公開日: 2025-12-08
2026年に向けて世界の経済環境は大きく変化しつつあります。各国の金利政策や景気サイクルが転換期を迎えており、業種によって明暗が分かれる状況が強まっています。
特に、デジタル化(DX)、脱炭素、高齢化といった構造的なトレンドは、今後長期的に成長するセクターを明確にしつつあります。
こうした中で、今後上がる株より「今後上がるセクター」を意識した投資は、成長の流れに乗りやすく、かつリスクの分散もしやすいことから、多くの投資家が注目しています。
有望セクターとその背景

1. テクノロジー/半導体・AIインフラ
SEMIの予測によれば、半導体製造装置(ウェーハ製造設備:WFE)市場は、2026年に売上高約 1390 億ドルに達する見込みがあります。特に、AI向けの高性能チップ需要、メモリ、ロジック用途などで設備投資が再加速すると見通されます。
また、グローバル全体の株式市場見通しのなかで、State Street Global Advisors(SSGA)は、2026年にテック株=特にAI関連のハイテク産業が大きな牽引力になる可能性を指摘。AIによる産業構造の変革が、引き続き投資テーマになる、という見方です。
背景には、生成AI、機械学習、クラウド/データセンター、AIインフラ整備などの需要増。多くの企業・組織がDX・AI投資を加速させており、これが半導体、サーバー、クラウドサービス、ソフトウェア企業の収益を押し上げる土壌となる、という構造。実際、米国や国際的な市場でこの流れを織り込む動きが見られます。
ただし、一方で「クラウド設備投資」が2026年に鈍化する、との予測もあるため(すでに急拡大した分の反動、あるいは投資効率、コスト管理の見直しなどを背景に)、「すべてのテック企業が恩恵を得るわけではない」という慎重な見方も重要です。
2. クリーンエネルギー/再生可能エネルギー
Research and Metric の「Industry Growth 2025」レポートでは、クリーンエネルギー&サステナビリティ分野の成長率(CAGR)が 約 28.4% と試算されており、非常に高い伸びが見込まれています。
また、世界的なエネルギー投資の流れとして、化石燃料から再エネ・クリーンエネルギーへのシフトが加速中。政策面でも各国で脱炭素・温室効果ガス削減の取り組み、再エネ促進の環境整備が進んでおり、こうしたマクロの追い風は中〜長期的に安定して見込めます。たとえば、電力インフラの刷新、蓄電池やグリッド対応などの需要が今後も継続します。
さらに、世界的なエネルギー市場の不確実性(資源価格の変動、地政学リスクなど)を背景に、「クリーン・安全・分散型エネルギー源」へのニーズが増大。これが、再エネ・クリーンエネルギーを“安定かつ持続的な投資先”とする見方につながっています。
3. ヘルスケア/バイオテック・医療テック
上記の「Industry Growth 2025」レポートでは、ヘルスケア技術およびバイオテック分野の成長率(CAGR)が約 31.7% と非常に高い数字になっており、医療/医療技術のイノベーション市場が今後拡大すると予想されています。
世界的に人口の高齢化が進み、医療・ヘルスケアの需要は構造的に伸び続ける見込み。さらに、デジタルヘルス、遠隔医療、AI医療診断、バイオテクノロジーなどの技術革新が重なり、「医療 × テック」の形で成長余地があります。これにより、従来の医療関連企業のみならず、医療テックやサービス、プラットフォーム型企業にも注目が集まります。
また、景気変動の影響を受けづらい「ディフェンシブ」な性質も強み。医療は人々の生活・健康と直結する分野であり、不況でも需要が大きく減りにくい — ポートフォリオに安定性を与える「守りのセクター」として重要視されています。
4. インフラ/クリーンエネルギー関連の「防御的インフラ株」
一部の資産運用会社は、今後のインフラ系株(エネルギー、電力、社会インフラなど)を「構造的に強い投資対象」と見ています。たとえば、BlackRock はプライベートおよび公開市場で、インフラ株の割安感と安定需要を評価しています。
