ドル円の反発は、米日円介入後に見られ、介入の効果はあったのか?
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ドル円の反発は、米日円介入後に見られ、介入の効果はあったのか?

公開日: 2026-08-04   
更新日: 2026-08-04

USDJPY
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ドル円は8月4日までに157.6円近辺まで持ち直し、7月28日の高値から介入後の安値までの下落分の約28%を戻した。今回のドル円の反発は、日米協調介入による急落後の自律的な戻りを反映している。

ドル円(USD/JPY)の値動きを示すチャート

日本の財務省は8月3日、7月31日に米財務省と協調して円買い介入を実施したと発表した。1998年以来となる日米協調による円買い介入で、前日には日本単独の介入も実施していた。この介入は無秩序な値動きを止め、円売りポジションの急速な縮小を促したが、その背景にある金利差そのものは変わっていない。


主なポイント

  • ドル円は163.94円から155.20円近辺まで下落した後、157.6円程度まで持ち直し、下落分の約28%を戻した。

  • 市場の推計では、2日間の介入総額は合計約13.8兆円(約870億ドル)に達したとみられているが、公式な数字は発表されていない。

  • これは日本が公表している外貨預金の約54%に相当するが、この比較は介入余力を示すものではない。

  • 簡易計算では政策金利差は約2.6ポイントで、157.6円で開始した場合の1年物キャリー取引の損益分岐点は153.6円近辺となる。

  • 今回の介入は積み上がったポジションを崩し、当局による追加的な介入のリスクを高めたが、金利差そのものには変化がない。


介入の経緯と規模はどうだったのか

今回の公式発表は、円が最初に3%急騰した動きに続くものだった。この時点で日銀の資金供給データや値動きの規模から、当局による買い介入の可能性は既に指摘されていた。

項目 詳細
介入前の高値 7月28日に163.94円
介入後の安値 8月3日に155.20円
8月4日のドル円 約157.6円
7月30日の単独介入 推定8.45兆円、約530億ドル
7月31日の協調介入(日本側) 推定5.33兆円、約340億ドル
報じられた米国側の実行方法 ドルではなくユーロを売却して円を購入
日銀の政策金利 1.00%で維持(7月31日、賛成8反対1)
FRBの目標レンジ 3.50%から3.75%で維持(7月29日、賛成9反対3)
日本の外貨準備(5月末) 1兆3.060億ドル、うち預金1.622億ドル

いずれもブルームバーグが日銀の資金供給データから算出した推計であり、公式な金額ではない。日本は円買いの実施自体は確認したものの、その規模は明らかにしておらず、直近の月次開示は7月29日までとなっており、これらの介入より前の時点にとどまっている。


ドル円が急速に下落した理由

今回の値動きは、公的な円買いだけでは説明できない規模だった。介入は下落の引き金にすぎず、下落全体の原因ではなかったためだ。


ドル円が163円を大きく割り込んだ後、この動きは円キャリートレードの巻き戻しへと発展した。ドルの買いポジションを持つトレーダーがストップロスやマージンコールに直面したためだ。ポジションを解消するには円を買う必要があり、それがドル円を一段と押し下げ、次のストップロスの連鎖を引き起こした。米国との協調によって、この流れに逆らって取引しようとする動きも弱まった。その後のドル円の反発は、こうした強制的なポジション解消が一巡したことを示唆している。

ドル円が急落した背景を示す図

積み上がったポジションの解消は、基本的に一度限りの効果だ。リスクの大きい取引が解消されれば、その分の円需要は薄れていく。


金利差は変わっていない

FRBは7月29日、賛成9反対3で目標レンジを3.50%から3.75%に維持した。反対票を投じた3人は25ベーシスポイント(bp)の利上げを主張していた。日銀は7月31日、賛成8反対1で無担保コールレートの目標を1.00%近辺に維持し、高田創審議委員は1.25%への引き上げを提案していた。FRBと日銀の金利差は依然として大きく、FRBの中間値3.625%を使った簡易計算では、その差は2.625ポイントとなる。


以下では、正反対の結論を示す二つの計算を紹介する。


スポットレートと金利差を単純に組み合わせた計算では、163.94円から155.20円への5.3%の下落は、この金利差のおよそ2年分に相当する。介入がキャリートレードに打撃を与えるのに、金利そのものを動かす必要はない。金利差による利益を打ち消すほど為替リスクを大きくするだけで十分なのだ。


一方で、両国の政策金利を用いた簡易的な1年物の計算では、157.6円で開始したドル買いポジションの損益分岐点は153.6円近辺となる。ただし、実際のリターンは資金調達コストやロールオーバー、執行コストによって左右される。FRBで利上げを主張した3人の反対票は、利上げが依然として当面の議論の一部であることを示しており、金利差が早期に縮小するとの見方には慎重さが必要だ。


