公開日: 2026-02-01
SORとは(Smart Order Routing)、投資家が出した注文を、複数の取引所やPTSの中から最も有利な条件で自動的に執行する仕組みです。日本語では一般的にスマート・オーダー・ルーティングと呼ばれています。
一言でいうと、「最良の価格と流動性を探して、注文を最適な市場へ振り分ける仕組み」です。投資家自身が取引所を選ばなくても、システムが価格・数量・約定スピードなどを比較し、最良執行を目指します。
主に、日本株や米国株の株式取引で利用されており、個人投資家から機関投資家まで幅広く使われているのが特徴です。特に、約定価格やコストを重視する投資家や、短期売買・大口取引を行う場面で重要な役割を果たします。
SORの仕組みをわかりやすく解説

SOR(スマート・オーダー・ルーティング)は、投資家が注文を出した瞬間から約定するまでの一連の流れを自動で最適化する仕組みです。ここでは、実際に何が起きているのかを順番に説明します。
1.注文が出てから約定するまでの流れ
まず投資家が証券会社の取引画面から「買い」または「売り」の注文を出します。すると、その注文は直接1つの取引所に送られるのではなく、SORシステムに渡されます。
SORはその時点で、各市場の価格や出来高、板の厚み、約定スピードなどを瞬時にチェックし、最も条件が良い市場に注文を振り分けます。場合によっては、1つの注文を複数に分けて、異なる市場で同時に約定させることもあります。
2.複数の取引所・PTSを比較する仕組み
SORが比較する対象には、東京証券取引所(東証)だけでなく、複数のPTS(私設取引システム)が含まれます。
それぞれの市場では、同じ銘柄でも「わずかな価格差」や「約定しやすさ」に違いがあります。SORはこれらをリアルタイムで比較し、より有利な価格で、かつ確実に約定できる市場を自動的に選択します。
この仕組みにより、投資家は自分で市場を切り替える必要がなくなります。
3.「最良執行(Best Execution)」との関係
SORとは、証券会社に求められる「最良執行義務」を実現するための重要な手段でもあります。最良執行とは、価格・コスト・スピード・約定確実性などを総合的に判断し、顧客にとって最も有利な条件で注文を執行することを指します。
SORはこれらの条件をシステムで自動判断することで、投資家が意識しなくても最良執行を目指した取引が行われるよう設計されているのです。
なぜSORが使われるのか
SOR(スマート・オーダー・ルーティング)が広く使われるようになった背景には、株式市場の構造変化と投資家ニーズの高度化があります。ここでは主な理由を3つに分けて解説します。
1.株式市場の分散化(取引所・PTSの増加)
以前は、株式の売買は特定の取引所に集中していました。しかし現在では、取引所に加えて複数のPTS(私設取引システム)が存在し、同じ銘柄でも取引される場所が分散しています。
この結果、どの市場に注文を出すかによって、価格や約定しやすさが微妙に異なる状況が生まれました。SORは、こうした分散した市場を横断的に比較し、最も有利な市場を自動で選ぶ役割を果たしています。
2.投資家にとっての価格改善効果
SORを使う最大のメリットの一つが、価格改善(プライス・インプルーブメント)です。
例えば、東証よりもわずかに有利な価格がPTSに存在する場合、SORはその価格を検知し、より良い条件で約定できる可能性を高めます。
投資家が自分で全ての市場を監視するのは現実的ではないため、SORによる自動比較は、取引コストを抑える仕組みとして重要視されています。
3.約定スピード・流動性の向上
SORは価格だけでなく、出来高や板の厚み、約定スピードも考慮します。
そのため、1つの市場では注文が通りにくい場合でも、複数の市場に分散して注文を出すことで約定確率を高めることが可能です。特に大口注文では、注文を分割することで市場への影響を抑えつつ、スムーズな執行が期待できます。
SORのメリットとデメリット(注意点)をまとめて解説

SOR(スマート・オーダー・ルーティング)は、取引を効率化する強力な仕組みである一方、万能ではありません。ここではメリットとデメリットを統合し、実際の投資判断に役立つ視点で整理します。
1.有利な価格で約定しやすい一方、常に最良とは限らない
SORの大きなメリットは、複数の取引所やPTSを比較し、より有利な価格を自動的に探してくれる点です。これにより、投資家が意識しなくても、わずかな価格差を拾える可能性が高まります。
ただし、SORはあくまで注文時点の市場情報を基に判断するため、急激な価格変動が起きた場合には、結果的に最良価格にならないケースもあります。常に最高条件が保証される仕組みではない点は理解が必要です。
2.流動性を自動探索できるが、市場急変時にはリスクもある
SORは価格だけでなく、出来高や板の厚みといった流動性も考慮します。そのため、1つの市場で約定しにくい場合でも、複数の市場に注文を分散し、約定確率を高めることができます。
一方で、相場が急変している局面では、市場間の価格差が一気に広がり、想定外の価格で約定してしまうリスクもあります。特に成行注文では注意が必要です。
3.個人投資家でも高度な執行が可能だが、コスト面の確認は重要
SORを利用することで、個人投資家でも機関投資家に近い水準の注文執行が可能になります。市場を横断して最適な執行を行う仕組みは、通常の手動注文では実現しにくいものです。
ただし、証券会社によっては、SOR利用に伴う手数料体系やスプレッドへの影響が間接的に発生する場合もあります。表面的な手数料だけでなく、実際の約定価格を含めた総コストを意識することが重要です。
