日本製鉄の株価は今後どうなる?業績・鉄鋼市況・中長期見通しを徹底解説
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日本製鉄の株価は今後どうなる?業績・鉄鋼市況・中長期見通しを徹底解説

著者: 高橋健司

公開日: 2025-12-26

日本製鉄は国内最大手の鉄鋼メーカーであり、世界でもトップクラスの生産能力を持つ企業です。自動車や建設、インフラ向け鋼材を幅広く手がけ、日本経済や世界景気の動向を映す代表的な景気敏感株として注目されています。


足元では、世界の鉄鋼需要の変化や中国・米国の景気動向、円安の影響などを背景に、株価が大きく変動しており、「今後も上昇するのか」「調整局面に入るのか」といった点に投資家の関心が集まっています。


本記事では、日本製鉄の株価は今後どうなるのかについて、業績見通し、鉄鋼市況、将来の成長材料やリスクを整理し、投資判断のヒントを分かりやすく解説します。


日本製鉄の企業概要とビジネスモデル

日本製鉄は、日本を代表する鉄鋼メーカーで、粗鋼生産量では世界でも上位に位置する企業です。事業の中心は鉄鋼事業で、自動車用鋼板や建設・インフラ向け鋼材など、幅広い分野に製品を供給しています。特に高品質な鋼材に強みを持ち、自動車メーカーとの結びつきが強い点が特徴です。


収益構造としては、鉄鋼市況の影響を受けやすく、景気が良い局面では利益が伸びやすい一方、景気後退時には業績が悪化しやすいという循環型ビジネスの性格があります。そのため、株価も景気動向や需給バランスに左右されやすい傾向があります。


また、日本製鉄は海外展開にも力を入れており、米国・アジア・インドなどで現地生産や合弁事業を展開しています。海外売上比率の高さは成長機会を広げる一方、為替変動や海外景気の影響を受ける要因にもなっており、今後の株価を考えるうえで重要なポイントとなっています。

日本製鉄:名古屋製作所

日本製鉄の株価推移と現在の評価

1.株価推移(最近の動き)

  • 直近株価

    日本製鉄(銘柄コード:5401)の株価は 約630円前後 で推移しています(12/26時点)。


  • 過去1年の値動き

    52週(1年)の株価レンジは 530円台〜704円台 と比較的広いレンジで変動しました。


  • ポイント

    a:今年は3月ごろに高値をつけた後、やや調整する形となっています。

    b:鉄鋼市況・需給・世界景気の影響を受けやすく、株価は上下幅が出やすい傾向です。


2.評価指標(PER・PBRなど)

  • PER(株価収益率)

    新日鉄のPER(調整後)は 約9倍前後 と比較的低めです。


    低PERは「利益に対して株価が割安」と判断される場合が多いですが、業績変動の影響も受けやすい指標です。


  • PBR(株価純資産倍率)

    PBRは 約0.6倍台 と1倍未満で推移しています。


    PBR1倍未満は「純資産に対して株価が割安水準」とみられやすいです。


  • 配当利回り

    配当利回りは 約3.7〜3.8%前後 で、株主還元が一定評価されています。


3.同業他社との比較(日本国内)


  • JFEホールディングス(5411)

    PER:約13.5〜16倍

    PBR:約0.50倍

    配当利回りは 約4%前後 と高めです。

    → 日本製鉄に比べるとPERはやや高く、評価が少し高めの傾向です。


  • 神戸製鋼所(5406)

    株価は約2.000円台前後で推移(12月時点)。

    PER・PBRの具体数値は最新の日本サイトに出ていませんが、近年は利益変動やセクター影響の強い動き。

    → 神戸製鋼所は配当利回りが高いものの、業績の波が大きい銘柄と評価されます。

日本製鉄の株価推移

日本製鉄株価に影響を与える主な要因

A. 世界の鉄鋼需要と中国・米国市場

1.世界全体の需要は停滞〜弱含み

世界の鉄鋼需要は2021年のピーク以降、横ばい〜微減傾向が続いています。特に中国が需要鈍化や在庫増で生産調整を進めており、足元の鋼材市況を下押ししています。


2.中国市場の構造変化

中国は世界最大の鉄鋼生産国ですが、過剰生産体制や不動産セクターの低迷を背景に、粗鋼生産は減少傾向にあります。2025年には年間生産量が前年比で減少し、構造改革が進んでいます。


