楽天株を買うべきか?最新業績と将来性から徹底分析
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楽天株を買うべきか?最新業績と将来性から徹底分析

著者: 高橋健司

公開日: 2025-12-03

楽天株を買うべきかについて一言でまとめると、「長期では改善に期待できる一方、短期では値動きが荒く慎重な判断が必要」という状況です。楽天はECや金融事業が安定して黒字を生み出しており、グループの基盤として大きな強みがあります。


また、長年課題だったモバイル事業の赤字も少しずつ縮小してきており、将来的な収益化への期待も高まっています。ただし、有利子負債の大きさは依然としてリスクであり、金利環境によって財務負担が重くなる可能性があります。こうした点を踏まえると、楽天株は長期成長を見据える投資家には魅力がありますが、短期的な価格変動を避けたい投資家には向きにくい銘柄と言えます。


楽天グループの現状とビジネスモデル

楽天グループは、EC事業・金融事業・モバイル事業の3つを柱として事業を展開しており、それぞれが異なる収益構造を持ちながら、「楽天経済圏」と呼ばれる相互連携によって顧客を囲い込む仕組みを形成しています。まず、EC事業は「楽天市場」を中心としたモール型ビジネスが強みで、店舗からの手数料や広告収入が安定した収益源になっています。また、物流サービスや旅行、電子書籍など周辺サービスも充実しており、国内のEC市場で確固たる地位を維持しています。


金融事業は、楽天カード・楽天銀行・楽天証券を中心とする高収益部門で、カード利用額やローン、銀行の預貸ビジネス、証券手数料などが収益の柱となっています。とくに楽天カードは国内トップクラスのシェアを持ち、利用者増加がグループの収益を大きく押し上げています。金融事業は景気変動の影響を比較的受けにくく、楽天の「稼ぎ頭」として安定性の高い部門です。


一方でモバイル事業は、基地局の整備など巨額の設備投資が続いたことから長年赤字が続いてきましたが、最近では投資負担が減少し赤字縮小が進んでいます。契約者数の増加とコスト削減が進めば、将来的に黒字転換できる可能性も高まっています。ただし、現時点ではグループ全体の財務負担を大きくしている要因でもあります。


こうした3つの事業の組み合わせによって、楽天は「ECと金融で安定収益を確保し、モバイルで将来の成長を狙う」という構造を取っています。グループ全体の強みとしては、楽天ポイントを中心とした強力な顧客ロイヤルティ、サービス間の送客によるシナジー、そして複数事業を持つことで収益源を分散できる点が挙げられます。一方で、モバイル事業による負債の増加や競争環境の厳しさは大きな課題となっており、財務面でのリスク管理が今後の重要なポイントとなります。


最新業績と株価動向

楽天の直近の株価

1.最新業績とモバイル事業の状況

2025年11月に発表された2025年第3四半期(7–9月期)決算では、楽天の連結売上収益は前年同期比+10.9%の6.286億円となり、第3四半期として過去最高を記録しました。


この四半期のNon-GAAP営業利益では黒字を確保し、EBITDA(キャッシュ創出力を評価する指標)も過去最高を更新。さらに、この四半期累計ベースで IFRS営業利益が6年ぶりに黒字化しました。


ただし、純損益ベースでは 269億円の赤字。前年同期の赤字 744億円から大幅に改善したものの、完全な黒字回復には至っていません。


モバイルセグメント(楽天モバイル含む)は売上収益で成長を続けています。2025年Q3ではモバイル部門の売上が前年比で伸び、楽天モバイル単体の回線数は増加、ARPU(利用者あたり単価)の改善も報告されています。


営業損失は縮小傾向。Q3ではモバイル事業のセグメント損失が前年同期より改善しています。


過去数四半期をみると、モバイル事業を含む全セグメントで増収を達成し、キャッシュフロー創出力(EBITDA)の改善により、資金繰りの見通しも改善されつつあります。


まとめると、楽天は「インターネットサービス/フィンテック/モバイル」のすべてで伸びを取り戻しつつあり、特にモバイル事業の収益構造改善が進み、グループ全体の業績改善につながっている局面です。


