公開日: 2025-11-07
日本電信電話株式会社(NTT)は、1985年に日本電信電話公社の民営化によって設立された、日本最大の通信事業者です。現在は固定通信や携帯通信(NTTドコモ)、データセンター事業、クラウドサービスなど、幅広い分野で国内外に事業を展開しています。
通信インフラを支える中核企業として、安定した収益基盤と高い配当水準が特徴であり、個人投資家からも長期保有銘柄として注目を集めています。
本記事では、NTTの現在の株価水準を確認し、業績や市場動向を踏まえた投資判断の参考情報を提供します。
NTTの現在の株価と基本指標

1.株価状況
最新株価はおおよそ150円前後です
年初来高値が167.2 円(2025/08/20)、年初来安値が135.2 円(2025/04/07)となっています。
時価総額も十数兆円規模で、安定した大型株として位置づけられています。
2.主要指標(株価評価・株主還元関連)
予想 PER(株価収益率)はおおよそ 12~13倍。
実績 PBR(株価純資産倍率)は約 1.3~1.4倍。
配当利回り(会社予想)は約 3.3 %前後。
1株当たり配当予想は 5.30円(2026/03期)です。
配当性向(純利益に占める配当の割合)はおおよそ 43.5 % となっています。
3.補足ポイント・読み取りのヒント
PERが12倍台というのは、株価が利益水準に比して「割高・割安」の指標で見ると「極端に割高」ではないと見られるレンジです。
PBRが1倍台という点から、株価が帳簿価値(純資産)に対して極端にプレミアムを載せていないことが伺えます。
配当利回り3%超というのは、国内大型通信株としてはかなり魅力的な水準と捉えられることがあります。
年初来高値~安値レンジ(135円~167円)を考えると、現状159円付近はレンジの上位側に位置しており、株価上昇余地/下落リスク双方を慎重に見るべきです。
業績・財務の現状
1.最近の決算ハイライト
2024年度(2024年4月~2025年3月期)の連結決算では、営業収益が約 13兆7.047億円 と前年同期比約 +2.5%の増収となっています。
一方で、営業利益は約1兆6.496億円と前年同期比約 -14.2% 減少しました。
当社に帰属する当期利益(親会社株主に帰属する利益)は約 1兆円 水準で、減益傾向にあります。
2025年度(予想)では、営業収益が約 14兆1.900億円(+増収)、営業利益も増益(約1兆7.700億円)と復調の見込みが出されています。
これらから言えることとして、収益面では安定した増収を確保しているものの、利益部分では設備投資・減価償却・構造変化などコスト負担がかさむ影響を受けており、利益減少というチャレンジを抱えています。
2.財務指標・安全性・効率性
自己資本比率(=純資産 ÷ 総資産)は、2025年3月期で「約 34.0%」となっています。
ROE(自己資本利益率)は、最新ではおおよそ「11.06%」の予想値となっています。
ROA(総資産利益率)も3%台後半〜4%台という水準で、資産全体を使った収益効率は決して非常に高いとは言えないものの、通信インフラという資本集約型事業を考慮すれば一定の水準を保っています。
配当性向(純利益に対して配当支払が占める割合)は、2025年3月期予想で約「43.5%」となっており、株主還元姿勢もしっかりと示されています。
これらを総合すると、NTTは収益性・効率性・安全性のバランスにおいて“堅実な大型通信企業”という位置付けが可能です。ただし、利益面の減少や設備投資負担など、今後の成長ドライバーとコスト構造の改善が鍵となる点には注意が必要です。
3.業界内での位置づけ
NTTは国内最大手の通信事業者として、固定回線、携帯(旧ドコモ関連)、クラウド・データセンター、ICTソリューション等多数のサービスを展開しています。
通信インフラという社会インフラに近い事業特性から、景気サイクルの影響を受けにくいというメリットがあります。ただし、設備更新・通信料金の規制・競争激化(MVNO 等)・グローバル展開の遅れなど、成長面でのチャレンジも抱えています。
長期保有を視野に入れた場合、安定収益・高配当という観点で魅力がありますが、成長性を重視する投資家から見ると“十分な拡大余地があるか”という視点も重要です。
株価を左右する要因・リスクと機会
