金価格はどこまで上がる?今後の上昇余地と注目ポイントを徹底解説
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金価格はどこまで上がる?今後の上昇余地と注目ポイントを徹底解説

著者: 高橋健司

公開日: 2025-12-18

近年、金価格は過去最高値圏で推移しており、多くの投資家の注目を集めています。その背景には、インフレの長期化や地政学リスクの高まり、さらには金融市場の不安定さがあります。こうした環境下では、価値が大きく変動しにくい金が「資産を守る手段」として再評価されやすくなります。そのため投資家の間では、金価格はどこまで上がるのか、いつまで上昇が続くのかという点に関心が集まっているのです。


金価格の基本|なぜ金は価値を保ち続けるのか

金は、長い歴史の中で価値を保存する資産として世界中で認識されてきました。その最大の理由は、金が持ついくつかの独特な性質にあります。


まず、希少性です。金は自然界に限られた量しか存在せず、急激に供給量を増やすことができません。そのため、紙幣のように大量発行によって価値が薄まるリスクが低く、長期的に価値を保ちやすい資産とされています。加えて金は実物資産であり、企業の業績や発行体の信用に依存しない点も大きな特徴です。倒産や債務不履行といった信用リスクが存在しないため、金融危機時でも価値がゼロになる可能性は極めて低いといえます。


次に、株式・債券・通貨との違いです。株式は企業の成長に連動する一方、業績悪化や市場全体の下落で大きく値下がりすることがあります。債券は比較的安定した収益が期待できますが、金利上昇や発行体の信用悪化の影響を受けます。また通貨は、インフレや金融政策によって購買力が低下するリスクがあります。これに対して金は、どの国の通貨にも属さない価値の基準そのものとして機能するため、他の資産と異なる動きをしやすく、分散投資の対象として重視されています。


こうした特性から、金は「有事の金」と呼ばれています。戦争や地政学リスクの高まり、金融危機、急激なインフレなど、先行き不透明な状況になると、投資家は株式や通貨から資金を引き揚げ、相対的に安全とされる金へ資金を移す傾向があります。その結果、不安定な局面ほど金の需要が高まり、価格が上昇しやすくなるのです。


このように、金は希少性・実物資産としての強さ・信用リスクの低さを兼ね備えており、時代や経済環境が変化しても価値を保ち続ける資産として位置づけられています。


過去データから見る上昇余地

この1ヶ月間、金価格は上昇し続き

金価格はここ数十年で大きく変動してきました。国際市場でのドル建て価格を見ると、1970年代以降は大きく上昇する局面が複数あり、特にリーマンショック後・コロナ禍後に顕著な上昇が見られます。2025年現在では、1トロイオンスあたり約4.300ドル超えという歴史的高値圏で推移しています。これは過去の主要な危機局面でも同様で、安全資産としての役割が高まったタイミングで価格が大きく伸びてきました。


また、日本の店頭価格でも、2020年頃の約6.000円/グラム前後から2025年には20.000円超へと約3倍以上に上昇していることが確認できます。


今後の金価格はどこまで上がる:アナリストのコンセンサス

国際的な金融機関や市場予想では、短期〜中期(2026年ごろまで)において金価格は現在の高水準を維持しつつ、さらに上昇余地があるという見通しが多く出ています。特に主要銀行やリサーチ部門は、次のような予想レンジを示しています:


多くの機関予想で $4.000〜$5.300/オンス(約1トロイオンス当たり) の範囲が示されており、場合によってはこれを超える可能性もあるという意見もあります。


J.P. Morganなどの大手リサーチでは、2026年に向けて金価格が約$5.000近辺まで押し上げられる可能性があると予想しています。


強気のケースでは、他のアナリストやストレスモデルが示すように、$5.000を超えて$6.000付近まで上昇する可能性も議論されています。


このように複数の専門家予想を総合すると、2026年前後にかけて現在の水準を維持しながら上方への余地があるという方向性が強く示されています。


短期・中期・長期の視点

1.短期(数ヶ月〜1年)

地政学リスクや金融政策の変化による値動きが大きく、価格が一時的に戻す可能性もあります。直近では歴史的高値圏でのもみ合いが発生しているとの見方もあります。


2.中期(1〜2年:2026前後)

多くの専門家予想では、上記のように価格は現在の高水準から維持またはさらに上昇し、$4.000〜$5.000台を中心に推移する可能性が高いと示唆されています。


3.長期(5年〜10年)

長期では、地政学リスク・インフレ・中央銀行の需要増加・供給制約といった複数の構造的要因により、金価格は値を高めていく可能性があるとの予測もあります。ただし具体的な数値予想は専門家でも大きく分かれています。


