公開日: 2026-02-12
近年、世界各国が安全保障の重要性を強め、防衛予算を大きく増やしています。2026年の世界全体の防衛支出は約2.6兆ドル(約300兆円)に達する見込みで、前年からも増加傾向が続いています。この背景には、地政学的緊張の高まりや大国間競争の激化があります。
こうした予算増は、防衛装備品の調達や研究開発の資金につながるため、関連企業の受注・業績アップが期待され、防衛関連株の今後が株式市場でも注目されています。
日本でも政府が防衛予算を拡大しており、2026年度の防衛省の予算要求は 約8.8兆円 と過去最高額を見込んでいます。これは自衛隊の装備更新や無人機・ミサイルなどの新技術導入に使われる予算で、防衛関連企業の売上につながる可能性があります。
また日本政府は今後さらに防衛費を増やし、GDP比で2%水準を目指す政策を進めているため、中長期的な需要増も期待されています。
日本では総選挙を控え、安全保障政策が重要なテーマになっています。政権側が防衛力強化を打ち出すことで、関連銘柄への資金流入や市場のテーマ性が高まる傾向があります。
政策期待が高まるフェーズでは、投資家の注目が特定セクターに集まりやすく、防衛関連株にも買いが入りやすくなる点が注目されています。

市場動向:防衛関連株の今後は?
A.日本株
防衛関連株への資金シフトの動き
2026年1月末〜2月にかけて、日本株市場では 三菱重工業や川崎重工業などの防衛関連銘柄が資金を集めて強い値動き を見せました。これは、半導体セクターの調整局面から投資資金の一部が「防衛」にシフトしているとの見方によるものです。特に 三菱重工業は一時4%超、川崎重工業も約4%高 といった上昇が観測されました。
政策・国策との連動によるテーマ性強化
2026年の衆院選後、高市政権が「国家情報局(日本版CIA)」設置や安全保障関連政策を進めることで、防衛・サイバー関連の“国策テーマ株”としての地位が強まっています。これにより 三菱電機やサイバー防衛関連企業などへの注目も高まっています。
テーマETFの動きにも注意
防衛テック関連ETF(例えば東証上場の「グローバルX 防衛テック ETF」)は最近の市場では株価がやや調整しており、短期的な売買の動きが活発になっています。※ETFは関連銘柄全般の動向を示す指標として参考になります。
B.グローバル株
受注増・バックログ好調で強気銘柄も
ドイツの潜水艦メーカー TKMS(Thyssenkrupp Marine Systems) は、世界的な防衛装備需要の高まりを背景に、史上最大の受注残高(約220億ドル)を確保し、2026年の売上見通しを上方修正 しました。これは地政学リスクを背景とした海軍装備需要の高まりを反映した動きです。
米国主要防衛株の個別動き
米国市場では General Dynamics(GD)の株価が直近で上昇 し、主要防衛セクター内でも比較的強い値動きが見られました。一方で Lockheed Martin(LMT)は一時下落 するなど、銘柄ごとに方向感が分かれている点も特徴的です。
業界全体には逆風も存在
ただし、米国防総省(ペンタゴン)が納期・契約履行の遅延や予算超過の頻発する大手防衛請負業者への監視を強化しており、一部銘柄は パフォーマンスの圧迫要因 となっています。こうした規制強化は株価にネガティブな影響を与える可能性もあります。
個別銘柄分析(ピックアップ・最新情報)
A.日本株:国内防衛関連の代表例

1.三菱重工業(7011)
株価動向:2026年2月11日時点で株価は約5.107円に上昇し、短〜中期移動平均線も上向きで強いトレンド。出来高も平均を上回る活発な売買に。
投資材料:2026年3月期の連結純利益見通しを上方修正したとの声があり、発電・防衛の2本柱を評価する投資家が多いです。
背景:国内市場では「防衛・国家安全保障強化政策」がテーマ株として働いており、選挙関連の期待感も株価を後押ししています。
評価ポイント:防衛装備品の主要請負・国内国策テーマ株としての位置付けが明確。
2.川崎重工業(7012)
株価動向:2026年1月末時点で急騰し、約18.250円前後まで上昇。三菱重工と並んで防衛テーマの中核株として資金流入が観測されました。
投資材料:
a.軍需や汎用機械・航空機関連の受注増期待。
b.半導体セクター調整の間に「リターンリバーサル」を狙う資金が流れています。
評価ポイント:国内重工株の中で防衛・輸送機械需要取り込み期待が根強い。
3.東京計器(7721)/日本アビオニクス(6946)など
株価動向:防衛関連銘柄として他のリスト入り銘柄も活発な値動き。1月末では 東京計器・日本アビオニクス などが上昇しており、防衛部品・システム関連のテーマ性が意識されています。
評価ポイント:重工株よりもテーマ性が強く、短期的な物色対象になるケースが多いです。
