公開日: 2026-01-22
三菱重工の株価は、2020年前後の長期低迷期を底にして、2022年以降から明確な上昇基調に転じました。その後、防衛関連需要の拡大やエネルギー分野での成長期待が高まったことで投資家の評価が急速に改善し、株価は段階的に水準を切り上げていきました。長期チャートで見ると、短期的な調整を挟みながらも中長期では一貫した上昇トレンドを描いており、過去の安値圏と比較すると「10倍」と表現されるほどの大きな伸びとなっています。こうした値動きは日本株全体の中でも際立っており、三菱重工は近年、代表的な高パフォーマンス銘柄の一つとして注目されています。
本記事では、三菱重工の株価がなぜ10倍上昇しているかについて、その主要因と今後の見通しを解説します。

理由一:防衛関連需要の拡大が追い風に
三菱重工の株価上昇の背景には、防衛関連需要の拡大が大きな追い風となっています。まず、三菱重工は戦闘機部品やミサイル、艦艇といった防衛装備品の製造を手掛ける日本を代表する防衛メーカーであり、ここ数年の地政学的な緊張や安全保障環境の悪化を背景に、同社の防衛部門への期待が強まっています。具体的には、日本政府が防衛予算を大幅に増額し、2030年代に向けて総額2%以上のGDP比を目指す計画を打ち出すなど、防衛予算そのものが増加傾向にあることが株価材料になっています。
また、政府予算だけでなく、北大西洋条約機構(NATO)加盟国でも国防費の大幅な引き上げが決定されるなど、世界的に防衛産業への資金流入が進んでいることも日本の防衛株全般の評価を押し上げています。こうした中で、三菱重工は防衛関連部門の収益見通しが強く、同部門の利益が全体の成長を牽引しているとの見方が広がっています。たとえば、2025年度には防衛・航空部門の利益が大きく伸びるとの予想が出ているほか、防衛受注額が過去最高水準に達するとの予測もあります。これらの要因が重なり、投資家の評価が高まり株価上昇につながっています。
理由二:エネルギー・脱炭素分野での成長期待
三菱重工は脱炭素社会の実現に向けて、水素やアンモニアといった「クリーン燃料」分野に積極的に取り組んでいます。同社は水素の製造から発電までを一貫して検証できる「高砂水素パーク」などの実証施設を運用し、次世代のエネルギーバリューチェーンの構築を進めています。この取り組みでは水電解や高温水蒸気電解など複数の製造技術で水素をつくり、貯蔵・利用までの実証を行うことで、将来的な大規模展開に備えています。また、アンモニアを水素キャリア(運搬用燃料)として活用する技術や、アンモニアそのものを燃料とするガスタービンの開発も進めており、燃焼時にCO₂を出さない発電システムの実用化を目指しています。このような技術開発や事業拡大戦略は、脱炭素化の世界的潮流の中で三菱重工の成長期待を高め、投資家からの関心を集める一因となっています。

理由三:事業構造改革と収益力の改善
三菱重工は近年、事業基盤の強化と収益力改善に積極的に取り組んでいます。まず、2024–2026年度の中期経営計画では、エネルギー、防衛、原子力の重点3分野に経営資源を集中させ、事業ポートフォリオ全体の最適化を進めています。この計画のもとで、受注・売上高・事業利益・キャッシュフローがいずれも過去最高水準に達するなど、収益力の強化が着実に進んでいることが公表されています。
具体的には、近年の決算では売上高・利益率・キャッシュフローの改善が顕著で、2023年度には受注高の大幅増とともに利益も拡大し、同時に事業利益率も改善しています。また、2024年度決算でも全セグメントで増収・増益となり、コストプラス効果や通貨影響を受けながらも、損益体質が強化されたことが数値として示されています。こうした収益改善は、主力となる防衛・エネルギー・航空部門などの堅調な需要に支えられています。
加えて、中期経営計画では売上高20%増・事業利益60%増を目標とするなど、既存事業の強化に加えて高収益分野への投資を進める方針が明らかになり、これが構造改革の一環として期待されています。
このように、三菱重工は単に売上を伸ばすだけでなく、利益率・キャッシュフローの改善を図ることで「重厚長大=低成長」という評価から脱却し、収益体質を強化していると評価されています。
理由四:海外投資家からの再評価
①:海外投資家による日本株への関心と資金流入
