日銀のETF売却の始末:投資家へのシグナル
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日銀のETF売却の始末:投資家へのシグナル

著者: 高橋健司

公開日: 2026-02-23

2026年1月、日本銀行(BOJ)は長年にわたって膨らんだ金融緩和策の一環として保有してきたETF(上場投資信託)の市場売却を実際にスタートさせました。営業毎旬報告によれば、1月末時点で約53〜54億円分の売却が確認されており、これが初の実売却となったことが公表されています。


日銀のETF買い入れは2010年から始まり、量的緩和と企業景況感の下支えを目的に累計で37兆円超の巨額に達していましたが、2025年9月に正式に売却方針が決定され、金融緩和の正常化へ向けた一歩として長期的な処分計画が提示されていました。日銀のETF売却ペースは市場への影響を抑えるため段階的になっており、完全に処分するには数十年〜100年以上かかるとの見方もあります。


この売却開始は、日銀が長期間続けてきた大規模緩和政策の「後片付け」に踏み出した象徴的な出来事と受け止められており、金融政策の正常化というシグナルがリスク資産への投資判断にも影響を与えつつあります。今後の市場動向や投資家心理の変化が注目される局面です。


日銀のETF売却方針:何が決まったのか?

日本銀行の写真

1. 実際の売却プラン

2025年9月の金融政策決定会合で、日銀は保有するETF(上場投資信託)とJ-REIT(不動産投資信託)について段階的に市場へ売却する方針を正式に決定しました。具体的には、ETFについては簿価で年約3.300億円(時価ベースではおおむねその倍前後)の規模で売却していく計画が示されています。この水準は過去に銀行株式を処分したケースと同程度で、市場への悪影響を極力抑える設計となっています。売却は市場の需給や価格動向に配慮しながら実施し、大規模な一括処分ではなく、長期間にわたって小分けに進める戦略だとしています。こうしたペースで処分を続けた場合、全ての保有分を売却完了するまでには100年以上かかる可能性もあるとの見方が出ています。


さらに、2026年1月にはこの方針に基づき、ETFの実際の売却が開始され、1月末時点で約54億円分が既に市場で売却されたことが公表されています。売却指針自体は1月19日付で適用が始まり、信託銀行を通じた段階的な売却が実務レベルでスタートしています。


2. 売却開始と規模感

2026年1月、日本銀行は長年積み上げてきたETF(上場投資信託)の売却をいよいよ実際に開始した。発表によれば、1月末までの売却額は約54億円程度に達しており、これは日銀が市場で保有ETFの処分を始めた初めての実績として確認されています。日銀は同時にCP(コマーシャル・ペーパー)の残高をゼロにするなど、これまでの異例緩和措置の縮小を進めています。


売却の長期計画については、2025年9月の金融政策決定会合で示された方針どおり、極めてゆっくりとしたペースで進められる見込みです。具体的には、保有ETFの処分を年間簿価ベース約3.300億円、時価ベースでは約6.200億円の規模で行う計画で、これを維持すると完全処分までに100年以上かかるとの計算も市場で取り沙汰されています。この長期計画は市場への影響を抑える狙いもあり、「100年計画」と表現されることがあります。


売却ペース自体は日本株市場全体の売買代金に対して非常に小さく、市場価格に与える直接的なショックは限定的だという評価も出ていますが、日銀が実際に売却フェーズに入ったという事実そのものが、金融政策の正常化を象徴するシグナルとして投資家の注目を集めています。


マーケットの反応と価格動向

1. 株式市場の短期反応

2025年9月の金融政策決定会合で日銀がETF(上場投資信託)の売却方針を正式に打ち出した直後、東京株式市場は一時的に大きく動揺しました。報道によると、同日の日経平均株価は一時1.8%超下落し、 ファーストリテイリングなど主要銘柄が大幅安を記録する場面もありました。この反応は、日銀によるETF売却が「今後の需給面での不確実性」を意識させたことが背景と見られています。


ただし、その後の相場では売却発表によるショックは徐々に落ち着き、株価は市場の需給や企業収益、海外勢の買い動向など他のファンダメンタルズ要因に左右される展開となっています。このため、ETF売却そのものが継続的な下落圧力となるとの見方は一部にとどまり、市場関係者の間では売却規模は限定的であり、需給への影響も大きくないとの声も出ています。