B.海外株:グローバル防衛セクターの旗艦銘柄

1.Lockheed Martin(LMT)
受注状況と売上:2025年に約$1940億(約26兆円)という史上最高レベルの受注残高(バックログ)を形成し、2026年も安定した防衛装備需要が見込まれています。
株価動向:2026年に入ってから過去1カ月で約17.8%上昇したとの報告もあり、同業平均を大きくアウトパフォームしています(米国防予算拡大期待の影響)。
業績面:2025年度売上は約$75Bと前年超で、F-35戦闘機等の主要プログラムが収益柱。
注意点:直近では4Q決算でEPSがコンセンサスを下回るとの指摘もあり、実需の強さと利益面のバランスが投資判断の鍵になります。
評価ポイント:受注バックログが巨額であり、長期的な契約収益が見通せる構造。
2.RTX Corporation
事業ポートフォリオ:Raytheon・Pratt & Whitneyなど複数防衛・航空部門を持ち、先進ミサイル・航空機エンジンで強み。
業績・見通し:2025年売上約$88.6B、バックログ約$268Bを形成し、2026年も売上成長($92-93B予想)・EPS増加が見込まれています。
株価動向:過去1年で約60%上昇と堅調なパフォーマンス。
評価ポイント:防衛に加え商用航空需要回復の恩恵もあり、収益基盤が多角的。
3.General Dynamics / Northrop Grumman など
株価動向:最近の市場では General Dynamics や Northrop Grumman も堅調に推移し、主要米国インデックスと共に上昇する局面が複数観測されています。
リスク要因:米国国防総省が主要契約履行状況の評価強化や株主還元(配当・自社株買い)制限を打ち出す動きがあり、防衛株全体に短期的なネガ材料となる可能性が指摘されています。
短期 vs 中長期の比較ポイント
| 銘柄 | 短期材料 | 中長期材料 | リスク要因 |
| 三菱重工業 | 選挙・国策テーマで資金流入 | 国内防衛予算拡大・安定受注 | 国内景気・政策依存 |
| 東京計器等 | 短期テーマ買い | 部品需要増期待 | 需給不安 |
| Lockheed Martin | バックログ・予算期待 | 長期契約収益 | 株主還元規制リスク |
| RTX | 多角事業成長 | バックログ膨大 | 米国政策・コスト |
| GD / NOC | 市場センチメント反映 | 技術・契約ポートフォリオ | Pentagon監視強化 |
リスクと注意点
防衛関連株は長期成長テーマとして注目されやすい一方で、他セクターとは異なる特有のリスク構造を持っています。投資判断の際には、以下の3つのリスク軸を理解しておくことが重要です。
A.地政学リスクと政策依存性の高さ
防衛関連企業の業績は、一般企業と違い「市場需要」ではなく政府の防衛予算と安全保障政策に大きく左右されます。
例えば
国防費増額 → 受注増 → 株価上昇
政権交代や政策転換 → 予算削減 → 株価下落
という構造になりやすいです。
つまり、防衛株は「企業努力だけではコントロールできない外部要因」の影響を受けやすく、政治ニュースが株価材料になる点が最大の特徴です。
特に注意すべきタイミング
選挙
国防方針改定
国際条約締結
ポイント:防衛株は「企業分析」だけでなく「政策分析」も必要な数少ないセクターです。
B.市場全体のリスクオフ局面に弱い可能性
防衛株はディフェンシブ銘柄と思われがちですが、実際には景気敏感株に近い値動きをすることがあります。
理由は主に以下の通りです。
大型株が多く機関投資家保有比率が高い
テーマ株として資金流入が起きやすい
市場全体の資金フローに左右されやすい
そのため、株式市場が全面安になる局面では、防衛株も例外なく売られるケースがあります。特に金利上昇局面ではバリュエーション調整が起こりやすく、短期的な下落圧力が強まります。
C.為替・輸出環境の影響
多くの防衛企業は輸出比率が高く、為替変動の影響を強く受けます。
典型例
円安 → 日本企業の受注競争力向上 → 株価プラス
円高 → 採算悪化 → 株価マイナス
また、防衛装備は契約金額が大きく納期が長いため、契約時と納品時の為替差が業績に影響する点も重要です。
D.投資家向けリスク管理戦略
防衛関連株に投資する場合は、以下のような管理手法が有効です。
① セクター分散
防衛株だけに集中せず、AI・半導体・エネルギーなど他テーマ株も保有する。
② 地域分散
日本株だけでなく、米国・欧州の防衛企業も組み合わせることで政策リスクを分散。
③ 時間分散
一括投資ではなく分割購入により、地政学ニュースによる急変動リスクを緩和。
④ イベント管理
以下の前後はポジション調整を検討
防衛予算発表
大統領選挙
国際紛争ニュース
よくある質問(FAQ)
Q1. 防衛関連株はなぜ上がることが多いのですか?
