことが重要です。


余裕資金であれば、株価の変動にも冷静に向き合いやすくなり、「好きな会社を応援しながら、投資経験を積む」という前向きな付き合い方が可能になります。


どんな人に向いている投資スタイルか

1.長期投資志向の人

好きな会社の株に投資するスタイルは、短期的な値動きで利益を狙う人よりも、数年単位で企業の成長を見守りたい人に向いています。企業のビジョンや事業戦略に共感できる場合、一時的な株価の下落があっても慌てて売却せず、長期的な視点で保有しやすくなります。


時間を味方につけて企業価値の拡大を待てる人ほど、この投資スタイルのメリットを活かしやすいと言えます。


2.企業分析を楽しめる人

決算資料や業界ニュースを読み、企業の強みや課題を考えることを楽しめる人にも適しています。好きな会社であれば、数字や資料に対する抵抗感が少なく、自然と分析を続けやすくなります。


単に「好きだから買う」のではなく、「なぜこの会社は成長できるのか」を考えるプロセスを楽しめる人ほど、感情に偏らない投資判断ができるようになります。


3.値動きより企業成長を重視する人

日々の株価変動に強い関心を持つ人よりも、売上や利益の成長、事業拡大の進捗といった中身を重視する人に向いたスタイルです。短期的には株価が伸び悩んでも、事業が着実に成長していれば評価されると考えられる人は、精神的なストレスを抑えやすくなります。


株価チャートよりも企業の成長ストーリーに価値を見出せる人ほど、「好きな会社の株」と長く付き合いやすくなります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 好きな会社の株を買うのは、やめたほうがいいのでしょうか?

一概にやめる必要はありません。好きな会社は理解しやすく、長期保有しやすいというメリットがあります。ただし、感情だけで判断せず、業績や株価水準を確認したうえで投資することが重要です。


Q2. 応援投資と本格的な投資はどう違いますか?

応援投資は企業への共感や支持を重視する投資スタイルで、必ずしもリターン最大化を目的としません。一方、本格的な投資は、収益性や成長性、リスク管理を重視します。目的に応じて資金を分けて考えることが大切です。


Q3. 好きな会社の株で損切りはしたほうがいいですか?

はい、損切りの判断は必要です。どれほど好きな会社であっても、投資である以上、想定と違う状況になれば損切り注文を出すことは資産を守る行動です。感情と投資ルールは切り分けて考えましょう。


Q4. 好きな会社の株は長期保有に向いていますか?

企業の成長性や財務が安定していれば、長期保有に向いている場合もあります。ただし、「好きだから長期」ではなく、「長期で成長が見込めるか」という視点で判断することが重要です。


Q5. 投資初心者でも好きな会社の株を買って大丈夫ですか?

初心者でも問題ありません。むしろ、理解しやすい企業から投資を始めるのは良い選択です。ただし、少額から始め、分散投資や投資ルールを意識することで、失敗リスクを抑えることができます。


結論:好きな会社の株は「武器」にも「落とし穴」にもなる

好きな会社の株を買うことには、企業理解が深まりやすく、長期保有しやすいという大きなメリットがあります。一方で、感情が強くなりすぎると、割高でも買ってしまったり、損切りが遅れたりするなどの落とし穴もあります。


大切なのは、企業への好意をきっかけにしつつも、最終的な判断は業績や株価水準といった数字で行うことです。「好きだから買う」ではなく、「納得できる条件で投資する」という姿勢が、後悔しない投資につながります。


免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。