過剰な低価格輸出への対応として輸出ライセンス制度が導入される予定ですが、価格支援には限定的との見方です。


3.米国は成長ポテンシャル

日本製鉄は米国市場の強い需要を取り込むため、USスチールの買収と大規模投資を進めています。これにより米国での生産能力・高級鋼需要を取り込む戦略が株価の長期材料となっています。


4.人口動態・国内市場の停滞

日本国内では人口減少や建設需要の縮小により、鋼材需要が長期的に減少傾向です。これが国内事業の重荷になっているため、海外シフトが不可欠との見方が強まっています。


B.原材料価格と為替(円安・円高)

1.鉄鉱石価格の変動と需給

2025年後半の鉄鉱石価格は、80〜110ドル/トン前後の低水準で推移しており、中国の弱い需要や供給過剰懸念が価格に重しをかけています。Simandou鉱山の稼働開始も長期的な供給増のリスクとされています。


2.原料炭価格動向

原料炭価格も年内に変動しており、中国国内の生産調整やインドの需給が価格要因となっています。これは製鋼コストに直接影響します。


3.為替(円安・円高)の影響

円相場は株価・利益に大きく影響します。円安の場合は輸出価格の競争力が高まり、輸出比率の高い鉄鋼株にとって追い風になりやすいですが、急激な変動には注意が必要です。


(※為替の詳細データは最新の株価サイト等で確認するとより正確です。)


C.脱炭素・グリーンスチール戦略

1.脱炭素への世界的圧力

鉄鋼業界は世界でCO₂排出量が大きい産業のひとつとして、国際的な脱炭素圧力に直面しています。グリーンスチール技術への移行が必要とされている一方、業界全体で進捗は限定的との報告もあります。


2.日本製鉄の取り組み

日本製鉄はEAF(電気炉)鋼や直接還元鉄(DRI)技術への投資を進めており、2050年のカーボンニュートラル達成を目標に掲げています。2025年に年約8687億円規模の投資を発表するなど、環境対応鋼材需要へのシフトが進んでいます。


3.短期コスト負担と長期の競争力

こうした脱炭素投資は初期コストが高く、短期的には利益を圧迫するリスクがありますが、中長期的には環境規制対応力や高付加価値鋼材の供給能力強化につながる可能性があります。


業績見通しと株価へのインパクト

◆ 売上・利益の今後の方向性

1.2026年3月期の業績予想

日本製鉄は2026年3月期の売上収益を約10兆円(前期比約15%増)と予想していますが、事業利益は約4.500億円と大幅減益見込み、さらに純利益は▲600億円の赤字予想になっています。これは前期の黒字から転じたものです。


2.背景

減益の主因は、米国のU.S. Steel統合に伴う市場環境の不透明感や再編損失が影響したためです。


3.アナリスト予想

証券アナリストの平均予想では、来期の株価目標値は約687円程度で、コンセンサスとしては 「買い評価」寄りです。売上は堅調でも利益面の不確実性が評価に反映されています。


つまり、売上は増加が期待されるものの、利益は短期で大幅減益となる見通しで、株価には慎重な見方が広がっています。


◆ 市況回復時のレバレッジ効果

1.鉄鋼市況の影響

原材料価格や鋼材価格は景気変動や中国・海外需要に強く左右されます。需給改善や世界的な景気回復が進めば、利益率の改善が期待される構造です。


2.米国事業(U.S. Steel)統合の影響

U.S. Steel買収は中期〜長期の成長戦略として位置付けられ、最終的には収益へ寄与するとの見方もあります。これが実現すれば、株価上昇要因となる可能性があります。


市況が回復・好転すれば、収益改善のレバレッジ効果が株価にプラスに働く可能性があります。


◆ 業績予想修正が株価に与える影響

1.業績予想の修正

日本製鉄は同社業績予想を事業利益・利益予想ともに下方修正しました。特に利益面では赤字転落予想が注目されています。


2.投資家・市場の反応

利益予想の下方修正は短期株価にネガティブなインパクトとなりがちです。実際、利益の下方修正や赤字見通しは「慎重な投資姿勢」を強め、ボラティリティ(株価の変動幅)を広げる可能性があります。


3.コンセンサス評価とのズレ

一部アナリストは将来の収益改善や米国展開のポテンシャルに期待感を示し、株価の上昇余地を評価していますが、利益見通しが不透明な点は市場の評価を分ける要因となっています。


