公開日: 2025-11-09
世界的にAI技術の発展が加速する中で、日本のAI関連株にも関心が高まっています。ChatGPTなどの生成AIの登場により、AIはビジネスや社会のあらゆる分野に浸透しつつあります。日本企業も通信、製造、ITなど多様な分野でAIを積極的に導入し、業務効率化や新しいサービス開発を進めています。こうした動きから、日本のAI関連株は中長期的な成長が期待できる投資テーマとして、多くの投資家に注目されています。
日本のAI関連株とは?

日本のAI関連株とは、人工知能(AI)の開発や活用を行う日本企業の株を指します。AI技術を自社で研究・開発している企業だけでなく、AIを活用して業務効率化や新製品開発を進める企業も含まれます。そのため、AI関連株は幅広い業種にまたがっており、通信、製造、ソフトウェア、金融、サービス業など多様な分野で見られます。
以下は、日本市場におけるAI関連株を代表する主なカテゴリーです。
1. 生成AI・自然言語処理
文章生成や音声認識など、人間の思考や言語を模倣するAI分野です。
NTT:独自の大規模言語モデル「tsuzumi」を開発。
ソニーグループ:AIを活用した音声アシスタントやコンテンツ制作に注力。
富士通:企業向け生成AIサービスを展開。
2. 画像認識・自動運転
カメラやセンサーを通じて環境を理解し、自動化を実現するAI技術です。
NEC:顔認証AIで世界トップクラスの精度を持つ。
トヨタ自動車:自動運転技術にAIを活用し、安全運転支援を強化。
ファナック:AI制御による産業用ロボットの最適化を推進。
3. 半導体・AIインフラ
AIの処理を支えるハードウェアやクラウド基盤を提供する分野です。
ソシオネクスト:AI処理向けの半導体チップを開発。
ルネサスエレクトロニクス:自動車やIoT機器向けのAI対応半導体を供給。
ソフトバンク:AIデータセンターやクラウドインフラ投資を拡大。
4. AIサービス・SaaS関連
AIを使った業務支援ツールやクラウドサービスを展開する企業群です。
ブレインパッド:企業のデータ分析・AI導入支援を行う。
HEROZ:AIを活用した金融・将棋アルゴリズムで注目。
サイバーエージェント:広告配信やコンテンツ制作にAIを導入。
このように、日本のAI関連株は「AI技術を作る企業」と「AIを使う企業」に大別されます。AIは今後も産業の中心技術として発展していくため、これらの銘柄は長期的な成長テーマとして注目に値します。
日本のAI関連株の注目企業一覧(2025年版)
| 企業名 | ティッカー | 主なAI領域 | 特徴 |
| ソフトバンクグループ | 9984 | 投資・AI戦略全般 | OpenAI投資など世界AIネットワーク構築 |
| NTT | 9432 | 通信×AI | 大規模言語モデル「tsuzumi」開発 |
| 富士通 | 6702 | AIソリューション | 医療・製造分野へのAI導入 |
| NEC | 6701 | 画像認識・セキュリティ | 顔認証AIで世界シェア上位 |
| ソニーグループ | 6758 | 生成AI・自動運転 | AIイメージング・ゲームAI強化 |
| Preferred Networks | 非上場 | 深層学習 | トヨタなどと提携し産業AIを推進 |
| ディープコア(SoftBank傘下) | 非上場 | AIスタートアップ投資 | 次世代AI技術の育成支援 |
日本のAI関連株の中でも、特に注目されている企業には、それぞれ明確な強みと独自のAI戦略があります。以下では、主要な企業を中心にその特徴を紹介します。
まず、ソフトバンクグループ(9984)は、日本を代表するAI投資企業として世界的な存在感を示しています。同社はOpenAIなど海外AI企業への投資を通じて、グローバルなAIネットワークの構築を進めており、AI分野を長期的な成長エンジンと位置づけています。
次に、NTT(9432)は通信事業を軸にAI技術の開発を進めています。独自の大規模言語モデル「tsuzumi(つづみ)」を発表し、日本語特化型AIとして注目を集めています。通信インフラとAIの融合により、企業や自治体向けのソリューション展開を拡大しています。
富士通(6702)は、AIを活用したソリューション提供に力を入れており、医療や製造など幅広い分野でAI導入を進めています。特にデータ解析とAIを組み合わせた業務効率化の支援に強みを持っています。
NEC(6701)は、画像認識やセキュリティ分野で高い技術力を誇ります。中でも顔認証AIは世界トップクラスの精度を持ち、空港や公共施設などで実用化が進んでいます。安全・安心社会の実現を支えるAI技術として注目されています。
ソニーグループ(6758)は、生成AIや自動運転など、幅広い領域でAIを積極的に活用しています。特にカメラセンサーを活かしたAIイメージング技術や、ゲーム領域でのAI応用は、同社ならではの強みといえます。