2. 投資家心理への影響

日銀のETF(上場投資信託)売却方針の発表は、単なる需給面の変化にとどまらず、投資家心理にも重要なシグナルとして受け止められています。2025年9月の日銀の売却方針決定直後、市場では日経平均が急反落した一方で、売却のペースや手法が明確にされたことで短期的な不確実性が後退し、相場が安定化したとの声も出ています。この反応は、市場参加者が日銀の動きを「正常化プロセスの一部」として捉え直しつつあることを示しています。


投資家の間では、日銀が長年続けてきた大規模な資産買い入れ政策(金融緩和)がいよいよ後退段階に入ったとの認識が広がっており、これは金融緩和の縮小=正常化への明確なシグナルとして心理的に受け止められています。こうした認識は、特にリスク資産への投資姿勢に影響を与えやすい。日銀の買い支えが「常に存在する前提」が少しずつ薄れると、投資家は需給面だけでなく、今後の政策方向性をより慎重に評価するようになります。


一方で、売却規模が限定的かつ長期的である点が強調されているため、「すぐに相場が大きく下振れするリスクは低い」とする見方も市場には存在します。これもまた、過度な悲観論を抑える要因となっており、ETF売却そのものを単純なネガティブ・ショックと捉えるのではなく、慎重に消化しようとする心理が進みつつあります。


投資家へのシグナル:金融政策の正常化と資産選好の変化

1. 金融政策の正常化

日銀のETF(上場投資信託)売却は、単に資産の処分というだけでなく、日銀が長年続けてきた異例の金融緩和政策から脱却しようとする「金融政策正常化」のプロセスに入ったことを象徴する大きなシグナルとなっています。2025年9月の金融政策決定会合でETF売却方針の決定が全会一致で承認された背景には、長引く緩和が金融市場や資産価格に与えた影響を再評価し、政策の重心を「通常の金融政策運営」へと移していく意図があると見られています。


これまで日銀は2010年代以降、デフレ脱却と景気支援を理由に大規模なETF買い入れを続けてきましたが、その影響で株式需給は中央銀行頼みの側面を強め、市場機能の歪みが指摘される声も出ていました。こうした環境からの転換としてETF売却が打ち出されたこと自体が、「緩和の終焉」や「正常化への歩み」を示す象徴的な動きとして受け止められています。


金融政策正常化の進展は、リスク資産の魅力を相対的に低下させる可能性がある点でも投資家にとって重要な意味を持ちます。長期にわたる大規模緩和は低金利環境を維持し、株式や不動産が相対的に有利な投資対象となる環境を作り出してきました。しかし政策の正常化が進むと、金利が上昇基調となる可能性や、中央銀行の市場支援期待が後退するリスクが意識されやすくなります。その結果、株式や高リスク商品への投資姿勢を慎重に見直す必要が出てくると分析されています。


さらに、日銀は金利政策でも段階的な引き締めを視野に入れた議論を行っており、正常化の文脈はETF売却だけにとどまらない方向へと広がっているとの見方もあります。こうした流れは、従来の「中央銀行が常に支える」という前提が変わりつつあることを示唆し、投資家のポートフォリオ戦略にも影響を与えはじめています。


2. リスク・リターンの再評価サイン

日銀によるETF売却は、単なる需給面での変化にとどまらず、投資家がリスク資産と安全資産のバランスを改めて見直すきっかけとしても作用しつつあります。日銀が長期的な金融緩和策から出口へ向かう姿勢を示したことで、これまで中央銀行の買い支え期待が強かった株式市場では新たなリスク評価が進んでいます。特に、ETF売却開始や正常化への進展が明確になる中で、投資家は需給構造だけでなく、政策方向性が将来の利益にどのように影響するかを慎重に分析するようになっています。この動きは、株式中心のリスク資産から、より分散されたポートフォリオへの転換を促すシグナルとして機能していると指摘されます。


加えて、金利環境そのものが変化しつつあることも、リスク・リターンの再評価を後押ししている。日本国内では、利回りの上昇傾向が続き、それを背景に債券や現金、さらには金などの安全資産への投資ニーズが再び意識されているとの分析もあります。特に、長期金利の上昇がポートフォリオ全体の利回り構造に影響を与える局面では、株式一本足の戦略だけでなく、債券や他の資産クラスを組み合わせた分散戦略が注目されるようになっています。


実際、プロの運用機関の間でも株式だけに偏ることへの警戒感がみられ、リスク資産への配分を見直す動きや、より安全資産を組み込みたいという意見が一定程度見受けられます。こうした動きは、ETF売却に伴う需給面の変化以上に、投資家がリスクとリターンのバランスを改めて検討し、自身のポートフォリオ戦略を再構築する契機となっているといえます。


