公開日: 2025-11-26
連続増配株とは、毎年欠かさず配当を増やし続けている企業のことです。企業の利益やキャッシュフローが安定している証拠でもあり、長期投資家から特に人気があります。
連続増配株ランキングが重視される理由は、年々増える配当が長期の資産形成に大きく貢献するためです。株価が大きく上がらなくても、配当が増えることでトータルリターンが高まり、インカムゲインの伸びも期待できます。
日本市場では近年、政府の企業改革も影響し、株主還元を重視する姿勢が強まっていることから、増配企業が増えています。企業収益も改善傾向にあり、連続増配株への関心が一段と高まっています。
選定基準の明確化
連続増配株ランキングを作成するにあたり、まずは評価基準を明確にすることが重要です。単に配当利回りが高い企業ではなく、長期間にわたり継続して増配してきた「企業の実力」を測るため、以下の要素を基準とします。
① 連続増配の定義
連続増配とは、文字通り 毎年配当を増やし続けている状態 を指します。
ランキングでは、一般的に次の区分がよく使われます。
5年以上の連続増配：安定配当企業として評価
10年以上の連続増配：本格的な配当成長株
20年以上の連続増配：非常に稀で「超優良企業」とされる
30年以上の増配企業：日本では極めて少なく、「キングクラス」
継続年数が長いほど、企業の利益構造が強いことを示します。
② ランキング指標
より正確に「増配を続けられる企業か」を判断するため、複数の指標を組み合わせて評価します。
■ 増配年数
ランキングの最も基本的な指標
長ければ長いほど、景気の浮き沈みに耐えられる企業体質を持つ
特に10年以上が目安として人気
■ 配当性向
利益のうち配当に回している割合
50〜60%程度なら健全、80%以上は「無理な配当」の可能性
企業に再投資する余裕があるかどうかも判断材料に
■ 営業利益・キャッシュフローの安定性
増配を維持するには、安定した本業の利益 が不可欠
営業利益が安定している企業は、景気変動でも配当を維持しやすい
キャッシュフローが強い会社は、投資余力もあり増配しやすい
■ 株価の長期推移
長期間で右肩上がりの企業は、利益体質が強い可能性が高い
配当成長と株価上昇が両立しているかを確認
単に「増配しているだけ」で株価が伸びない企業もあるため、総合判断が必要
このように、連続増配株ランキングは 「配当の成長力」「企業の安定性」「株主還元姿勢」 を総合的に評価して作成されます。
連続増配株ランキング
| 銘柄（コード） | 連続増配年数等の目安 / 特徴 | コメント・特徴 |
| 花王 (4452) | 約 35年連続増配 — 日本トップクラス | 洗剤・化粧品など日用品を扱う国内大手。景気の波に左右されにくく、安定的にキャッシュを稼ぎやすい。連続増配の代表銘柄 |
| 三菱HCキャピタル (8593) | 26期／年次ベースで連続増配中、配当利回りも比較的高め（記事時点で約3.7％） | リース／金融事業を手掛け、安定したキャッシュフロー。高い配当利回りと連続増配という「増配＋インカム」の両立銘柄 |
| リコーリース (8566) | 25年連続増配クラスの銘柄のひとつとして扱われることがある | リース会社。連続増配＋事業の安定性で、割と堅実な「増配株」候補 |
| SPK (7466) | 27年連続増配という長期増配銘柄のひとつ（記事の最新ランキングで2位） | 自動車部品の商社。景気の山谷の影響はあるかもしれないが、配当を着実に増やす姿勢が評価されている |
| アイカ工業 (4206) | 連続増配実績あり、比較的最近の「増配株リスト」に掲載されることがある | 化学・素材関連。業績・配当の安定性という観点で、連続増配株として一定の注目 |
企業のピックアップ — 強みある連続増配株
1.花王(コード 4452)
強み・ビジネスの安定性
花王は家庭用日用品、化粧品、洗剤、スキンケアなど、景気に左右されにくい「生活必需品」を主力としています。こうした商品は不況時でも需要が比較的安定するため、企業収益の基盤が安定しやすいです。
また、日本国内のみならず海外展開や多様なブランド展開も手がけ、収益の分散と安定を図っているとされます。
なぜ増配を長年続けられてきたか
2025年時点で 35年連続増配 を達成しており、日本企業のなかでも“連続増配株”の代表格とされます。
過去35年で年間配当額は約21.4倍に増えており、直近3年では年平均約1.8%の増配実績も報告されています。
このように、安定収益 × 強いブランド力 × 継続的な株主還元姿勢が揃っているため、増配を継続できています。
今後の見通しと留意点
主力製品のブランド強化や新商品の投入で収益性改善の動きがあり、直近決算でも好調との報告があります。これにより、今後も増配継続の可能性は比較的高いです。
ただし、競合の多さや原材料コスト、消費者の嗜好変化などリスクもあり、今後は「収益力維持」が増配継続の鍵となります。
2.三菱HCキャピタル(コード 8593)
強み・ビジネスモデル
