公開日: 2025-12-01
国策銘柄とは、政府が重点的に支援している産業や政策と深く関わる企業の株のことです。
補助金・規制緩和・公共投資などの後押しを受けるため、長期的に業績が伸びやすい傾向があります。
政府が力を入れるテーマはその時代によって変わりますが、政策が動けば関連企業のニーズが増えるので、株価に追い風が吹きやすくなります。
本記事では、国策銘柄一覧をテーマ別で詳しく解説します。

国策銘柄一覧:テーマ別
① 半導体(Semiconductor)
日本政府は半導体産業を国家戦略の中心に据えており、国内回帰や供給網強化を目的とした大型投資が進んでいます。TSMCの進出や国内製造ラインの拡張などが追い風となり、製造装置を手がける東京エレクトロンや計測装置のアドバンテスト、シリコンウェーハ大手のSUMCOといった企業が注目されています。これらの銘柄は、世界的な需要拡大と国の支援策によって中長期的な成長が期待される、代表的な国策銘柄です。
代表的な銘柄
東京エレクトロン(8035):株価は約31.700円
アドバンテスト(6857):株価は約19.650円
② 防衛・安全保障(Defense)
地政学リスクの高まりを背景に、日本は防衛費の大幅増額と防衛装備の強化を進めています。三菱重工業、川崎重工業、IHI などは自衛隊向けの航空機や艦艇、防衛システムを手がける中心的企業であり、防衛政策と直接結びついた銘柄です。また、サイバー攻撃対策の重要性が増す中、NECや富士通などの情報セキュリティ関連も、安全保障分野の国策テーマとして存在感を高めています。
代表的な銘柄
三菱重工業(7011):株価は約3.947円
IHI(7013):株価は約2.785円
③ 脱炭素・GX(グリーントランスフォーメーション)
日本は 2050 年カーボンニュートラル達成を掲げ、再生可能エネルギー・水素・CCUS(CO₂ 回収・貯留・利用)などの投資を急速に拡大しています。この流れの中、三菱重工業の水素タービンやCO₂回収技術、IHIの脱炭素設備プロジェクト、ENEOSの再生エネやCCUS推進などが国策と連動した動きを見せています。エネルギー転換を支えるこれらの企業は、政策支援を背景に長期的な追い風が期待できる分野です。
代表的な銘柄
レノバ(9519):株価は790円前後
④ AI・デジタル化(DX)
政府は行政手続きの電子化や企業のデジタル投資を促進するため、DX推進施策を継続しています。NECや富士通は行政向けシステムやデータ活用支援で強い立場にあり、AI開発を進めるサイバーエージェントや、クラウドサービスを提供する大手IT企業も恩恵を受ける可能性があります。日本全体の生産性向上を目指したデジタル化政策は、ITインフラ・AI企業にとって国策の追い風となっています。
代表的な銘柄
りそなホールディングス(8308):株価は約1.592円
大日本印刷(7912):株価は約2.608.50円
横河電機(6841):株価は約4.885円
⑤ インフラ投資・建設
老朽化した道路・橋梁・トンネルの更新や、防災・減災のための国土強靭化が進められています。大成建設や清水建設などの建設大手はもちろん、建機メーカーのコマツ、さらには電力・ガスなどのライフライン企業も投資対象として注目されます。政府が継続的に大型予算を投じる分野であるため、安定した成長が期待されるテーマのひとつです。
代表的な銘柄
大成建設(1801):株価は約13.195円
⑥ 医療・バイオ(Healthcare / Bio)
高齢化が進む日本では、医療制度の維持と先端医療の強化が国策として位置づけられています。武田薬品工業や第一三共、中外製薬といった大手製薬会社は、創薬や先端治療の開発で政策支援を受けやすい立場にあります。また、医療DX 推進により電子カルテや医療データ管理の需要が高まるため、医療IT企業にも注目が集まっています。
代表的な銘柄
第一三共(4568):株価は約3.864円
中外製薬(4519):株価は約8.053円
⑦ 観光・インバウンド
観光立国としての成長戦略を掲げる日本では、インバウンド需要を取り込むための政策が継続しています。航空の ANA・JAL、鉄道の JR 東日本、大手旅行会社 HIS をはじめ、ホテル・小売り業、アミューズメント関連まで幅広い業界が恩恵を受けるテーマです。円安が進む局面では特に、観光消費拡大による業績改善が期待される傾向があります。
代表的な銘柄
ANAホールディングス(9202):株価は約2.949.5円
エイチ・アイ・エス(9603):株価は約1.284円
国策銘柄のメリット・リスク
国策銘柄には、政府の支援や補助金、規制緩和を背景として中長期的な成長が期待しやすいという大きなメリットがあります。政策の後押しによって企業の投資が活発になり、市場全体の注目度も高まるため、株価が安定しやすく、需給面でも比較的強い動きが続きやすいことが特徴です。また、インフラ・エネルギー・DX・観光など国家方針に沿った分野は、景気に左右されにくく、長期的なテーマとして投資家の支持を得やすい傾向があります。