再エネだけでなく、電力網整備、送配電インフラ、蓄電池、エネルギー効率化設備など、今後数年〜数十年にわたって必要とされる「インフラ再構築/更新」の流れがあるため。政策支援やグローバルトレンドの追い風を長期間享受できる可能性があります。
セクターごとのメリット・リスク比較
| セクター | メリット | リスク/注意点 |
| 半導体・AIインフラ/テクノロジー | 高成長ポテンシャル、需給構造の追い風 | バリュエーションの割高、技術変化の速さ、景気感応度 |
| 再生可能エネルギー/クリーンエネルギー | 中長期の社会的追い風、政策支援、安定需要 | 規制・政策リスク、採算性、原材料コスト変動 |
| ヘルスケア/医療テック | 安定需要、高齢化で成長見込み、景気の影響が少ない | 規制・承認リスク、開発の失敗リスク、技術・特許競争 |
| 日本の伝統・割安セクター | 割安感、景気回復途上での上振れ期待、安定配当や業績改善 | 成長の鈍さ、構造変化への対応、為替・国内経済への依存 |
2026年の「投資スタンス」提言
2026年は、金利のピークアウト、世界的なAI投資拡大、脱炭素政策、人口構造の変化など、多くの大きなトレンドが重なります。
そのため、投資スタンスは「どのようなリターンを狙うか」「どの程度のリスクを許容できるか」によって変わります。
① 成長を最大化したい人 → 半導体/AI/テックを厚めに
生成AI、クラウド、データセンター、EV、ロボティクスなど、未来の成長ドライバーが集中している領域。
半導体は設備投資が再加速し、AIインフラ需要も拡大が続く見通し。
テクノロジー企業は高成長だが株価変動も大きいため、「上昇局面での爆発力」を求める投資家向け。
② 安定とバランスをとりたい人 → ヘルスケア+クリーンエネルギー+割安株のミックス
ヘルスケアは景気に左右されにくく、安定収益が期待できる。
クリーンエネルギーは長期政策の追い風が続き、将来性も高い。
日本の割安株(バリュー株)は、国内経済の回復や設備投資増で上昇余地がある。
これらを組み合わせることで、「安定しながら成長も狙える」バランス型の投資が可能です。
③ リスクを抑えて守りを固めたい人 → ヘルスケアや国内バリュー株中心
ヘルスケア(医薬、医療機器)は需要が安定しているため、相場が弱い時にも強い。
国内のバリュー株(銀行、商社、不動産、機械など)は、配当が比較的高く、価格が割安で変動も小さめ。
景気悪化時の下落耐性が高く、ポートフォリオの「防御力」を高める。
④ 中長期のテーマに乗りたい人 → ESG・クリーンエネルギー・医療テック
ESG(環境・社会・ガバナンス)は、世界的に資金流入が続く構造的テーマ。
クリーンエネルギーは、脱炭素・エネルギー安全保障の流れが10年単位で継続。
医療テックは高齢化×技術革新で長期的に巨大市場へ成長。
これらは「数年ではなく、10年以上続く大きな流れ」に乗る投資であり、長期ポートフォリオに向いている。
注意点と今後ウォッチすべき変数
2026年に向けて有望なセクターが見えてきたとしても、市場環境は常に変化します。
そのため、投資判断には「どの要素が株価に大きな影響を与えるのか」を理解し、定期的にチェックすることが重要です。
① 世界の金融政策(金利・中央銀行の動き)
株式市場に最も強い影響を与えるのは「金利」です。
FRB(米連邦準備制度)の利下げ・利上げのタイミング
ECB・日銀など、主要国の金融政策スタンス
インフレ率の進行、物価の鈍化や停滞
これらは、特に以下のセクターに強い影響があります:
半導体・AI・グロース株 → 金利が下がると株価が上がりやすい
銀行・保険など金融株 → 金利が高いと収益が増えやすい
2026年は、金利サイクルの転換点になる可能性が高く、慎重に見る必要があります。
② 技術革新のスピードと規制の動き(AI・バイオ・エネルギー)
成長セクターほど、規制と技術変化の影響が大きいのが特徴です。
たとえば:
AI:生成AIの性能向上、GPU需要、データセンター整備、AI規制
バイオテック:新薬承認スケジュール、臨床試験結果、各国の医療制度
クリーンエネルギー:政府補助金、脱炭素政策、排出権価格、国際規制