したがって、今回の介入はキャリートレードを不採算にしたわけではなく、リスクを高めただけだといえる。こうした状況では、トレーダーは取引から完全に手を引くのではなく、ポジションの規模を縮小する対応をとりがちだ。これが、ドル円の反発を支える一因となっている。


日本にどれだけの介入余力がある のか

日本の外貨準備は規模が大きいものの、その内訳にも注目する必要がある。財務省の5月末時点のデータによると、外貨準備の総額は1兆3060億ドルで、このうち預金が1622億ドル、証券が9317億ドルとなっている。


推定される介入総額870億ドルは、この預金額の約54%に相当する。この比較は介入の規模を示すものではあるが、外貨準備が減少したことや残された介入余力を示す指標として読むべきではない。あくまでバランスシート上の一時点のスナップショットであり、証券を介入資金に転換する際には売却、償還、あるいは担保融資といった手段が考えられ、それぞれ市場への影響は異なる。


この点で注目すべき発表が一つある。日本はFRBの「外国・国際通貨当局向けレポファシリティ(FIMAレポファシリティ)」を利用する計画を明らかにした。これは対象となる通貨当局が米国債を担保にドル資金を調達できる制度だ。


これにより日本は短期のドル資金を調達する別の手段を確保でき、今後さらに介入が必要になった場合でも、証券を直接売却する必要性を減らせる可能性がある。


米国の参加がリスクを変える 理由

ロイター通信は3人の関係者の話として、米財務省が円を買うためにドルではなくユーロを売却したと報じた。この点は日本側の公式発表には含まれていないが、事実であれば米国が信用力を貸すだけでなく、自国の外貨準備資産を実際に投入したことを意味する。


スコット・ベッセント米財務長官はこの措置を認め、今後さらに介入が必要となれば米国は迷わず参加すると述べたうえで、円が「大幅に過小評価されている」とした日本側の対応を支持した。


今後の対応ではより広範な公的資源を動員できる可能性があり、協調によって米国の取引時間中に介入が実施される可能性も高まる。これは円売りポジションを維持するリスクを高める一方、リターン自体には何の変化も及ぼさない。


円を圧迫し続ける民間資 金の動き

円安を長期化させている要因はより継続的なものだ。家計による海外ファンドの購入、海外の機関投資家や年金基金によるポートフォリオ運用、企業による海外投資、そして原油価格の上昇で膨らんだエネルギー輸入額などが挙げられる。


日銀は、エネルギーコストと円安を理由に、2026年度後半には全国コア消費者物価指数(コアCPI)が2%を明確に上回るとの見通しを示している。直近の全国コアCPIは6月時点で1.6%だったが、7月の東京都区部コアCPI速報値は1.9%まで加速した。


過去の例は参考になる。日本は4月末から5月初めにかけて、過去最大となる11.7兆円(約730億ドル)を投じて円を防衛した。しかし7月末までにその効果は失われ、円は40年ぶりの安値まで下落した。


介入は効果を 上げたのか

日米両政府は今回の介入の目的を同じ言葉で説明しており、過度な変動と無秩序な値動きへの対応だとしている。特定の水準を目標にしているとは、いずれも主張していない。この目的に照らせば、介入は効果を上げたといえる。無秩序な値動きは止まり、一方に偏ったポジションは減少し、今後の介入をちらつかせる威力も高まった。しかし、持続的な上限として機能するかという観点では、数日で28%戻したという事実だけでは、どちらとも判断がつかない。今回のドル円の反発のスピードと規模は、この不確実性を反映している。


この見方に疑問を投げかける材 料は何か

以下の三つの展開が、この分析の妥当性を試すことになる。


当局の対応を招かずに160円を超える動きが持続すれば、抑止効果が想定より早く薄れていることを示唆する。米ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントのマサヒコ・ルー氏は、162円から165円のゾーンで介入リスクが高まる可能性があると指摘しており、当局は明示的な目標水準ではなく、値動きの速さと無秩序さに注目していると述べている。


日銀の金融引き締めペースが加速すれば、価格ではなく金利差そのものを縮小させるため、この見方に最も直接的な疑問を投げかけることになる。25bpの利上げごとに、金利差のおよそ1割が縮まる計算だ。


三つ目の見方は、協調介入がむしろ助けにならない可能性があるというものだ。ブルッキングス研究所のロビン・ブルックス氏は、協調介入が円への信頼をむしろ弱める結果になりかねないと論じている。これは同氏個人の見解であり、確立された結論ではないが、この見方に立てば、当局による買い介入の繰り返しは一時的な離脱の機会を提供するだけで、円に対する長期的な需要そのものを変えるものではないことになる。


金利差と民間の資金フローがドルに有利な状況が続く限り、長期的な効果は依然として不確かだ。今後さらに協調介入が実施されれば、円売りポジションを維持するリスクは高まるが、持続的な反転には、金融政策や資金フローの根本的な変化がより明確に必要になるとみられる。

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