SORと他の注文方式との違い
SOR(スマート・オーダー・ルーティング)は、注文の「出し方」そのものというより、注文をどこで執行するかを最適化する仕組みです。そのため、他の注文方式や取引手法と混同されがちです。ここでは違いを整理して解説します。
1.通常注文との違い
通常注文では、投資家が出した注文は特定の市場(多くの場合は取引所)にそのまま送られます。この場合、他の市場により有利な価格があっても、自動的に比較・選択されることはありません。
一方SORでは、注文を受け取った後に複数の取引所やPTSを横断的にチェックし、価格・流動性・約定確率などを考慮して、最も有利と判断される市場へ自動的にルーティングします。
つまり、通常注文は「行き先固定」、SORは「行き先を自動最適化」する点が大きな違いです。
2.VWAP注文・TWAP注文との違い
VWAP注文やTWAP注文は、時間や出来高を基準に注文を分割して執行するアルゴリズム型の注文方式です。
VWAPは市場の出来高加重平均価格に近づけることを目的とし、TWAPは一定時間内に均等に注文を分割して執行することを目的とします。これらは主に市場への影響を抑えることが狙いです。
一方SORとは、どの市場で約定させるかを最適化する仕組みであり、時間配分や出来高配分そのものを目的とするものではありません。
実務では、VWAPやTWAPで分割された注文の「行き先」をSORが決めるという形で、両者が組み合わされて使われることも多くあります。
3.アルゴリズム取引との関係性
アルゴリズム取引とは、一定のルールや計算式に基づいて自動的に注文を出す取引手法の総称です。VWAPやTWAPもアルゴリズム取引の一種に含まれます。
SORもアルゴリズムを用いていますが、その役割は売買戦略の決定ではなく、執行段階での最適化に特化しています。
つまり、
アルゴリズム取引:「いつ・どれくらい・どう分けて」注文するかを決める
SOR:「どの市場で約定させるか」を決める
という役割分担になります。
SORはどんな投資家に向いているか
SOR(スマート・オーダー・ルーティング)は、すべての投資家に必須というわけではありませんが、特定の投資スタイルでは大きな効果を発揮する仕組みです。ここでは、SORと相性が良い投資家タイプを具体的に解説します。
1.短期売買を行う投資家
デイトレードやスイングトレードなど、短期売買を行う投資家にとって、約定価格のわずかな差や約定スピードは、最終的な損益に直結します。
SORを利用すれば、複数の市場の中からより有利な価格と流動性を自動的に探してくれるため、エントリーやエグジットの精度向上が期待できます。
特に、値動きの速い銘柄や出来高が分散している銘柄では、手動で市場を選ぶよりも安定した執行が可能になります。
2.大口注文を出すケース
一度にまとまった株数を売買する場合、1つの市場に注文を集中させると、板を崩してしまい、不利な価格で約定するリスクがあります。
SORは注文を複数に分割し、複数の取引所やPTSに分散して執行するため、市場への影響を抑えながら約定させやすくなります。
そのため、
ポジションサイズが大きい投資家
流動性がそれほど高くない銘柄を取引する場合
において、SORは特に有効です。
3.コスト重視・執行重視の投資スタイル
取引手数料だけでなく、実際の約定価格まで含めた「総コスト」を重視する投資家にもSORは向いています。
わずかな価格改善でも、取引回数が増えるほど累積効果は大きくなり、長期的にはパフォーマンス差につながる可能性があります。
また、
「確実に約定させたい」
「できるだけ有利な条件で執行したい」
といった執行品質を重視する投資スタイルにとって、SORは有力な選択肢といえるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1.SORは自動で使われるの?
多くの場合、はい。SORは自動で使われています。
日本の主要な証券会社では、株式取引において最良執行を実現するため、SORが標準で組み込まれているケースが一般的です。そのため、投資家が特別な設定をしなくても、注文は裏側でSORを通じて処理されます。
ただし、すべての注文が必ずSOR経由になるわけではなく、
注文の種類(成行・指値など)
市場の状況
証券会社の内部ルール
によっては、特定の市場に直接送られる場合もあります。
Q2.手動でON/OFFできる?
証券会社によって異なります。
一部の証券会社では、取引画面の設定で
SORを利用する
特定の市場(例:東証のみ)に注文を出す
といった選択が可能です。一方で、個人投資家向けにはSORのON/OFFを明示的に切り替えられない仕様になっているケースも少なくありません。
そのため、
自分が使っている証券会社がSOR対応か
設定変更が可能かどうか
は、事前に公式サイトや取引ツールの説明を確認しておくことが重要です。
まとめ
SORとは、複数の市場を自動で比較して最良の価格と流動性で注文を執行する仕組みです。
投資家が理解しておくべきポイントは、
常に最良価格になるとは限らないこと
流動性や市場状況によって約定結果が変わること
証券会社ごとにSORの仕様や利用可否が異なること
です。
使いこなすためには、注文方法や相場状況に応じて、成行・指値の使い分けやSOR設定を確認することが重要です。
つまり、SORは取引を自動で最適化する便利な仕組みですが、仕組みの理解と適切な使い方が、より有利な取引につながります。
免責事項:この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。