近年、日本株市場では海外投資家の関心が高まり、実際に日本株への資金流入が続いている時期もあります。財務省のデータでは、ある期間において海外投資家が日本株を3361億円買い越し、複数週連続で買い越していたことが観測されています。これは、海外勢が日本株への投資姿勢を強めている一例として捉えられています。
ただし、こうした買い越し傾向は常に続いているわけではなく、過去には売り越しに転じる局面も報じられるなど、海外投資家の投資行動には幅がある点も留意が必要です(ただし三菱重工のテーマとは別)。
②:三菱重工が海外から評価される理由
三菱重工は、海外市場からも注目される複数の事業テーマを持つ企業と評価されています。その背景には、次のような要素があります:
防衛関連ビジネスの国際的拡大
オーストラリアが次期護衛艦の主要契約先として三菱重工を選定するなど、大型の防衛装備輸出案件が成立しています。これは同社の技術力と信頼性が海外市場でも評価されている証拠といえ、海外投資家の関心を引く材料となっています。
収益・業績成長の確認
直近で発表された決算では、三菱重工の受注高や売上高、利益が前年を上回る増加を示し、事業規模の拡大や利益率の改善が見られています。こうした利益成長の確かな数字が投資家評価につながっています。
③:バリュエーション(評価倍率)の変化
三菱重工は、従来は「重工・インフラ系の大型株」という評価で低い評価倍率(PERなど)で扱われがちでしたが、近年は好材料が積み重なったことで市場が同社の将来収益を織り込み、評価倍率が高まる局面が見られます。たとえば、2025年時点でPERが約49倍と比較的高い水準で取引されており、これは市場が成長期待を評価している可能性を示しています。
ただし、こうした高いバリュエーションについては、今後の収益見通しやリスクを慎重に見極める必要があるという指摘もあります。
まとめ:三菱重工の株価がなぜ10倍上昇したか
① 複数の成長テーマが同時に重なった
三菱重工の株価上昇が単発の材料だけでなく、複数の強い成長テーマが重なった結果であると評価されています。たとえば、防衛関連では政府による防衛費増額が追い風となり、受注残高の増加によって利益成長が期待されています。同時に、エネルギー・宇宙・発電システムなどの分野でも受注と売上が伸びており、これらの複数事業が業績を牽引しています。こうした異なる成長分野の同時進行が市場評価を押し上げる大きな要因になっています。
また、単純な売上増だけではなく、航空宇宙や防衛システムといった高利益率が期待できる事業分野での受注増加が目立っていることも、投資家の注目を集めています。
② 長期視点での事業価値の再評価
三菱重工はこれまで「重工業メーカー」として伝統的な評価しか受けていない時期がありましたが、長期的な産業トレンドの変化に合わせて事業価値が見直されています。地政学リスクの高まりによる防衛需要の急増、脱炭素化・エネルギー転換への投資拡大、航空宇宙分野での契約や受注の増加など、中長期での収益ポテンシャルが従来評価を大きく上回る可能性が意識されているのです。
こうした再評価は単に株価の割安さを修正するだけでなく、「これからの成長企業」としての位置づけが投資家の間で共有されることで、評価倍率(PER)の拡大にもつながる構造的な変化になっています。
③ 短期材料ではなく構造的な変化が背景にある
三菱重工の株価上昇は、一時的な好材料だけでなく、長期的な企業戦略と市場環境の構造変化が背景にあると分析されています。具体的には、以下のようなポイントが挙げられます:
防衛費増額や海外の安全保障需要の高まりに対応した受注増加
発電・エネルギー設備、宇宙関連事業の成長余地
収益性の高い分野への資源集中とポートフォリオ最適化
投資家にとって魅力的な財務指標の改善と株主還元への意識向上
こうした複数の構造的なポジティブ要素が重なった結果として、利益成長と評価倍率の両方が伸び、株価全体の大幅上昇につながっているとされています。
今後の三菱重工の株価はどうなる? 注目ポイント
1. 今後も成長が続くかを見るための視点
三菱重工は業績面で成長基調が続いており、直近の決算予想でも防衛・航空宇宙部門やエネルギーシステム部門の利益が増加する見通しが出ています。営利ベースでは2025~2026年度にかけて営業利益が前年比で約10%増加するとの予想があり、防衛関連の需要増が収益に寄与する見通しです。また、企業の公式発表では売上高・利益・配当の増加が予想されており、株主還元や業績の堅調さが長期的な株価の支えになる可能性が指摘されています。
