公開日: 2026-03-14
NTTドコモはなぜ上場廃止したかというと、主な理由は、親会社である日本電信電話(NTT)が同社を完全子会社化する方針を決定したためです。NTTは2020年にTOB(株式公開買付け)を実施し、ドコモ株を買い集めることで経営の一体化を進めました。
この買収によりNTTはドコモの全株式を取得し、同社は2020年12月に東京証券取引所で上場廃止となりました。上場廃止の背景には、5G投資やデジタル事業の拡大に向けてグループの意思決定を迅速化し、NTTグループ全体の戦略をより強化する狙いがあったとされています。
NTTドコモはなぜ上場廃止した:その背景

① NTTグループの経営統合と戦略強化
2020年、日本電信電話(NTT)は、持株比率が高いとはいえ上場子会社だったNTTドコモを完全子会社化(親子上場の解消)する方針を正式に発表しました。これはNTTグループ全体の経営判断を迅速化し、グループ全体で一体的に事業戦略を進めることが目的です。親子上場の状態では、上場企業としての株主対応や開示義務がグループ戦略の足かせになることもあり、これを解消したいという狙いがありました。この流れは、同じNTTグループ内で他の上場子会社でも続いている動きでもあります。
② 5Gなど大型投資の必要性
世界的な5G(第5世代移動通信システム)や次世代通信の競争が激しくなる中で、巨額の通信インフラ投資が求められています。NTTとNTTドコモはこれまで以上に5G普及や将来のネットワーク基盤整備に取り組む必要があり、グループ全体で投資を効率的に行うことが重視されました。上場企業のままでは株主への配慮から短期的な収益重視になりやすく、長期・大規模な投資判断がしにくいとの見方もありました。完全子会社化によって、こうした投資計画の柔軟性や機動性を高める意図があったと報じられています。
③ 政府の料金政策と収益環境の変化
完全子会社化の背景には、政府の携帯料金引き下げ圧力も絡んでいます。2020年頃、当時の政府が携帯料金の引き下げを強く求めたことにより、主要通信事業者は料金プランの大幅な見直しを余儀なくされました。この政策圧力は通信事業者の収益環境を変え、固定費が高い大手キャリアにとって利益率を圧迫する要因となりました。NTTドコモもその影響を受ける中、グループで効率的にコストや投資を再配分しながら料金競争に対応する必要がありました。
TOBの内容と規模
NTTによるTOBの実施
2020年9月29日、日本電信電話(NTT)は、上場子会社であるNTTドコモを完全子会社化するためにTOB(株式公開買付け)を実施すると発表しました。これはNTTドコモの株式のうち、NTTが既に保有する66%強以外の株式を市場から買い取るための公開買付けです。
買付価格:1株あたり3900円
NTTが提示した買付価格は 1株につき3900円 でした。これは当時の市場価格に対して 約40%前後のプレミアム(上乗せ価格) を付けた水準で、株主にとっては魅力的な内容でした。
この高い買付価格は、多くの個人株主や機関投資家が売却に応じる理由の一つとなり、TOB成立に寄与しました。
買収総額:約4.25兆〜4.3兆円規模
この公開買付けにより、NTTが一般株主から取得しようとした株式の総額は 約4兆2500億円〜4.3兆円 にのぼります。これは日本企業によるTOBとして過去最大級の規模でした。
資金調達方法
NTTはこの巨額の買付資金を、主要銀行からの借入を組み合わせて調達しました。三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行など国内大手銀行を中心とした融資枠を活用し、総額4.3兆円の資金を用意しています。
プレミアム価格と株主への影響
提示価格の3900円は、TOB発表前のドコモ株の終値と比較して約40%以上の上乗せ価格となっていました。これは一般的に公開買付けで株主を説得するために用いられる「プレミアム価格」で、TOB成立の大きな要因となりました。
過去最大級のTOB
M&A専門サイトなどでもNTTのドコモ買収は、国内における公開買付けとして「断トツで最大規模」と評されています。これは、買収金額が他の大型TOBを大きく上回ったことによる評価です。
上場廃止への流れ
このTOBが成立したことで、NTTはドコモ株の全株式を取得し、2020年12月にドコモ株は東京証券取引所から上場廃止となりました。つまり、TOBの完了がそのまま上場廃止の直接的なきっかけになっています。
上場廃止による株主への影響
1. 個人投資家への影響
