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日本製鉄株を買うべきか|長期投資に向いているか?

著者: 高橋健司

公開日: 2025-11-10

近年、日本製鉄株を買うべきかを考える投資家は増えています。


背景には、世界的な鉄鋼需要の回復と円安による輸出競争力の上昇があります。自動車や建設、インフラ分野での需要拡大も追い風となっており、業績改善への期待が高まっています。


さらに同社は、2025年以降に向けて脱炭素技術の開発や高付加価値鋼材の拡充など、長期的な成長戦略を進めています。こうした動きが、株価上昇のポテンシャルを支える要因となっています。


企業概要と事業構造

日本製鉄株式会社(Nippon Steel Corporation、証券コード:5401)は、国内最大・世界でも有数の鉄鋼メーカーです。旧・新日本製鐵と住友金属工業の統合により誕生し、現在では粗鋼生産量で世界第3位クラスの規模を誇ります。


1.主力事業

日本製鉄の事業は大きく以下の3分野に分かれます。


  • 製鉄事業(自動車・建設用鋼材)

    国内外の自動車メーカーや建設会社向けに、薄板・厚板・形鋼などを供給。特に自動車用の高強度鋼板では世界的に高いシェアを持ち、電動車(EV)や軽量化需要にも対応しています。


  • エンジニアリング・化学・新素材事業

    製鉄技術を応用した環境プラント、エネルギー設備、炭素繊維・チタン製品なども展開。これにより、鉄鋼依存からの事業多角化を進めています。


  • 海外事業

    アジア・欧州・北米を中心にグローバル展開を強化。インドや東南アジアでは現地製鉄会社との合弁事業を拡大し、海外生産比率の向上を進めています。


2.成長戦略:脱炭素への挑戦

日本製鉄は、2050年カーボンニュートラル達成を目標に掲げています。


その実現に向けて、以下の技術開発を推進中です。


  • 電炉化の推進:従来の高炉に比べCO₂排出を大幅削減

  • 水素還元製鉄技術:石炭の代わりに水素を使う次世代製鉄法

  • カーボンリサイクル技術:排出ガスの再利用で環境負荷を低減


これらの技術投資は短期的にはコスト負担となるものの、長期的には競争力の源泉として期待されています。


3.ポジションと競合

  • 国内ではJFEホールディングス(5411)、神戸製鋼所(5406) が主な競合。

  • 世界的には中国宝武鋼鉄集団(Baowu Steel) やアルセロール・ミッタル(ArcelorMittal)と肩を並べる規模。

  • 技術力と品質で高い評価を受け、日本ブランドの代表的存在となっています。


最新業績と財務指標

日本製鉄の株価推移

1.業績推移(直近3期)

  • 2024年3月期:売上収益は約10.714兆円、持分当期利益率12.3%。

  • 2025年3月期:自己資本比率が約49.2%に改善。

  • 四半期ベースでは、1Qで売上高が前年同期比−8.3%、営業損失に転じたという情報あり。


2.利益率改善の背景

  • 製品単価の上昇や円安による輸出優位性が利益改善を後押し。

  • 一方で、原材料価格の高騰や海外展開コストの増加が足かせとなる可能性も指摘されています。

  • 実際、営業利益率が2023年度11.1%→2024年度8.8%へ低下。


3.配当利回り・株主還元方針

  • 配当利回りは直近で 約3〜4%台。例えば、予想配当利回り3.91%というデータあり。

  • 配当性向は2025年3月期で約45.6%。配当の維持・還元意識はあるが、業績次第で変動リスクあり。


4.財務健全性:自己資本比率・負債水準・ROE

  • 自己資本比率:2024年3月期44.6%、2025年3月期49.2%と改善傾向。

  • 負債(有利子負債)約2.4兆円(2025年3月末)など、重厚な負債構造も存在。

  • ROE(自己資本利益率):2025年3月期実績で約6.89%。前年同期(2024年3月期)は12.26%。


ポイントまとめ

  • 財務基盤(自己資本比率)は改善傾向にあり、安定性が増してきています。

  • ただし、ROEが低下している点や、為替・原料コストなどの外部環境リスクが収益を抑制している点に注意が必要です。

  • 配当利回り自体は魅力的ですが、業績悪化時には還元方針が揺らぐ可能性もあります。


この指標を踏まえ、「日本製鉄株を買うべきか」の判断材料としては、財務の安定性+外部環境の見通しが大きな鍵になります。


リスク要因

日本製鉄株に投資する際には、いくつかのリスク要因を十分に理解しておく必要があります。まず、鉄鋼価格の変動リスクがあります。日本製鉄の収益は鉄鋼製品の販売価格に大きく依存しており、世界的な鉄鉱石価格の変動や中国など主要国の需給バランスの変化が、売上や利益に直接的な影響を与えます。過去には、中国での鉄鋼供給過剰によって価格が下落した局面で、日本製鉄の営業利益も大幅に減少したことがあります。このように、鉄鋼価格の急激な変動は、短期的な業績や株価に大きな影響を及ぼす可能性があります。


次に、為替リスクも無視できません。日本製鉄は海外売上も多く、ドル建てやユーロ建ての収益があります。そのため、円高が進むと海外売上を円換算した利益が減少し、輸出競争力も低下します。一方で円安は輸出には有利に働きますが、鉄鉱石などの原材料輸入コストが上昇する場合もあり、必ずしもプラスにはならないことがあります。急激な為替変動は株価の短期的なボラティリティ要因にもなります。