総合リース業を主力とし、機器・設備、オフィスビル、不動産、環境関連サービスなど幅広く展開。景気や金利変動の影響を受けづらいビジネスであり、キャッシュフローが比較的安定しやすいです。
リース事業は契約が長期にわたることから、収益の予見性が高いです。これが安定した配当基盤につながります。
なぜ増配を長年続けられてきたか
2025年で26年連続増配の実績があります。
増配開始以来、配当は大きく成長しており、会社の業績やキャッシュフローが堅調であることの裏付けとみなされています。
金利情勢が変動しても、リースという資産運用・貸付型ビジネスが収益源となるため、比較的安定性が高い — 株主還元姿勢を貫きやすいです。
今後の見通しと留意点
リース対象分野の多様化やサービス展開の広がりにより、収益基盤のさらなる強化が期待されます。特に設備投資需要や社会インフラの再整備などが追い風になり得ます。
ただし、経済環境の悪化や信用リスク、借入コストの上昇など、リース業固有のリスクには注意してください。これらが長期の増配持続に影響する可能性もあります。
3.リコーリース(コード 8566)
事業内容と特徴
リース業を主力とする企業。機械設備リース、オフィス機器、産業機器、不動産関連など広範なリースサービスを手がけており、多様な業種へのバランス配分が可能です。
リース事業の性質上、長期間の契約が多く、安定したキャッシュフローと収益予見性が比較的高いという特徴があります。
増配を続けられてきた理由
過去数十年にわたって、地道に配当を増やし続けており、2025年3月期の配当予想は「1株あたり175円」で、これが実現すれば25期連続増配となります。
2000年代初頭の配当水準から比べると、配当額は大きく拡大しており、配当の継続性と成長性の両立が見られます。
また、株価も過去数年で上昇しており、キャピタルゲインとインカムゲインの両面で投資妙味がある銘柄と評価されています。
留意点・今後の見通し
リース業は景気や設備投資の動向に左右されやすいため、経済の減速や設備投資の落ち込みがあると、収益・キャッシュフローに影響する可能性があります。
ただし、現在の安定した増配実績と配当政策が継続されるのであれば、長期保有のインカム株として魅力が続く可能性は高いです。
4.SPK(コード 7466)
強み・事業内容
SPKは自動車部品や産業車輌部品を中心に、卸売・輸出入事業を手掛ける専門商社です。国内では部品商・カー用品店・整備業者向けに販売し、海外約80か国にも輸出しています。
主な事業セグメントは、国内営業、海外営業、工機営業、CUSPA営業(カスタマイズ部品・自動車用品)で、幅広い産業・市場に対応できます。
最近は「モビリティビジネスのグローバル商社」への転換を掲げ、PB(プライベートブランド)や海外展開、新規事業強化を進めています。
なぜ増配を長年続けられてきたか
2025年3月期時点で 27期連続増配 を達成。着実に配当を引き上げる姿勢を示しており、28期連続増配も見込まれます。
安定的なアフターマーケット需要、国内外の広い販売ネットワーク、健全な財務体質が、長期増配の土台となっています。
景気変動や新車販売の増減に左右されにくい「補修部品中心の収益基盤」が、安定した配当成長を支えています。
今後の見通しと留意点
EV化や自動車産業の構造変化への対応(PB・CUSPA部品、海外市場、産機・建機部品の拡大)に注力しており、収益の多角化が進むほど増配継続の可能性は高いです。
一方、為替変動、物流・原材料コスト、国際競争、産業構造の変化など、外部要因による影響もあり、今後も定期的なモニタリングが必要です。
安定的なキャッシュフローと株主還元姿勢を維持できれば、長期的な連続増配株としての魅力は継続できます。
5.アイか工業(コード 4206)
強み・安定性
化学や素材関連の事業を手がけ、特殊樹脂や機能材料といったニッチかつ安定需要のある分野に強みを持ちます。こうした素材・化学系は設備投資や建設、自動車用部材など複数産業に広く使われるため、景気の変動に左右されづらいという特徴があります。
また、最近では業績が好調で、安定感が評価されている増配注目株のひとつです。
増配継続の背景
記事によれば、アイカ工業は 10期以上の連続増配実績 を持つ銘柄として紹介されており、安定した配当成長が期待されています。
業績やキャッシュフローが安定しており、将来の予想でも増配継続の可能性が示されています。これは、株主還元と企業の収益成長のバランスが取れている証です。
今後の見通しと留意点
素材・化学の需要は多様な産業にまたがるため、安定成長が見込める。特に再生可能エネルギー、建築、自動車など幅広い産業の裾野が広いため、長期で見たときの耐久力が期待できます。
一方で、原材料コストの変動、国際競争、為替の影響など、素材系特有のリスクもあるため、今後の業績動向には注意が必要です。
連続増配株のメリット
インカムゲインが年々増える
連続増配株の最大の魅力は、配当金が毎年少しずつ増える点です。株を長期保有することで、受け取る配当額が時間とともに積み上がり、資産形成に直結します。特に、複利効果と組み合わせることで、将来的に大きなリターンが期待できます。