TOB価格で株式を売却できた点が大きなポイントでした。
NTTドコモの完全子会社化にあたり、親会社である日本電信電話(NTT)は一般株主に対して株式の株式売渡請求を実施し、保有株式を現金で買い取る手続きを進めました。これにより、株主名簿に載っていた株主は後日会社から現金で買い取り代金を受け取ることができました。具体的には、2020年12月の上場廃止手続き後、2021年3月頃に支払いが行われています。
上場廃止後も市場で株が売買できるわけではなく、株主はあらかじめ決められた価格で現金化する手続きを取る必要がありました。
株式市場での売却ができないため、株主は自由に売買する選択肢を失います。
つまり多くの個人投資家にとっては、提示された買い取り価格で株式を手放し利益確定ができた一方で、上場株式としての売買機会がなくなったという影響があります。
2. 市場への影響
NTTドコモの上場廃止は、株式市場全体にも目に見える影響を与えました。
東証の大型銘柄が消滅
上場時代のNTTドコモは、東証プライム市場(旧市場第一部)の代表的な大型株の一つでした。NTTドコモが上場廃止になると、東証の市場から大きな時価総額株が消えることになり、指数構成銘柄や投資対象としての存在感がなくなりました。
これは特にインデックスファンドや年金基金など、一定の市場代表銘柄に投資する投資信託の構成に影響が出るケースもあります。
通信株の代表格が減少
通信業界を代表する企業としてドコモは長年存在感を持っていましたが、上場廃止で株式市場にはその存在感が残りません。これにより、投資家にとっての通信銘柄としてのドコモという選択肢が市場から消えることになりました。
また親子上場が解消されたことで、親会社であるNTT株への投資比重が高まる傾向が見られるなど、投資家ポートフォリオにも影響が出ています。
NTTドコモ上場廃止後の事業展開(詳細)
① NTTグループの完全子会社としての再編と戦略シフト
上場廃止後、ドコモはNTTグループ内で戦略的な位置づけの見直しと再編を進めています。 例えば、通信サービス部門とスマートライフ事業部門を統合した「コンシューマサービスカンパニー」の新設など、組織体制の改編が行われています。これは、単なる通信インフラ提供にとどまらず、顧客体験全体を高めるサービス提供のためです。
② スマートライフ事業の拡大
「スマートライフ事業」とは、携帯通信サービスに付随するさまざまな生活サービスを指し、上場廃止後の成長軸にもなっています。
生活価値の拡充と収益多角化
ドコモは スマートライフ分野での収益が増加しており、通信に依存しない収益構造の強化を目指しています。 具体的には以下のような取り組みが進んでいます:
金融サービス(決済・ポイント・資産運用など)での収益拡大
dポイント や dカード 会員数の増加やサービス連携強化
エンタメやコンテンツサービスとのセット提案
データ連携やマーケティングソリューションの提供
実際に、スマートライフ分野は収益の伸びを牽引しており、金融・エンタメ・マーケティングなど複数の事業が拡大しています。
③ 金融・ポイント事業への注力
通信事業以外の収益を強化するため、ドコモは金融分野への本格的な投資・拡大を進めています。
金融事業の積極展開
NTTドコモはネット銀行である住信SBIネット銀行の買収を実施(約4200億円規模)。今後はドコモブランドの銀行として、決済・貯蓄・投資・ローン・ポイント連携など幅広い金融サービスの提供を予定しています。
買収した銀行は今後「ドコモSMTBネット銀行」に社名変更する計画で、ポイントと金融を融合した顧客囲い込み戦略を強める狙いです。
これにより、通信契約者の顧客基盤を活かし、スマホ一つで日常の金融ニーズを賄える「金融エコシステム」の構築を進めています。
④ DX(デジタルトランスフォーメーション)・法人向けソリューションの強化
上場廃止後、ドコモは法人向け事業やDX支援にも注力しています。通信インフラを基盤に、企業向けのデジタル変革支援(DXソリューション)を提供する動きが活発です。
グループ内で「NTT DOCOMO BUSINESS(旧NTT Com Online)」などのDX支援機能が強化され、企業のデータ活用・業務効率化支援やクラウドサービス等の提供を進めています。
DX支援の戦略には、ネットワークとデータプラットフォームを統合し、企業の生産性向上を支えるサービス提供が含まれています。
これは単なる通信キャリアから企業のビジネスプロセス改善に関わるサービスプロバイダーへの進化とも言えます。