さらに、世界経済の減速リスクも考慮すべきです。日本製鉄の主要顧客である自動車や建設、重工業は景気動向に敏感です。世界経済が減速すると鉄鋼需要が低下し、売上や利益に影響を及ぼします。特に中国や米国の景気鈍化は、日本製鉄の輸出や価格形成に直接的な影響を与えるほか、貿易摩擦や関税政策の変化も海外事業の利益を圧迫する要因となり得ます。


以上のように、日本製鉄株は利益を大きく伸ばす可能性がある一方で、鉄鋼価格の変動や為替、世界経済の動向といった外部要因による影響を受けやすい銘柄です。そのため、投資判断を行う際には、短期的な市場変動だけでなく、中長期的な景気動向や国際情勢も考慮することが重要です。


投資判断のまとめ

製鉄産業

1.短期投資か長期投資か

日本製鉄株は、 長期保有を前提に検討すべき銘柄 と言えます。


理由として、まず、同社は今後5年間で設備投資2兆4.000億円を計画しており、国内生産体制の再構築や戦略商品の対応力強化を図るとしています。また、配当性向を年間30%程度を目安とし、株主還元も重視しています。


一方で、短期的には原材料価格の変動、為替の影響、世界の鉄鋼需給の変化など外部リスク要因が多く、業績・株価が振れやすいという指摘もあります。


したがって、数週間~数ヶ月という 短期トレード向きというよりは、数年スパンの長期保有で成長や株主還元を狙う戦略が向いていると言えます。


2.「買い」「様子見」「売り」の目安

以下、現状を踏まえた目安を整理します。


  • 買いの目安:株価が割安水準にあるとの評価が出ており、「買い」または「割安を拾える時」として検討されうる状況です。例えば、AI株価診断では現状「割安」と判断されています。また、配当利回りが4%超という見方もあります。ただし、「買い」と強く推奨する評価には慎重な見方もあり、アナリスト評価では「中立」とされることが多いです。


  • 様子見の目安:外部環境(鉄鋼価格、為替、海外事業動向など)の先行きが不透明な時期、または同社の大型買収(例えば米国の製鉄企業との買収交渉)などが株価の不確実要因となっている時期には、様子見が妥当と考えられています。


  • 売りの目安:財務体質の悪化、利益の急激な減少、外部環境の悪化(世界鉄鋼需給の逼迫/為替の急変)などが確認された場合には、「売り」または縮小検討すべき局面と認識されています。例えば、決算で赤字転落の報道が出ています。


3.株を買う場合の戦略(分散投資、ナンピンなど)

株を買う際には、以下のような戦略を検討すると良いでしょう:


  • 少額から段階的に購入:アナリストは、リスクが高めの銘柄として「いきなり多量買いよりも、まずは少量で経過を観察」という手法を提案しています。

  • 分散投資:この銘柄単体に集中せず、鉄鋼業界や景気敏感株、為替影響の少ない企業と併せてポートフォリオを構築することでリスクを軽減できます。

  • ナンピン(平均買い増し)戦略:もし株価が調整局面に入ったと判断されるとき、例えば需給悪化や業績悪化が一時的と見られるなら、段階的に買い増しを検討する手法も有効です。ただし、ナンピンは損失を拡大させるリスクもあるため、あらかじめ「買い下がりライン」や「損切りライン」を設定しておくことが重要です。

  • 定期見直しと損切りルールの設定:高リスク・高リターン銘柄として扱われており、期待シナリオが崩れた場合には「早めに損切り」という姿勢も示唆されています。

  • 長期保有前提での配当・株主還元チェック:配当利回り4%超という見方がある一方で、買収に伴う財務負担も指摘されています。 配当を重視するなら、同社の配当方針および財務健全性の動向を定期的に確認することが重要です。


よくある質問

Q1.配当支払いの株主確定日はいつですか?

当社の期末配当の株主確定日は 3月31日、中間配当の株主確定日は 9月30日 です。


Q2.配当方針について教えてください。

日本製鉄は、利益配分を重視し、連結ベースでの配当性向を年間 30%程度を目安 としております。


Q3.過去の業績推移や財務指標を知りたいのですが、どこで確認できますか?

過去の業績推移や主要な財務指標は、当社の「連結業績ハイライト」や「決算情報」のページで公開されています。


Q4.株主名簿管理人および株式事務の問い合わせ先はどこですか?

株主名簿管理人は 三井住友信託銀行株式会社で、株主名簿管理・株式事務関連のお問い合わせ先が同銀行の証券代行部となっています。


結論

日本製鉄株は、鉄鋼業界の国内トップ企業として安定した収益基盤と配当還元の魅力があります。一方で、鉄鋼価格の変動や為替、世界経済の影響など外部リスクも存在するため、短期的な急騰や下落には注意が必要です。


日本製鉄株を買うべきかを判断するポイントとしては、長期的な視点での成長性や株主還元策、財務健全性を重視しつつ、短期的な株価変動や市況ニュースも確認することが重要です。特に、鉄鋼需給の動向、為替相場の変化、国内外の大型インフラ投資などは、株価に影響を与える注目指標となります。


今後は、決算発表や業界ニュース、国際情勢の変化などを定期的にチェックしつつ、長期保有を前提とした戦略的な投資判断を行うことが望ましいでしょう。


免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。