日本製鉄の今後の株価見通し

1.強気シナリオ(株価上昇が期待される条件)

a.海外成長戦略が実を結ぶ場合

日本製鉄は2030年に向けた中期経営計画として、5年で約6兆円の投資を実行し、特に米国やインドでの事業拡大を進めています。海外利益を大幅に伸ばし、海外事業利益を5000億円以上にすることを計画しています。こうした成長が実現すれば、収益基盤強化→株価上昇につながるシナリオです。


b.アナリスト予想が強気寄り

最新のアナリスト評価では「買い」とする意見が一定数あり、平均目標株価は約687円と現値水準から上昇余地があるとの見方もあります(*市場の見方は様々ですが、強気想定での価格目標です)。


c.結果としての強気材料

  • 海外事業の成長

  • 中期経営計画の成功

  • アナリスト予想の上昇ポテンシャル

→ 好況期の鉄鋼需要改善や投資効果が株価を押し上げる可能性あり。


2.中立シナリオ(市況横ばい・安定推移)

a.鉄鋼市況が停滞〜横ばいで推移

世界的に鉄鋼需要は強い伸びが出ていないとされ、鋼材価格の回復が限定的な状況が続く可能性があります。この場合、業績も「堅調だが大きく伸びない」という安定シナリオになりやすいです。


b.株価レンジは現状維持〜緩やかな上昇

みんかぶなどの予想でも600円前後〜650円前後での買い評価が出ており、短期的には大きなトレンド変動は起きない可能性もあります。


c.結果としての中立シナリオ

  • 世界の鉄鋼市況が大きく崩れない

  • 米国投資や海外事業が安定して収益に寄与

  • 株価は大きく下げず、じわじわと評価される展開

→ 株価レンジは約600〜700円程度で推移する想定。


3. 弱気シナリオ(株価下落リスク)

a.投資負担・不透明な海外事業が重荷となる場合

中期計画として巨額の投資(約6兆円)を進める反面、市場では投資負担への不安や海外事業の不透明感から株価が売られる局面もあります。実際、個人投資家予想では売り予想数が上昇する場面も観測されています。


b.鋼材市況が弱含み、需要低迷が長引く場合

世界的な鋼材需要の伸び悩みが続き、価格が伸びない場合は業績改善が遅れる可能性もあります。この場合、PBRが低くても株価が下落圧力を受けるリスクがあります。


c.結果としての弱気シナリオ

  • 投資負担が利益を圧迫

  • 鋼材価格・需要が低調

  • 海外拡大の成果が出る前に市場が先行反応

→ 株価は600円割れや、より下値圧力が強まる可能性もあり得ます。


配当・株主還元の魅力

1.配当利回りと配当方針

  • 配当利回り

    日本製鉄の配当利回りは最新株価ベースで約3.8〜4.7%程度と比較的高めの水準です。これは一般的な日本株平均(2%前後)より高い水準で、高配当株として評価される可能性がある水準です。


  • 配当方針(会社方針)

    日本製鉄は利益配分の基本方針として、連結配当性向を年間30%程度を目安に配当を行う方針を掲げています。配当は第2四半期末と期末の年2回支払いです。


    2025年度(今期)の配当予定1株あたりは株式分割を考慮したうえで120円の年間配当予定との公表があります。


  • 配当性向の推移

    直近では配当性向が40〜50%前後で、利益に対してかなりの部分を株主還元に回す姿勢が見られます。


    まとめると、日本製鉄は配当利回りが高水準で、利益配分方針も明確であり、配当収入を重視する投資家にとって一定の魅力があります。


2.自社株買いの可能性

現時点で、日本製鉄が最近大規模な自社株買いを実施したという公式発表は見られていませんが、会社の配当性向目標が高いことから、自社株買いを含めた株主還元の拡大余地を市場が注目する可能性はあります。


ただし、配当を重視する方針が明示されている反面、自社株買いについては具体的な計画が公表されていません(※明確な実施データが見つからないため)。


自社株買いが実施される場合、株価上昇の追い風になる可能性があるため、今後のIR発表には注目です。


3.長期保有メリット

  • 高配当継続の可能性

    会社方針として配当性向30%を目安としているため、業績が安定している限り継続的な配当収入が期待できる構造です。


  • 配当利回りの魅力

    配当利回りが市場平均を上回るため、株価変動リスクを配当である程度カバーしながら保有する投資戦略が考えられます。特に長期投資家にとっては安定的なインカムゲインが魅力です。


  • 株主優待(一部あり)

    日本製鉄では工場見学会招待などの株主優待が実施されることがあり、配当+優待のトータルリターンを狙う投資家にもアピールポイントになります(条件あり)。


日本製鉄株に投資する際の注意点(最新情報)