NTTの現在の株価は、通信業界の構造的変化や国内外の経済環境に大きく影響を受けます。ここでは、投資判断に直結する主なリスク要因と機会要因を整理します。
■ リスク要因
通信業界の競争激化
KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルなどとの価格競争が長期化しており、料金引き下げ圧力が利益率を押し下げる可能性があります。特に政府主導の通信料金是正政策は、NTTグループにとって収益面でのリスクとなります。
設備投資・システム更新コストの増加
5G・6Gインフラの整備、光回線やクラウド関連設備の更新など、巨額の投資を継続的に必要とします。投資負担が増大すると、短期的な利益圧迫要因となるほか、資金繰りや財務レバレッジへの影響も懸念されます。
規制・政策リスク
通信事業は公共性が高く、政府や総務省の方針変更が経営戦略に直結します。たとえば、NTT法の改正議論や公的機関による競争促進政策などが、事業構造に影響を及ぼすリスクがあります。
海外展開における為替・政治リスク
海外子会社(NTT DATAなど)を通じたグローバル事業拡大も進む一方で、為替変動や現地政治リスクによる収益変動の可能性も無視できません。
■ 機会要因
安定したキャッシュフローと高配当政策
通信インフラという事業特性から、景気変動に左右されにくい安定的なキャッシュフローを維持しています。配当利回りは3%超と国内大型株の中でも高水準で、株主還元方針も継続的に強化されています。
デジタル化・クラウド需要の拡大
国内外でデジタルインフラの需要が拡大する中、NTTはクラウドサービスやデータセンター、AI関連ソリューションを提供する立場として成長余地があります。特にNTTデータやNTTコミュニケーションズなどグループ企業との連携が強みです。
6G・スマートシティ構想への期待
次世代通信技術「IOWN構想(Innovative Optical and Wireless Network)」の実用化が進めば、通信速度・エネルギー効率の両面で世界的な優位性を築く可能性があります。中長期では新しい成長ドライバーとなる分野です。
政府・自治体との連携強化
災害対策、行政デジタル化、地域通信網の整備など、公共インフラ分野での需要が安定しており、長期的な収益源となりやすい点も評価されています。
■ 値幅制限・流動性・信用倍率などの投資上の留意点
値幅制限:東証プライム市場上場銘柄として、日々の株価変動幅には上限があり、極端な乱高下は起こりにくい特徴があります。
流動性:NTTは取引量が多く、個人投資家・機関投資家ともに参加しやすい高流動性銘柄です。売買コストが比較的低く、短期・長期双方の投資戦略に適しています。
信用倍率:直近では信用買い残がやや多く、需給面では短期的な調整局面が生じやすい点に注意が必要です。
総じて、NTTは「安定収益と高配当」というディフェンシブな強みを持つ一方、設備投資負担や政策リスクといった中長期の課題も存在します。投資を検討する際は、こうしたバランスを踏まえたリスク管理が重要です。
投資家視点:買い/保有/売りの判断材料

特に2024年以降、企業のガバナンス改善やPBR(株価純資産倍率)改革、海外マネーの流入といった構造的な要因が市場の強さを支えています。また、日銀の金融政策の正常化への期待、円安による輸出企業の収益押し上げ効果、そしてAI関連や再生エネルギー関連銘柄への関心の高まりが、株価上昇の原動力となっています。
さらに、個人投資家層の拡大も注目点です。新NISA制度の導入によって、長期投資志向の個人マネーが市場に流入しており、特にTOPIXや日経平均採用銘柄への資金集中が進んでいます。これらの動きは日本市場全体の安定性を高めるとともに、中長期的な株価上昇トレンドを形成する要因となっています。
今後も、企業の株主還元姿勢の強化や構造改革の進展に加え、海外投資家による日本市場再評価が続く可能性が高く、「日本株はどこまで上がるのか」という関心が一層高まると見られます。
今後の展望・注目イベント
NTTの今後の株価動向を考えるうえで、いくつかの注目すべきポイントがあります。通信業界は安定した収益構造を持つ一方で、技術革新や政策の影響を強く受けやすい業種でもあるため、投資家は以下のトピックに注目する必要があります。
■ 決算発表スケジュールと業績見通し