通信業界への影響(NTTドコモ上場廃止後の市場動向)
① 競争の激化
上場廃止と完全子会社化を経ても、日本の携帯通信市場では競争が一段と激しくなっています。 長年の安定した収益構造から、各社が料金やサービスで差別化を図る動きが強まっているのが特徴です。特に料金プランの見直しや値下げを巡る「攻防」が続いています。
大手3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)は、新料金プランの導入や容量増量で顧客の囲い込みを狙っています。
一方で、後発の楽天モバイルは、料金を据え置く戦略や設備投資を重ねてシェアを徐々に拡大しています。
この結果、従来の「通話・通信だけで差をつける時代」から、料金・データ容量・付加価値サービスで競う局面へ変わってきています。
② 新料金プランの登場
通信4社は、各社独自の料金体系やブランドを投入して、ユーザーの選択肢を広げる動きを見せています。
ドコモとKDDIは、主要ブランドだけでなくサブブランドでも料金・容量設定を変更し、コストパフォーマンスの高いプランを強化しています。
楽天モバイルは独自の料金体系を維持しつつ、他社と違った付加価値戦略で利用者を引きつけています。
このように料金プランが多様化することで、消費者は自分の使い方に合った最適な選択肢を選びやすくなり、各社も競争戦略を練り直す必要が出ています。
③ 主要競合企業の立ち位置
現在の日本の通信市場は主に以下の大手4社が競っています:
KDDI:auブランドを中核に、安定したネットワークと高い通信品質でファミリー層を中心に支持されています。
ソフトバンク:LINEMOなどのサブブランドも含め、料金面とブランド力で幅広い顧客層をカバー。
楽天モバイル:後発ながら独自料金の低価格戦略と経済圏連携で勢いを持ち、シェア拡大が続く成長株となっています。
NTTドコモ:市場シェアは依然として高く、完全子会社化後も業界の主導的立場にありますが、競争環境の変化に対応するため料金やサービスの見直しを進めています。
業界全体としては、資本関係の変化以上に 各社の戦略的価格競争や付加価値サービス競争が激しくなっている状況です。
よくある質問(FAQ)展開版
Q1. NTTドコモはいつ上場廃止になりましたか?
2020年12月29日に東京証券取引所で上場廃止となりました。
上場廃止の直接的なきっかけは、親会社である日本電信電話(NTT)が実施したTOB(株式公開買付け)による完全子会社化です。
この日をもって、NTTドコモの株式は市場で取引できなくなり、株主は事前に定められた手続きに沿って株式を現金化しました。
上場廃止後は、ドコモはNTTグループ内の戦略的な意思決定に完全に組み込まれています。
Q2. NTTドコモはなぜ上場廃止しましたか?
グループ経営の効率化と、5Gなど大型投資を進めるためです。
親子上場の状態では、ドコモ単体の株主対応や開示義務があり、グループ全体の意思決定がやや制約される面がありました。
5Gや次世代通信インフラの整備には巨額の投資が必要で、短期利益に左右されない迅速な意思決定が求められました。
完全子会社化により、NTTグループ全体で投資や戦略を柔軟かつ効率的に行うことが可能になったのです。
さらに、スマートライフ事業や金融・データサービスなど、通信以外の新規事業への注力もスムーズになりました。
Q3. NTTドコモの株はどうなりましたか?
TOBにより、株主は1株3900円で売却する形になりました。
NTTは公開買付けで、一般株主が保有する株式を全て取得しました。
提示価格の3900円は、当時の市場価格に対して約40%のプレミアムを上乗せした水準で、株主にとって魅力的な価格でした。
この結果、多くの株主は株式を売却し、利益を確定することができました。
上場廃止後は市場での売買ができなくなり、株主はもはや市場で株式を売買する選択肢を持たなくなった点も重要です。
まとめ:NTTドコモはなぜ上場廃止したかというと
NTTドコモが上場廃止になったのは、親会社の日本電信電話が完全子会社化を進め、グループ全体の経営を効率化・強化するためです。
背景には、5Gインフラ整備などの大規模投資や、政府による携帯料金引き下げ圧力などの通信政策の変化がありました。
これを受けて、NTTは株式公開買付(TOB)を実施し、日本企業史上最大級の規模でドコモ株を取得。その結果、ドコモは2020年12月に東京証券取引所から上場廃止となりました。
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