2.過去の損失とモバイル事業の重荷

ただし、モバイル事業はこれまで楽天の大きな足かせでした。2024年時点では、モバイル事業の巨額な基地局整備費用などが収益を圧迫。第1四半期(2024年1–3月期)は、モバイル部門の損失が約719億円にも上った、という報告があります。


そのため、たとえ金融事業が黒字でも、モバイルが重くのしかかり、楽天全体としては赤字が続いていた時期が長く続きました。


つまり、楽天の過去数年は「収益の柱=金融・EC、重荷=モバイル」という構造がそのまま株価の重しになっていた、と言えます。


3.株価の反応と市場の見方

直近では、2025年初頭の決算発表で「再び赤字拡大」となった四半期(2025年1–3月期)を受けて、株価は一時、前日比で約10%下落するなど大きく売られました。これは、モバイル事業の改善が追いついていないという警戒感によるものです。


一方、2025年第2四半期〜第3四半期にかけては、モバイル事業の改善およびグループ全体の収益改善を受け、業績への期待が高まっています。特にEBITDAや営業利益の改善はキャッシュ生成力の回復を示すもので、中長期の収益構造転換への期待が高まっています。


市場からは、「モバイルの赤字がいかに縮小し、黒字化に向かうか」が、株価の今後を左右する重要なファクターとしてみられているようです。


楽天株のメリットとリスク

楽天の本社

1.楽天株を買うメリット(買う理由)

楽天株の最大の強みは、ECと金融という高収益事業をグループとして持つ点です。楽天市場は長年にわたり国内EC市場で強固な顧客基盤を築いており、出店数や流通総額、広告収益などで安定した収入を生み出しています。また、金融部門の楽天カード・楽天銀行・楽天証券は国内トップクラスのシェアを持ち、安定した利益を継続的に創出しています。特に楽天カードは会員数が年々増加し、カード利用額も拡大しており、楽天のキャッシュフローを支える中心的存在です。


さらに、長年赤字が続いていたモバイル事業についても、近年は設備投資のピークを越えて赤字幅が縮小しており、将来的な黒字化への期待が高まっています。モバイルが黒字転換すれば、楽天の事業構造は大きく改善し、株価の評価も再び見直される可能性があります。


また、楽天は「ポイント」を軸にした独自の経済圏を構築しており、複数サービスを利用するほどポイントが貯まりやすくなる仕組みによって、ユーザーのロイヤルティを高めています。この経済圏の強さは他社には真似しにくい優位性で、ブランド力の向上と顧客維持につながっています。さらに、過去の株価下落によって評価が割安になっている局面では、長期投資の観点で「安く買えるチャンス」と捉える投資家も多くいます。


2.楽天株のリスク(買わない理由)

一方で、楽天株には看過できないリスクも存在します。最大の課題はやはりモバイル事業の赤字と巨額投資負担です。基地局整備や通信インフラへの投資は多額であり、赤字が続けばグループ全体の財務を圧迫します。また、楽天は有利子負債が高水準で、今後金利が上昇した場合、資金調達コストが増加し財務負担がさらに重くなる可能性があります。


競争環境も厳しく、ECではAmazon、決済・ポイント分野ではPayPay、モバイルではNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクなど大手との激しい競争が続いています。さらに、経営トップの三木谷氏の影響力が強いことから、「経営判断が集中しすぎている」というガバナンス面でのリスクを指摘する声もあります。


株価についてもボラティリティが大きく、業績やニュースに反応して急騰・急落しやすいため、短期売買には向きにくい側面があります。特にモバイル事業に関するニュースは株価に大きな影響を与えやすく、投資家は慎重な判断が求められます。