さらに、証券会社によるレポートでは利益率改善ポテンシャルを評価し、株価の上値余地についてもポジティブな見方が出ています。こうした外部アナリストの視点は、株価予想の材料として投資家に注目されています。
2. 防衛・エネルギー政策の動向が鍵
三菱重工の株価評価にとって重要なのは、日本国内外の政策動向です。日本政府は安全保障関連の予算拡大を進めており、防衛関連株への資金流入が続く環境にあります。特に総選挙や政策決定のタイミングでは、安全保障強化に向けた予算確保・施策が株価の追い風になる可能性があります。
エネルギー関連では、脱炭素化の流れの中で発電・ガスタービン設備などへの需要も継続する見込みです。政策面で再生可能エネルギーやクリーンエネルギー推進が進むことが、中長期の成長テーマとして位置づけられています。
3. 株価変動リスクと注意点
株価にはリスク要因も存在します。まず、防衛関連株は地政学的リスクや政策変更に敏感であり、想定よりも政策が弱まる場合には評価が後退する可能性があります。また、株価が短期間に大きく上昇した後には利益確定売りの圧力が強まることもあり得るとの指摘があります。実際、市場の一部では利食い売りが出て株価が調整する局面も観測されています。
さらに、株価評価にはPER・バリュエーションの面で過熱感が指摘される場面もあり、一時的な割高感が調整圧力を強める可能性もあります。防衛・重工株はテーマ株として人気が高い反面、短期的な材料で株価が乱高下しやすい点も注意すべきです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 三菱重工の株価は本当に10倍になったのですか?
はい、長期の安値圏(2020年前後)と直近の高値水準を比較すると、結果的に10倍近い上昇と捉えられる期間があります。ただし、これは特定の安値を起点にした見方であり、すべての投資家が10倍の利益を得たわけではありません。
Q2. なぜ三菱重工はここまで評価が変わったのですか?
最大の理由は、防衛・エネルギー・脱炭素といった成長分野の中核企業として再評価されたことです。加えて、不採算事業の整理や利益率改善が進み、「重工業=低成長」という従来のイメージが変化しました。
Q3. 防衛関連銘柄としての強みは何ですか?
三菱重工は、日本の防衛産業の中核を担う企業であり、航空機、ミサイル、艦艇など幅広い分野を手がけています。防衛予算の増加や受注残高の積み上がりが、安定した中長期収益につながる点が強みです。
Q4. 今後も株価は上昇し続けますか?
将来の株価は確定できませんが、防衛需要やエネルギー転換が続く限り、中長期の成長期待は維持されやすいと考えられています。一方で、株価が大きく上昇した後は調整局面に入る可能性もあるため、注意が必要です。
Q5. 今から投資しても遅くないのでしょうか?
すでに大きく上昇しているため、短期的には高値掴みのリスクがあります。ただし、長期視点で事業成長を評価する投資であれば、価格だけでなく「業績の持続性」「受注動向」「政策環境」を見極めることが重要です。
Q6. 三菱重工の株価を見る際の注目ポイントは?
以下の点が特に重要です。
防衛・エネルギー分野の受注残高
営業利益率・キャッシュフローの推移
国の防衛・エネルギー政策の動向
株価の割高・割安(PERなど)
Q7. 三菱重工は長期投資向きの銘柄ですか?
三菱重工は、短期のテーマ株というより「構造的な成長を背景にした長期投資向きの銘柄」と見られることが多いです。ただし、景気や政策の影響を受けやすいため、分散投資の一部として検討するのが一般的です。
結論
三菱重工の株価がなぜ10倍上昇したかについて、防衛需要の拡大やエネルギー・脱炭素分野での成長期待、さらに事業構造改革による収益力の改善が重なったことがあります。短期的な材料ではなく、複数の成長テーマが中長期で評価された点が大きな特徴です。
このように、長期投資で評価される企業は「明確な成長分野を持ち、収益体質が改善し、将来の利益が見通せること」が共通しています。投資判断では、目先の株価変動だけでなく、事業の方向性や構造的な成長要因が続くかどうかを見ることが重要です。
免責事項:この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。