また、Preferred Networks(プリファード・ネットワークス)は非上場ながら、日本のディープラーニング分野を代表する企業です。トヨタ自動車などと提携し、産業用ロボティクスや自動運転などの分野でAIの社会実装を進めています。
さらに、ディープコア(Deepcore)はソフトバンク傘下のAIスタートアップ投資会社であり、次世代AI技術の育成支援に注力しています。多くのAIベンチャー企業の成長を支援することで、日本のAIエコシステムの基盤強化を図っています。
これらの企業はいずれも、AIを中心とした事業展開を進めており、日本のAI産業の成長を支える中核的存在といえます。AI関連株としての将来性も高く、今後の動向から目が離せません。
セクター別の動向と強み
日本のAI関連株は、業種ごとに異なる強みを持ち、それぞれの分野で独自の成長ストーリーを描いています。AIの活用方法やビジネスモデルも多様であり、通信、製造、IT、投資の4つのセクターで特に顕著な動きが見られます。
1.通信系(NTT・KDDI):インフラと生成AIの融合
通信業界では、AIを活用したインフラの高度化やサービスの最適化が進んでいます。
NTTは独自の大規模言語モデル「tsuzumi」を開発し、日本語に特化した生成AI技術を活用して企業向けソリューションを拡大中です。通信データの解析やネットワーク自動制御にもAIを導入し、運用効率を高めています。
KDDIもAIを用いた顧客データ分析や、5Gと組み合わせたスマートシティ構想を推進。通信インフラと生成AIの融合によって、次世代の都市サービスや産業支援を実現しようとしています。
2.製造系(トヨタ・ファナック):AIによる自動化・ロボティクス
製造業は、AIによる自動化が最も進んでいる分野の一つです。
トヨタ自動車は、自動運転技術や生産ラインの最適化にAIを活用しています。自動運転分野では、AIによる環境認識と判断技術を磨き、安全性と効率を両立させています。
ファナックは産業用ロボットの世界的リーダーであり、AIを用いた「学習型ロボット」の開発を進めています。製造現場での自律制御や故障予測にAIを導入することで、生産効率の向上を実現しています。
3.IT系(富士通・NEC):BtoB向けAIソリューション
IT企業は、AIを企業システムや公共サービスに組み込み、デジタル変革を支援しています。
富士通は、AIとクラウドを組み合わせた「AIプラットフォーム」を展開し、製造・医療・物流など多様な業界にソリューションを提供しています。
NECは顔認証AIで世界トップクラスのシェアを持ち、防犯・入退室管理などの分野で実用化を進めています。また、自治体や公共インフラでのAI活用を通じ、安心・安全な社会づくりにも貢献しています。
4.投資系(ソフトバンクグループ):世界AIエコシステムへの投資拡大
ソフトバンクグループは、AI分野における投資の中心的存在です。自社のVision Fundを通じて、世界中のAIスタートアップに資金を提供し、AIエコシステムの拡大を支えています。特にOpenAIやArmなど、AIインフラや半導体分野の企業への戦略投資が注目されています。また、国内ではAIデータセンターの整備やAI教育支援にも取り組み、AI技術の普及基盤を築いています。
日本のAI関連株は各セクターで異なる強みを持ちながらも、共通して「AIによる社会変革」を目指しています。業種ごとのAI活用が相互に連携することで、日本のAI市場全体の成長がさらに加速していくと考えられます。
株価動向と将来の見通し
2024年から2025年にかけて、日本のAI関連株は世界的なAIブームの波に乗り、全体的に上昇傾向を見せています。特に生成AI(Generative AI)の実用化が進んだことで、AI技術を活用する日本企業の評価が高まり、株式市場でもAI関連銘柄がテーマ株として注目されました。
2024年前半には、米国市場でのNVIDIAやMicrosoftなどのAI関連株の上昇が日本市場にも波及し、NTT、ソフトバンクグループ、富士通などのAI関連銘柄が買われる展開となりました。AIを活用した新製品やサービス発表が相次いだことで、短期的な株価上昇を後押しした一方、生成AIの開発コストや設備投資負担の拡大により、銘柄によっては一時的な調整局面も見られました。
また、日本のAI関連株は米国のAI株との連動性が高いことも特徴です。特に、NVIDIAなど半導体メーカーの決算やAI開発企業の発表が、日本市場のAI銘柄の値動きに影響を与える場面が増えています。たとえば、NVIDIAのGPU需要が増加すると、関連する日本企業(ルネサスエレクトロニクス、ソシオネクストなど)の株価が連動して上昇する傾向があります。
さらに、政府による支援もAI関連株の追い風になっています。経済産業省は「AI戦略2025」を掲げ、生成AIや産業AIの研究開発支援、AI人材育成への投資を強化しています。特に、官民連携による「AI半導体開発支援プロジェクト」や「データセンター整備補助金」などの施策は、国内企業の競争力強化に直結しています。これにより、日本市場では中長期的にAI産業の基盤整備が進み、AI関連株の成長が持続する可能性が高まっています。