技術革新が加速すると市場は強気になりますが、規制強化や技術停滞が起きると、セクター全体が下落することもあります。
特にAIと再エネは「ニュース1つ」で株価が大きく動く点に注意が必要です。
③ 為替、地政学リスク、国際情勢(特に資源・エネルギー)
世界の株式市場は地政学の影響を受けやすい状態が続いています。
中東・ロシア情勢 → 原油価格の乱高下
米中対立 → 半導体・テック株への影響
円安 or 円高 → 日本株の追い風・逆風
海上輸送の混乱 → エネルギー・資源関連の需給変動
特に日本株は、「円安 → 輸出企業プラス」「円高 → マイナス」という構造が続いているため、為替は必ずチェックすべき変数です。
④ 日本国内の景気・賃金・消費・政策の動向
国内要因も、日本株投資では非常に重要です。
賃金上昇の持続性 → 内需関連株に追い風
設備投資の増加 → 機械・自動化・IT企業にプラス
個人消費 → 小売・外食・サービス業が恩恵
政府の産業政策
例:GX(グリーントランスフォーメーション)、DX、半導体支援
日銀政策(YCC終了・金利正常化)
また、日本は今後「半導体・再エネ・インバウンド・医療」の強化を国策として進めており、これらの政策は関連セクターの株価に直接プラスの影響を与えます。
まとめ — 今後上がる株の候補セクター
脱炭素やデジタル化、高齢化といった世界的な構造変化は年々スピードを増しており、2026年以降の市場を左右する長期テーマになっています。これらは一時的な流行ではなく、企業の投資計画や国家政策にも深く組み込まれているため、持続的な成長が期待されます。
過去のように「割安株」や「安定株」だけに注目する投資スタイルから、成長性と安定性のバランスを重視する投資へと移行している点も重要です。今はテーマ株(AI、再生エネルギーなど)と伝統的なバリュー株の両方を見極める時代と言えます。
さらに、インフレ鈍化や金利動向の変化など、マクロ環境の転換が起きつつあるとの見方も強まっています。こうした構造変化と経済環境の変化が重なり、2026年はセクター投資の新たなチャンスが生まれるタイミングとして注目されています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2026年に最も上昇が期待できるセクターはどれですか?
現時点で注目されているのは、AI・半導体、クリーンエネルギー、医療テクノロジー、インフラ関連、サイバーセキュリティです。いずれも世界的な需要増が見込まれており、国家予算や企業投資の対象としても優先度が高いテーマです。
Q2. 今後上がる株を選ぶ際、最も重要なポイントは?
一時的なブームではなく、長期的に需要が増える構造変化(AI、高齢化、脱炭素、デジタル化)に関わる企業かどうかが重要です。さらに、利益成長率、設備投資計画、他社との差別化(技術力・特許・顧客層など)もチェックすべきポイントです。
Q3. セクター投資をする際、分散投資は必要ですか?
A. 必要です。特にテーマ株は値動きが大きくなるため、異なるセクター(AI、エネルギー、医療など)に分散することでリスクを抑えつつ、成長機会を広く取り込むことができます。ETFを利用すると効率的な分散が可能です。
Q4. 日本株と米国株、2026年はどちらが有利ですか?
どちらにも強みがあります。
米国株:AI・半導体・テックなど世界をリードする企業が多い。
日本株:円安の恩恵、製造業の再評価、インバウンド関連などが優位。
2026年は「日本の製造業+米国AI株」の組み合わせを重視する投資家が増えると予想されています。
Q5. セクターごとの成長性を判断するために、どの指標を見れば良いですか?
業界別の将来性を見るためには、次の指標が参考になります。
設備投資額(CAPEX)
政府の政策・補助金動向
需要予測(AI市場規模、再エネ導入量など)
企業の売上成長率・利益率
セクター別ETFの資金流入量
これらを総合的に判断することで、どのセクターが2026年に伸びるかの精度が上がります。
免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。