主な理由は政府の防衛予算拡大です。防衛企業の売上は国家契約に大きく依存しているため、国防費が増えると受注増 → 業績拡大 → 株価上昇という流れが起こりやすくなります。また、地政学リスクが高まる局面では「安全保障関連テーマ株」として資金が流入しやすくなります。
Q2. 防衛関連株は長期投資向きですか?
比較的長期投資向きのセクターとされています。理由は、防衛契約は数年〜数十年単位の長期案件が多く、受注残高(バックログ)が将来収益の見通しになるためです。ただし、短期では政策ニュースや紛争報道で値動きが大きくなるため、短期トレードの場合はタイミング管理が重要です。
Q3. 日本株と米国株ではどちらが有利ですか?
それぞれ特徴が異なります。
日本株:政府政策と防衛費の影針を強く受ける
米国株:世界最大の軍需市場で契約規模が大きい
欧州株:地域安全保障問題の影響を受けやすい
分散投資を行うなら、地域を分けて保有するのが一般的です。
Q4. 防衛株の最大のリスクは何ですか?
最大のリスクは政策変更リスクです。
例えば
防衛費削減
政権交代
軍縮方針
などが起きると、業績見通しが急変し株価が下落する可能性があります。通常の企業分析だけでなく、政治・外交動向のチェックが必要です。
Q5. 防衛関連株は不況に強いですか?
一般的には景気耐性が比較的高いとされます。景気が悪化しても国防費は急減しにくいためです。ただし、金利上昇や株式市場全体の暴落時には他の大型株と同様に売られることもあります。
Q6. 今から投資しても遅くないですか?
「遅いかどうか」は投資期間次第です。
短期投資 → すでに上昇した銘柄は調整リスクあり
長期投資 → 防衛費増加トレンドが続く限り成長余地あり
つまり、防衛株は「タイミング銘柄」というよりテーマの継続性を見て投資する銘柄群と考えるのが一般的です。
まとめ:2026〜2030年の見通し
防衛関連株の今後は、中長期では成長テーマとして追い風が続く可能性が高いと考えられます。各国政府が安全保障強化を進めており、防衛費の増加や軍事技術への投資拡大が企業の受注増や業績成長につながりやすいためです。特にAI・無人兵器・サイバー防衛などの新分野は、次世代の収益源として注目されています。
一方で、短期の株価は市場心理に左右されやすい点には注意が必要です。地政学ニュース、政権交代、金利動向などの外部要因によって資金が流入・流出しやすく、短期間で大きく値動きすることがあります。
また、防衛株を分析する際は地域ごとの市場特性を理解することが重要です。
日本:政府政策や防衛予算に強く連動
米国:巨大契約と軍需企業の受注残高が評価材料
欧州:地政学リスクや共同防衛政策の影響を受けやすい
総合すると
中長期=成長テーマ
短期=ニュース主導の変動相場
という二面性を理解して投資戦略を立てることが、防衛関連株を扱ううえでの重要なポイントになります。
免責事項:この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。