今後の見通しとしては、AI技術がさらに社会に浸透することで、AI関連株は単なる短期テーマではなく、「次世代産業を支える基幹分野」として定着していくことが期待されます。特に、生成AI、自動運転、AI半導体、データセンターなどの分野に注力する企業は、2025年以降も安定的な成長を遂げると見られています。
投資戦略:AI関連株の選び方
日本のAI関連株に投資する際には、単に話題性や一時的な株価上昇だけでなく、企業の成長性・技術力・事業展開の方向性を見極めることが重要です。AI市場は日々進化しており、長期的に成果を上げる企業は、持続的な研究開発(R&D)と実用化能力を兼ね備えています。以下の3つの視点から、効果的な投資戦略を整理します。
1. 成長性・研究開発力・海外展開で選ぶ
AI関連株を選ぶ際は、企業がどの分野でAIを活用し、どの程度の競争優位を持っているかを確認することが重要です。
たとえば、NTTや富士通のように独自AIモデルを開発している企業は、中長期的にAIインフラを提供する立場として安定した成長が期待できます。
また、ソニーグループやトヨタ自動車のようにAIを製品・サービスに組み込み、グローバル市場で展開している企業も注目に値します。海外展開が進む企業は、国内需要に依存せず、世界的なAI需要の拡大を取り込むことができる点が魅力です。
2. 長期保有 vs 短期トレードの考え方
AI関連株は、技術革新によって株価の変動が大きくなる傾向があります。したがって、投資スタイルに応じた戦略を立てることが大切です。
長期保有を考える場合:AIは今後10年以上にわたって成長が期待されるテーマであり、企業の研究開発や事業化の進展をじっくり見守る姿勢が求められます。株価の一時的な上下に左右されず、AIインフラやデータセンター、半導体などの「基盤分野」に注目するのが有効です。
短期トレードを狙う場合:決算発表や新製品発表など、AI関連ニュースが出るタイミングを活用します。生成AIの実用化や新しい提携発表など、トレンド性の高いイベントが株価急騰の引き金になることもあります。
3. 分散投資とETF活用の重要性
AI分野は成長が早い一方で、技術競争が激しく、特定の企業に集中投資するリスクも存在します。そのため、複数の銘柄やETFを組み合わせた分散投資が効果的です。
個別株の選定が難しい場合は、AI関連企業をまとめて投資できるETF(上場投資信託)を活用するのも一つの方法です。たとえば、米国市場では「Global X Robotics & Artificial Intelligence ETF(BOTZ)」が人気であり、日本株ではAI関連企業を含むテクノロジーETFが複数上場しています。
これにより、個別銘柄のリスクを軽減しながら、AI分野全体の成長を取り込むことが可能になります。
日本のAI関連株の投資戦略は「成長性・分散・時間軸」のバランスを取ることが鍵です。AIは今後も社会や産業の中心となるテーマであり、短期的な値動きよりも中長期的な技術の進化と企業の実行力に焦点を当てることが、安定したリターンを得るためのポイントといえるでしょう。
よくある質問
Q1:AI関連株はどのくらいのリスクがありますか?
AI関連株は成長性が高い一方で、技術革新のスピードが速く、業績の変動も大きい傾向があります。短期的な値動きが激しいため、長期的な視点での投資が推奨されます。
Q2:個人投資家でも購入しやすい日本のAI関連銘柄は?
NTT、富士通、ソニーグループなど、上場規模が大きく流動性の高い銘柄は初心者にも人気です。また、ブレインパッドやHEROZのような中小型AI企業も注目されています。
Q3:AI関連ETFはありますか?
はい、AIやロボティクス関連企業に分散投資できるETFがあります。例として「グローバルX ロボティクス&AI ETF(BOTZ)」や、日本市場では「NEXT FUNDS NASDAQ100連動型ETF」などが挙げられます。
Q4:今後注目すべきAIテーマ(量子AI、生成AIなど)は?
今後は「生成AI」に加え、「量子AI」や「AI半導体」、「自動運転AI」などの分野が成長テーマとして注目されています。特に生成AIは、ビジネス・教育・医療など幅広い分野で実用化が進む見込みです。
結論:日本のAI関連株は中長期テーマ
日本のAI関連株は、短期的なブームではなく、産業構造そのものを変える長期的なテーマです。特に、日本企業は製造業や通信分野での強みを生かし、AI技術を実際のビジネスや生産効率向上に結びつけています。したがって、AI関連株は中長期的に成長が期待される分野といえるでしょう。
免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。