一方で、国策銘柄には政策変更リスクが常に付きまといます。政権交代や国の予算方針の転換によって、突然テーマそのものが弱まる場合があり、その際は株価が急落することもあります。また、政策の発表や補助金決定を材料に株価が先行して上がり、期待がすでに織り込まれてしまう「材料出尽くし」によって、好材料発表後にかえって株価が下がるケースも少なくありません。したがって、国策銘柄は追い風を受けやすい一方で、政策スケジュールの変化を常にチェックすることが重要です。
国策銘柄の選び方
■ テーマごとの成長余地
国策銘柄を選ぶ際には、まずそのテーマが今後どれほどの成長を見込めるかを確認することが重要です。たとえば再生可能エネルギー、AI・デジタル化、防衛、半導体、観光インバウンドなどは、政府が中長期にわたり予算を割き続ける可能性が高く、企業の事業環境も継続的に拡大しやすいです。さらに、テーマの成熟度も考慮すべきで、立ち上げ段階にあるテーマほど大きな成長が期待できる一方、競争や政策の変更によるリスクも高くなります。こうした成長余地を把握することで、将来の収益機会が大きい銘柄を見極めることができます。
■ 財務健全性・株価水準のチェック
国策という追い風があったとしても、企業の財務基盤が弱ければ安定した成長は望めないです。自己資本比率、営業利益率、フリーキャッシュフロー、負債水準などを確認することで、その企業が政策の恩恵を着実に事業成長につなげられるかを判断できます。また、株価がすでにテーマ期待で上がりすぎている場合には、割高リスクが高まるため、PER・PBR・過去の株価水準との比較も重要となります。国策銘柄であっても、基本的なファンダメンタルズ分析をおろそかにしないことが、長期的なリターンを得るための鍵となります。
■ 政府発表・補助金・国家戦略レポートの読み方
国策銘柄を探す際には、内閣府、経済産業省、財務省などが発表する政策文書や国家戦略レポートを定期的にチェックすることが有効です。補助金制度、新規予算の配分、産業育成策、規制緩和の方針などが明記されているため、どの分野に資金が流れ、どの産業が優遇されるのかが明確にわかります。特に、名称が具体的に挙がっている「重点産業」や「支援対象技術」などは、銘柄発掘のヒントとなる。また、政策は数年単位で継続されることが多いため、政策の流れを時系列で追うことで、中期的に追い風が続く銘柄を見つけやすくなります。
よくある質問(Q&A)
Q1. 国策銘柄は本当に儲かる?
国策銘柄は、政府が重点的に取り組む政策テーマと関連しているため、需要拡大や補助金、規制緩和の恩恵を受けやすく、中長期的に成長しやすい傾向があります。しかし、必ず利益が出るわけではなく、企業ごとの業績、競争環境、政策の継続性などによってパフォーマンスは大きく変わります。国策という追い風はあるものの、企業分析やリスク管理が欠かせない点は通常の株式投資と同じです。
Q2. 国策銘柄は長期投資向き?短期向き?
一般的には、国策銘柄は 長期投資向き とされます。政府の政策は通常3〜5年単位で進められるため、テーマが継続する期間は比較的長く、企業の業績も政策の進捗とともにじわじわと成長していくケースが多いからです。一方、短期的にもニュース・補助金決定・規制変更などに反応して株価が動くことがあり、短期トレードも可能ですが、値動きが荒くなることも多いためリスク管理が必須です。
Q3. 初心者でも買いやすいテーマは?
初心者にとって買いやすいのは、事業内容が分かりやすく、社会的需要が明確なテーマです。
例)インバウンド、インフラ整備、医療関連、半導体など。
これらはニュースや社会トレンドで理解しやすく、政策の方向性も比較的読み取りやすいため、初めてテーマ投資をする人でも取り組みやすい分野です。ただし、テーマ人気が高まりすぎると過熱しやすいため、割高な状態で飛び乗らないよう注意が必要です。
Q4. 国策が外れたらどうなる?
政府の政策が変更されたり、優先度が下がったりした場合、関連銘柄は「材料出尽くし」や成長期待の後退から株価が下落しやすくなります。特に、補助金や規制緩和が強い追い風となっていた企業は、そのサポートがなくなることで業績に影響する可能性があります。そのため、国策銘柄に投資する際は、政策の継続性や企業の本来の事業競争力も併せてチェックすることが重要です。
結論
国策銘柄は、政府の政策や予算が直接追い風になるため、中長期的なトレンドを狙う際に非常に有効な投資テーマとなります。この国策銘柄一覧では、AI・デジタル化、インバウンド、半導体、防衛、クリーンエネルギーなどは政府の支援が継続しやすく、長期的に成長を促す構造的要因が強いテーマです。
ただし、「国策だから買えば勝てる」というわけではなく、まず政策テーマを正確に把握し、その中で実際に恩恵を受ける企業を選ぶ力が求められます。また、市場環境の変化や企業ごとのリスクを管理しながら、適切なタイミングでのエントリーと利益確定を行うことが重要です。
テーマ理解 → 銘柄選定 → リスク管理を一連の流れとして運用できる投資家は、国策銘柄のポテンシャルを中長期で最大限に活かすことができます。
免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。