① 景気循環株としての特徴

  • 景気の影響を受けやすい業種

    日本製鉄の主力事業である鉄鋼は、自動車・建設・機械などの景気敏感セクターとの関連が非常に強いため、世界経済や国内景気の拡大・縮小によって業績が大きく変動します。


    実際、世界的な鉄鋼需要の弱さや貿易政策の影響で利益が落ち込んでいる局面もあります。


  • 景気後退局面のリスク

    景気後退局面では鋼材需要が減少し、利益が圧迫され株価も大きく下がることがあります。景気循環株としての性質を理解せずに保有すると、予想以上の下落を経験する可能性があります。


② ボラティリティ(株価変動)の高さ

  • 株価変動幅が大きい傾向

    鉄鋼株は原材料価格、為替、世界市場の需給バランスなどの影響を受けやすく、株価の値動きが比較的大きくなる傾向があります。これは短期投資家にとってはチャンスでもありますが、同時に急落リスクも抱えています。


  • 市場全体の不確実性

    米中の通商政策や供給過剰問題など、外部環境から株価が大きく影響される場面があります。たとえば、世界的な鋼材過剰供給や関税政策の不透明感が、利益や価格形成に負の影響を与える可能性が指摘されています。


③ 短期投資と中長期投資の考え方の違い

  • 短期投資の場合

    鉄鋼株は景気指標や原材料価格、為替の動き、貿易政策ニュースなどに敏感に反応しやすいため、短期売買では値動きを狙ったアプローチになります。


    時には株価が急騰・急落することもあり、ボラティリティが利益にも損失にも直結するリスクがあります。


  • 中長期投資の場合

    中長期では、世界的な戦略や成長投資(例:米国での事業拡大、大規模設備投資、カーボンニュートラル対応)といったファンダメンタルズ重視の視点が重要になります。


    たとえば、日本製鉄は米国U.S. Steel買収完了などグローバル戦略の中長期効果を期待される面もありますが、これらは結果が出るまで時間を要する要素です。


  • ポイント

    a:短期→市場センチメント・ボラティリティ重視

    b:中長期→業績・成長戦略・景気循環の底値観察


よくある質問(FAQ)

Q1.日本製鉄は今後も成長できる?

日本製鉄は、数量拡大よりも高付加価値化による成長を重視しており、今後も一定の成長余地があると考えられます。特に、自動車向けの高級鋼板や電動化(EV)関連素材、インフラ更新需要などは中長期的な追い風です。


一方で、鉄鋼業界全体は成熟産業であり、急成長は期待しにくいのも事実です。そのため、日本製鉄の成長は「緩やかだが安定的」「利益率の改善を伴う成長」になる可能性が高く、高成長株というよりも景気循環型・高配当志向の銘柄として位置づける投資家が多い傾向があります。


Q2.鉄鋼株は不況に弱い?

一般的に鉄鋼株は景気敏感株(シクリカル銘柄)に分類され、不況局面では業績や株価が下落しやすい特徴があります。建設投資や自動車生産が減速すると、鋼材需要も落ち込むためです。


ただし、日本製鉄はコスト削減や価格転嫁力の強化、海外事業の分散によって、過去と比べると景気耐性は高まっているといえます。それでも、景気後退期には株価が調整しやすいため、短期投資では注意が必要です。


Q3.今買うタイミングとしてどうか?

日本製鉄株の投資タイミングは、世界景気・中国需要・為替(円安・円高)**といったマクロ環境を見極めることが重要です。特に、鉄鋼市況が底打ちし、利益が回復に向かう初期段階では株価が大きく動く傾向があります。


短期的には株価の変動が大きくなりやすい一方、中長期では配当利回りの高さや資源価格との連動性を評価して、分散投資の一部として組み入れる投資家も少なくありません。短期狙いか長期保有かによって、適切な買いタイミングの判断は異なる点に注意が必要です。


まとめ:日本製鉄の株価は今後どうなるのか

日本製鉄の株価は、世界景気や鉄鋼市況、為替動向(円安・円高)の影響を強く受ける傾向があります。特に、自動車生産やインフラ投資の動き、中国・米国の景気動向は今後も重要な注目ポイントです。


投資家タイプとしては、短期の値上がり益を狙う人よりも、中長期で配当や景気回復局面を狙う投資家に向いている銘柄といえます。景気循環に左右されやすいため、タイミングを分けて投資する考え方も有効です。


中長期的に見ると、高付加価値鋼材や海外事業の成長、コスト改善が進めば、安定した収益と株主還元が期待できる企業として評価される可能性があります。一方で、景気後退局面では株価が調整しやすい点には注意が必要です。


免責事項:この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。