今後の成長要因・注目ポイント

楽天グループが今後どのように成長していくのかを判断する上では、モバイル事業の採算改善、楽天経済圏の深化、金融事業の拡大、そして新規分野への挑戦という4つのポイントが重要になります。以下、それぞれの項目を詳しく説明します。


1. モバイル基地局投資の減少と赤字縮小

楽天モバイルは、これまで巨額の基地局投資により大幅な赤字を抱えてきました。しかし、基地局整備が進んだことで設備投資はピークを過ぎ、固定費の大部分が減少し始めています。これにより、モバイル事業の赤字幅は過去数四半期で明らかに縮小しており、採算改善が確実に進んでいます。


また、契約者数の増加やARPU(顧客あたり収益)の上昇も収益改善に寄与しています。楽天は独自の仮想化ネットワーク技術(Open RAN)を活用し、従来より低コストな運営を実現しようとしているため、黒字転換に成功した場合は他社よりも高い収益性を確保できる可能性があります。


2. 楽天経済圏の顧客単価向上

楽天の強みは、EC・金融・モバイル・旅行など多様なサービスが相互に連携する「楽天経済圏」にあります。楽天ポイントが軸となり、ユーザーが複数のサービスを使うほどポイント還元率が上がる仕組みが、顧客の囲い込みに大きく貢献しています。


今後はモバイル加入者が増えることで、より多くのユーザーが楽天経済圏に取り込まれ、顧客あたりの年間利用額(LTV)の上昇が期待できます。例えば、

  • 楽天モバイル加入 → 楽天カード使用増

  • 楽天市場での買い物 → さらにポイント増加 → 楽天証券・楽天銀行の利用へ拡大

といったシナリオが現実的で、楽天全体の収益力を底上げする循環を生み出す可能性があります。


3. 金融事業の強化(楽天銀行・楽天証券・楽天カード)

楽天の金融事業は現在もっとも収益性が高く、安定した黒字を生むグループの主柱です。特に以下の3部門は今後も成長余地が大きいとされています。


  • 楽天カード

    国内トップクラスの発行枚数を誇り、利用総額も毎年増加しています。


    カード利用額が増えれば手数料収益も増えるため、事業の伸びがグループ全体のキャッシュ創出に直結します。


  • 楽天銀行

    ネット銀行として口座数が順調に伸びており、振込・ローン・預貸ビジネスで安定した利益を生んでいます。


    さらに、株式上場によって調達力も強化されました。


  • 楽天証券

    若い世代の新規口座が増え、インデックス投資の需要を取り込みながら拡大しています。


    楽天カードや楽天銀行との連携により、資金・取引・ポイントの循環が強化されています。


これらの金融3事業は、楽天の未来の利益を支える最重要領域と言えます。


4. 新規事業の展開(AI・物流・海外戦略など)

楽天は既存事業に加えて、今後の成長ドライバーとなる新領域にも積極的に投資しています。


  • AI・データ活用

    楽天はEC・金融・通信など膨大な顧客データを保有しているため、AI分析やパーソナライズの活用余地が非常に大きい領域です。


    購買行動の最適化、広告精度の向上、不正検知の強化など、AIは幅広い用途で収益改善に貢献する可能性があります。


  • 物流インフラの拡大

    ECでは物流の効率性が競争力を大きく左右します。


    楽天は自社物流「Rakuten Logistics」を強化しており、配送のスピード向上・コスト削減・出店者の負担軽減につながると見られています。


  • 海外展開

    楽天は決済や通信分野で海外企業と提携し、技術提供(特にモバイル技術)やプラットフォーム展開を進めています。


    特に仮想化モバイルネットワーク(Open RAN)は海外での採用が期待されており、新たな収益源となる可能性があります。


楽天株は誰に向いているか?