売却が意味する長期マクロのメッセージ

1. 金利と為替にどのような影響を与えているか

日銀がETF(上場投資信託)売却という「出口戦略」を実行に移し、金融緩和の正常化を進める姿勢を明確にしていることは、国債利回りや為替市場に影響を及ぼしつつあります。この正常化の流れの中で、金利面では日銀が保有する国債の買入れ規模縮小と同時に、国債市場の需給が変化していることが確認されています。具体的には、日銀による国債購入額は過去の水準から大幅に縮小され、2027年度までには年間購入額が30兆円台前半まで減少する計画となっています。この結果、日銀の国債保有割合が低下し、長期金利(10年物国債利回り)の引き上げ圧力が強まる可能性があると見られています。これらの金利上昇シグナルは、海外投資家も注目する金融政策正常化の動きとして受け止められています。


為替市場に目を移すと、円相場は日米の金利差や金融政策の方向性によって影響を受けやすい状況が続いています。日銀が利上げ観測や緩和縮小を背景に政策金利の水準を引き上げて以降、市場では円高圧力が高まるとの見方も一部で出ていますが、実際には米国の利上げ・金融政策との相対比較や外部要因(たとえば米ドルの方向性など)によって円は一進一退の動きをしています。最近ではドル高の動きが強まっている局面もあり、円は1ドル=155円台前後での推移となる場面も見られるなど、単純に円高に進んでいるとは言い切れない複雑な状態となっています。


ただし、金融政策の正常化という文脈では、日銀の出口戦略は円の需給や資本フローにも影響を与える可能性があるとの見方が広がっています。日銀がETF売却や国債買入れの縮小という形で市場との関わり方を変えていく中で、日本の金利・為替市場はこれまでの「超低金利・大規模緩和」という前提から徐々に変容しつつあり、投資家はこれらの構造変化を慎重に見極める必要があります。


2. 日本株とグローバル資産配分

日銀のETF売却や金融政策の正常化が進む中で、日本株とグローバルな資産配分に関する評価も変化してきています。これまで日銀の大規模な株式買い支えが相場を下支えしてきたため、日本株は内外の投資家から手厚い支援を受けてきましたが、この「中央銀行頼み」の構造が変わりつつあるとの見方が強まっています。日銀がETF売却を実際に開始し、金利引き上げも進んでいることから、株式市場全体の需給バランスが徐々に通常のマーケット原理へと戻りつつあるとの指摘があります。


このような政策転換は、日本企業のファンダメンタルズ自体を見直す投資機会を提供する一方で、中央銀行の支援環境が薄れることによる不確実性もマーケットに投げかけています。実際に日銀の取組を巡る報道では、ETF売却が長期的な正常化プロセスの象徴であり、市場の自己調整能力を高める契機になり得るとの声もあります。


一方で、グローバル資金の動きにも注目が集まっている。日本株への資金流入は続いているものの、米国株や欧州株への投資が引き続き人気を集める動きも見られ、地域分散を意識した資産配分へのシフトが進みつつあるとのデータも出ています。たとえば、2026年1月の国内投信市場では米国株ファンドへの資金流入が高水準を記録し、欧州株型ファンドへの資金流入も続いており、国内投資家の資産配分戦略が多様化する兆しがあります。


これらの環境変化は、日本株が「日銀支え依存」から脱却しつつあることの表れともいえ、外国人投資家の資金フローやポートフォリオ戦略にも再評価が求められています。ETF売却による需給変化だけでなく、金利や為替の動き、世界的なリスク資産への需給も含めた総合的な投資判断が重要になっているという見方が広がっています。


投資家が押さえるべき注意点と戦略

金融政策

1. 市場ボラティリティの増加への備え

日銀がETF(上場投資信託)の売却を進める中、金融市場では政策変化に伴う不確実性がボラティリティ(価格変動性)を高める可能性が意識されています。日銀による出口戦略は段階的な売却を基本としているものの、消化期間が極めて長期に及ぶ計画であることや、株式・債券・為替市場全体におけるリスク要因が複雑に絡み合っているため、短期的な値動きの振れ幅が拡大する局面があるとの見方が市場で広がっています。たとえば、政治イベントや他国の中央銀行政策、グローバルな経済指標の変化が同時に起こると、市場参加者のリスク回避姿勢が強まりやすく、株式や為替で急な反応が出る可能性が指摘されています。