次回の決算発表(予定:2025年11月4日)は、株価変動の重要なイベントとなる可能性があります。特に、通信事業の収益安定性と海外事業の進展、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連サービスの成長率が注目されます。
また、NTTはコスト構造の見直しを進めており、営業利益率の改善が確認できれば、投資家心理にプラスに働くと考えられます。
■ 業界トレンド:5Gから6Gへの移行
通信インフラの次世代化はNTTの中核テーマです。2025年以降、本格的な6G開発と商用化準備が進むと予想されており、NTTドコモを中心に関連設備投資や技術開発が拡大します。
加えて、AI・IoT分野でのデータ通信量の増加が見込まれる中、クラウド・データセンター事業を通じた収益拡大にも期待が高まっています。
■ 政策・規制動向
通信料金の引き下げ圧力や政府のNTT株保有方針など、政策要因も株価を左右する重要なファクターです。政府が持株比率を引き下げる場合、需給面での一時的な調整が発生する可能性があります。
一方で、国内通信網の強化やデジタル田園都市構想といった政策支援は、長期的には成長を後押しする材料となります。
■ 株価が反応しやすいポイント
業績上振れ/下振れ発表時 – 通信安定収益に加え、新規事業の伸びが上方修正されれば株価上昇要因。
株主還元策(配当・自社株買い)の変更 – 近年NTTは株主還元を強化しており、追加の自社株買い発表はポジティブ材料。
M&A・事業提携動向 – 海外通信事業者やAI関連企業との提携報道は成長期待を高める可能性があります。
NTTは安定した通信基盤に加え、デジタル事業やAI技術への投資を拡大することで、従来の通信企業から「総合テクノロジー企業」への転換を目指しています。
株価の短期変動要因は限定的ですが、長期的には政策支援と技術革新を背景に、堅調な上昇トレンドを維持する可能性が高いと見られます。
よくある質問(FAQ)
Q1. NTTの現在の株価はどこで確認できますか?
NTTの株価は、東京証券取引所(東証プライム市場)に上場しており、証券コードは9432です。Yahoo!ファイナンス、日経電子版、または証券会社の取引アプリなどでリアルタイム株価を確認できます。
Q2. NTTの株価が動く主な要因は何ですか?
主に以下の3つが挙げられます:
決算内容(業績・配当):営業利益や配当方針の変化が株価に直結します。
通信料金・政策動向:政府による通信料金の引き下げ要請など、政策リスクに反応する場合があります。
技術投資・海外展開:6G、AI、データセンターなどの成長分野への投資が株価の押し上げ材料となることもあります。
Q3. NTTは配当金を出していますか?
はい。NTTは安定した配当政策を掲げており、毎年増配を続けています。2025年度は1株あたり約125円前後の配当が見込まれています(※実際の金額は決算発表時に確定)。また、自社株買いを積極的に行っており、株主還元姿勢が強い企業です。
Q4. NTT株は初心者でも買いやすいですか?
比較的リスクが低く、安定した銘柄のため、初心者にも人気があります。株価の変動が大きくないため、短期売買よりも長期保有や配当目的の投資に向いています。少額から始めたい場合は、「単元未満株(S株・ミニ株)」を利用するのもおすすめです。
Q5. 今後のNTT株の見通しは?
直近では横ばい圏での推移が続いていますが、6GやAI関連の成長戦略が実を結ぶことで、長期的には上昇トレンドに入る可能性があります。政策や金利環境の変化も影響するため、定期的に業績発表と市場動向をチェックすることが重要です。
結論
本記事では、NTTの現在の株価動向と、その背後にある要因を整理しました。
通信事業を基盤に安定した収益を維持しつつ、AIやクラウド分野への成長投資が進んでいる点は評価できます。現時点の株価水準はおおむね妥当と見られますが、長期的には緩やかな上昇余地も残されています。
投資を検討する際は、以下の点を確認することが重要です:
直近の決算での営業利益率や配当方針の変化
政府の持株比率や規制緩和の動向
6G・AIなど新分野への取り組み進展
NTTは短期的な値動きよりも、安定性と配当を重視した中長期投資向け銘柄として注目されます。
免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。