楽天株は、投資スタイルやリスク許容度によって適性が大きく変わる銘柄です。まず、長期投資家にとっては、有望な回復テーマ株として魅力があります。現在、楽天グループはモバイル事業の赤字縮小が進み、財務改善に向けた取り組みも続いているため、数年単位での業績回復を期待する投資家には適した銘柄と言えます。将来的にモバイル事業が黒字化すれば、株価の大きな上昇余地がある点も長期保有の魅力です。


一方、短期投資家にとっては、注意すべきボラティリティ(価格変動の大きさ)が課題になります。楽天株は、決算発表や資金調達のニュースなどで株価が急上下することが多く、短期トレードではリスク管理が欠かせません。特に、モバイル事業に関する報道は株価に大きな影響を与えやすく、短期で安定的に利益を狙うには難しい局面もあります。


安定株(ディフェンシブ銘柄)を求める投資家には、楽天株はあまり向いていません。財務負担が依然として重く、事業構造も急成長と投資を伴う部門を多く抱えているため、値動きは比較的荒い傾向があります。安定した株価推移や高い配当利回りを期待する投資家にとっては、より安定色の強い銘柄を選ぶ方が適しています。


総合すると、楽天株は「短期の値動きは荒いが、将来の改善余地が大きい」という特徴を持っており、リスクを理解した上で長期成長を狙う投資家に向いていると言えるでしょう。


結論:楽天株を買うべきかどうか

楽天株を買うべきかどうかは、メリットとデメリットをどう評価するかで判断が分かれます。メリットとしては、楽天経済圏の強さや金融事業の安定収益、そしてモバイル事業の赤字縮小による将来の改善期待が挙げられます。一方、巨額の負債や依然として続くモバイル投資の負担など、財務面のリスクも無視できません。


投資判断の指標を見ると、PERやPBRは市場平均より割安水準で推移することが多く、市場が財務リスクを織り込んでいる状態とも言えます。また、自己資本比率や負債比率など財務データを確認し、改善傾向にあるかどうかを見ることが重要です。


楽天株に投資する場合は、必ず分散投資を心がけ、1銘柄に偏りすぎないよう注意する必要があります。特に、モバイル事業の動向次第で株価が大きく動くため、リスク管理が欠かせません。総合すると、リスクを理解しつつ将来の回復に期待して長期保有を考える投資家に向いた銘柄と言えるでしょう。


よくある質問(FAQ)

1. 楽天株は今買い時?

楽天株を買うべきかどうかは、モバイル事業の赤字縮小ペースや財務改善の進み具合によって判断が分かれます。株価はリスク要因を織り込みやすいため、決算内容や資金調達ニュースで変動しやすい点には注意が必要です。長期的には改善余地がありますが、短期ではボラティリティが高いため、投資タイミングより「リスク許容度」を優先して判断することが大切です。


2. モバイル事業はいつ黒字化する?

モバイル事業は基地局投資の負担がようやく落ち着きつつあり、赤字幅も縮小しています。ただし、黒字化のタイミングは「契約者数の増加」と「通信ネットワークの運用コスト削減」がどれほど進むかによって大きく左右されます。市場予測では中期的な黒字化の可能性が示される一方で、競争が激しいため、確実な時期を断言するのは難しい状況です。


3. 楽天株は高配当か?

楽天株は高配当銘柄とは言えません。現在はモバイル事業への投資と財務改善が優先されており、配当額は控えめな水準です。そのため、配当目的では魅力は限定的で、成長回復を重視する投資家向けの銘柄といえます。今後業績が安定すれば増配の可能性もありますが、当面は期待しすぎない方が良いでしょう。


4. 長期保有でリターンは期待できる?

長期保有でのリターンは「モバイル事業の黒字化」「財務改善」「金融・ECの安定成長」が実現できるかどうかにかかっています。これらが順調に進めば株価の大幅な回復が期待でき、長期投資としての魅力は高まります。一方、モバイル事業の不確実性が残るため、長期保有する場合はリスク分散を徹底し、業績の進捗を定期的に確認することが重要です。


免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。