このような環境下では、ボラティリティへの備えとして投資家がリスク管理を徹底することの重要性が増しています。伝統的なリスク管理の原則としては、ポートフォリオを複数の資産クラスに分散することで、ある資産クラスが予想外の下落をした際でも他の資産が下支えするような構造を作ることが挙げられます。また、投資比率の定期的な見直しや、損失が一定水準に達した場合に自動的にポジションを縮小するストップロスなどの手法を設定することで、急激な市場変動に備えることができる。これらのリスク管理手法は、ボラティリティが高まる局面で損失拡大を抑え、資産全体の安全性を高める上で有効とされます。


まとめると、日銀のETF売却を含む金融政策正常化の局面は、マーケット全体のボラティリティを高める可能性があり、それに備える上で分散投資や厳格なリスク管理が投資家にとってますます重要になっているといえます。


2. 売却のペースと市場吸収力

日銀がETF(上場投資信託)の売却を始めた際、注目されたのがその売却ペースと市場の吸収力(需給がどれだけ売却を受け止められるか)です。2025年9月に示された方針では、日銀は年間で簿価ベース約3.300億円(時価ベース約6.200億円)というごく小さな規模で売却を行う計画を明示しています。この年間売却額は東京株式市場の売買代金全体と比較しても約0.05%とごく微小であり、極端な需給ショックを避ける設計となっています。売却全体をこなすには100年以上という長期にわたる計画になる見込みです。


計画された売却ペースは、市場吸収力を意識した極めて緩やかなものです。日銀自身も「売却額は市場状況を踏まえて柔軟に調整・停止できる」と明記しており、株式市場の薄い局面や急激な値動きが出た場合には売却額を抑える・一時停止する余地を残しています。こうした仕組みは、市場への影響を最小限に抑えるための安全装置として機能します。


実際、日銀が2026年1月に売却を開始した後でも、売却額は数十億円程度にとどまっており、主力株を大きく動かすような圧力にはなっていないという評価があります。市場関係者の間では、「日銀が想定しているペースならば、取引高や個人・機関投資家の売買需要が十分に売却を吸収できる」との見方が優勢です。


このように日銀の売却戦略は、短期的なインパクトを抑えつつ、市場の吸収力を試すゆっくりとしたペースで進められるよう設計されています。したがって、売却そのものが急激な株価下落につながる可能性は限定的であるとの見方が多いですが、投資家は市場流動性や日々の取引高などを注視しながら、需給バランスの変化を慎重に評価する必要があります。


よくある質問(FAQ)

Q1.日銀のETF売却はすぐ株価下落につながりますか?

いいえ、直ちに大幅下落につながる可能性は低いと考えられています。日本銀行は年間数千億円規模という非常に緩やかなペースで売却する方針を示しており、市場全体の取引規模と比べると影響は限定的です。短期よりも長期の需給構造変化として捉えるのが一般的です。


Q2.なぜ日銀はETFを売却するのですか?

主な理由は金融政策の正常化です。長年続いた大規模緩和の副作用として市場機能のゆがみが指摘されており、中央銀行が株式市場に大量に関与している状態を徐々に解消する狙いがあります。


Q3.売却完了までどのくらいかかりますか?

現在の想定ペースが維持されれば、完全処分まで数十年〜100年以上かかる可能性があると見られています。これは市場への衝撃を避けるため、意図的に非常に遅い速度に設定されているためです。


Q4.投資家は何に注目すべきですか?

短期の売却額よりも次の3点が重要です。

  • 売却ペースの変更有無

  • 金利政策の方向性

  • 海外資金の流入出動向


これらは株式市場の中期トレンドに影響しやすい要素です。


Q5.個人投資家はポートフォリオを変更すべきですか?

必ずしも即変更する必要はありません。ただし、金融政策正常化局面では市場変動が増えやすいため、分散投資やリスク管理の見直しを行う良いタイミングとされています。


まとめ:日銀のETF売却は投資家への重要なシグナル

日本銀行によるETF売却は、長年続いた大規模金融緩和からの転換、すなわち政策正常化を象徴する動きであり、市場ではリスク資産への姿勢を見直すきっかけとして受け止められています。ただし、売却規模は非常に小さく長期的に進められるため、この措置だけで株式市場が急落する可能性は低いとみられています。重要なのは、短期の価格変動よりも、中央銀行が市場との関係を徐々に変えていくという構造的変化のシグナルとして理解することです。


免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。