株価上昇と配当成長が二重で効く
配当だけでなく、企業業績の安定や成長が株価に反映されることも多く、値上がり益と配当増加の両方を享受できます。これにより、投資リターンが「二重構造」で強化され、長期投資に有利な銘柄となります。
景気に強い業態が多い
連続増配株には、生活必需品、安定した収益基盤を持つリース・金融業、素材・化学など景気変動の影響を受けにくい業種が多く含まれます。景気後退期でも配当が維持されやすく、投資のリスクヘッジとしても有効です。
注意点・リスク
配当性向の高さすぎは要注意
配当性向(利益に占める配当の割合)が高すぎる場合、企業の利益をほぼ配当に回している可能性があります。利益が減少すると、配当維持が難しくなるため、投資判断時には配当性向の水準を確認することが重要です。
無理な増配が財務を圧迫するケース
増配を優先するあまり、内部留保が減りすぎると、設備投資や研究開発への資金が不足し、企業の中長期成長に悪影響を与えることがあります。無理のない範囲で増配を行っているかどうかがポイントです。
業績悪化で増配が止まる可能性
景気や競争環境の悪化、想定外のコスト増などにより、増配が一時的に停止することがあります。連続増配株であっても、将来の増配は業績次第で変動するリスクがあることを理解しておく必要があります。
長期投資での活用方法
10年以上の長期積立で期待できる効果
連続増配株を用いた長期投資では、配当金が年々増加することで、積立投資の効果が大きくなります。たとえば、毎月一定額を株式に投資し続ける場合、株価の値上がりと配当の増加が複利的に働き、10年〜20年スパンで資産形成に大きく寄与します。短期的な株価変動に左右されにくく、老後資金や教育資金などの長期目標に向けた安定的な資産運用手段として有効です。
分散のポイント(セクター別・大型株中心)
長期投資では、単一の銘柄や業種に依存するリスクを避けるため、セクター別・業種別に分散して投資することが重要です。特に大型株は財務基盤や事業規模が安定しており、長期的な増配継続の可能性が高い傾向があります。例えば、生活必需品、リース・金融、素材・化学など異なる業種を組み合わせることで、景気変動や業界特有リスクを緩和できます。
連続増配+高ROE企業の組み合わせ方
連続増配株に加え、ROE(自己資本利益率)が高い企業を選ぶと、資本効率が高く、利益成長と株主還元の両立が期待できます。長期投資では、安定した増配だけでなく、企業の成長力や資本効率も重視することで、配当と株価の二重の成長を狙いやすくなります。具体的には、連続増配の実績があり、ROEが10〜15%以上の企業を中心にポートフォリオを組むと、長期的に高いリターンが期待できます。
よくある質問(FAQ)：連続増配株編
Q1. 連続増配株とは何ですか?
連続増配株とは、過去数年以上にわたり、毎年または定期的に配当金を増やし続けている企業の株のことです。単に高配当であるだけでなく、継続的に増配する実績を持つ点が特徴です。長期保有することで、配当が年々増える効果を期待できます。
Q2. 連続増配株を買うメリットは何ですか?
配当の安定と成長：長期保有でインカムゲインが増加します。
株価上昇との相乗効果：安定した業績と増配実績は株価の底上げにも寄与することがあります。
景気に強い業種が多い：生活必需品やリース、素材・化学など、景気変動の影響を受けにくい業態が多く含まれます。
Q3. 投資の際に注意すべき点は?
配当性向が高すぎる場合、無理な増配が企業の財務や成長に負担をかける可能性があります。
景気後退や業界構造の変化で、一時的に増配が止まるリスクがあります。
配当だけでなく、企業の収益力や財務状況も必ず確認する必要があります。
Q4. 長期投資でどう活用すればよいですか?
10年以上の長期保有を前提に、積立投資や分散投資でリスクを抑えながら資産形成する方法がおすすめです。
セクターや業種、規模の異なる複数の連続増配株を組み合わせることで、安定性と成長性を両立できます。
ROEが高く、利益成長と配当成長の両立が期待できる企業を選ぶとより効果的です。
Q5. どんな銘柄を選べばよいですか?
長期にわたり増配実績がある企業
財務健全性が高く、キャッシュフローが安定している企業
景気変動に強い事業を持つ企業
割安で株価上昇の余地がある企業
まとめ
ランキングの傾向
今回紹介した連続増配株ランキングを見ると、生活必需品やリース・金融、素材・化学など、景気変動に強く安定した収益基盤を持つ企業が上位を占めていることがわかります。
長期保有で狙うなら
配当を着実に増やしてきた企業や、財務基盤が健全で安定成長している企業を中心にポートフォリオを組むと、長期投資でインカムゲインを効率的に積み上げられます。
最後に
連続増配株は、単なる配当の多さだけでなく、企業の収益力・安定性・株主還元姿勢など、企業の強さを映す指標としても注目すべき銘柄群です。
免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。