金価格はどこまで上がるかを左右する5つの重要要因

金価格は単一の要因で動くわけではなく、複数のマクロ環境が重なり合って形成されます。ここでは、金価格を左右する代表的な5つの要因をわかりやすく解説します。


1. インフレと実質金利

金価格を考えるうえで最も重要なのが、実質金利(名目金利 − インフレ率)です。


金は利息や配当を生まない資産のため、実質金利が低下、あるいはマイナスになると、債券などと比べた際の不利さが薄れ、金の相対的な魅力が高まります。


特に、

  • インフレが高止まりしている

  • 中央銀行が利下げや緩和姿勢を示している

といった環境では、「通貨の価値が目減りするリスク」を回避するために金が選ばれやすくなり、価格上昇につながりやすくなります。


2. 米ドルの動向

金は国際市場で米ドル建てで取引されるため、ドルの強弱は金価格に大きな影響を与えます。


一般的には、

  • ドル安 → 金価格は上昇しやすい

  • ドル高 → 金価格は上昇しにくい

という関係があります。ドル安になると、他通貨を持つ投資家にとって金が割安に見え、需要が増えるためです。


ただし近年では、世界的な不安が強まる局面で、ドルと金が同時に買われるケースも見られ、単純な逆相関だけでは説明できない局面も増えています。


3. 中央銀行の金購入(各国の動き)

近年の金価格上昇を語るうえで欠かせないのが、各国中央銀行による金の積極的な購入です。


特に新興国を中心に、

  • 外貨準備の分散

  • 米ドル依存の低下

  • 経済制裁リスクへの備え

といった目的から、金の保有比率を高める動きが続いています。


中央銀行は短期的な値動きよりも長期的な資産保全を重視するため、こうした需要は金価格の下支え要因となり、「簡単には下がりにくい構造」を作っています。


4. 地政学リスク・世界情勢

戦争、紛争、政治不安、国際関係の緊張など、地政学リスクの高まりは金価格を押し上げやすい要因です。


こうした局面では、

  • 株式市場が不安定になる

  • 通貨や債券への信頼が低下する

結果として、「最終的に価値が残る資産」として金が選ばれやすくなります。


このため、世界情勢が不透明な状態が続くほど、金価格は高値圏を維持しやすくなります。


5. 投資マネーの流入(ETF・個人投資家)

金価格は、投資家の資金フローにも大きく左右されます。


近年は、現物の金だけでなく、

  • 金ETF

  • 金連動型の投資商品

を通じて、個人投資家や機関投資家が簡単に金へ投資できるようになりました。


株式市場が不安定な時期や、長期的なインフレ懸念が強まると、「守りの資産」として資金が金市場へ流入し、価格を押し上げる要因となります。

金塊

今後の金価格シナリオ別

1.強気シナリオ|金融緩和と世界的な不安定さが続く場合

強気シナリオでは、金価格は現在の高値圏を維持しながら、さらに上昇する可能性があります。世界的なインフレ懸念が完全には解消されず、主要中央銀行が利下げや緩和的な金融政策を継続する場合、実質金利は低下しやすくなります。その結果、利息を生まない金の不利さが薄れ、資金が金市場に流入しやすくなります。加えて、地政学リスクや国際情勢の不透明感が続く場合、「有事の金」としての需要が一段と高まり、中央銀行や機関投資家の買いが継続することも想定されます。このような条件が重なれば、金価格は心理的な節目を超え、過去最高値を更新しながら中長期的な上昇トレンドを維持する展開も十分に考えられます。


2.中立シナリオ|高値圏を維持しつつレンジで推移する場合

中立シナリオでは、金価格は大きく上昇も下落もせず、現在の高値圏を中心としたレンジ相場になると考えられます。インフレ率は徐々に落ち着き、金融政策も急激な利下げや利上げに踏み切らない場合、金に対する強い追い風も逆風も発生しにくくなります。また、地政学リスクが一定水準で落ち着き、金融市場全体が比較的安定すれば、金への資金流入は続くものの、爆発的な買いにはつながりにくくなります。この場合、金は主に「資産分散の一部」や「保険的な資産」として保有され、価格は上下を繰り返しながらも大きな方向感を持たない推移となる可能性が高いでしょう。


3.弱気シナリオ|金利上昇やドル高が進む場合

弱気シナリオでは、金価格は調整局面に入り、一定の下落圧力を受ける展開が想定されます。インフレが想定以上に沈静化し、中央銀行が再び利上げ姿勢を強める場合、実質金利は上昇し、債券など利回りのある資産の魅力が高まります。その結果、金は相対的に選ばれにくくなり、投資マネーが株式や債券市場へ戻る可能性があります。また、米ドルが強含む局面では、ドル建てで取引される金は割高感が出やすく、需要が弱まる要因となります。ただし、中央銀行の保有需要や長期的なインフレ懸念が残る限り、急落というよりは段階的な調整にとどまる可能性が高い点も押さえておく必要があります。


金価格が下落するリスクは?

1.金利上昇局面での注意点

金価格にとって最大の下押し要因の一つが、金利の上昇です。金は利息や配当を生まない資産であるため、政策金利の引き上げや長期金利の上昇によって、債券や預金といった「利回りのある資産」の魅力が高まると、相対的に金の魅力は低下します。特にインフレが落ち着き、実質金利がプラス圏で上昇する局面では、金を保有する機会コストが意識されやすくなり、価格が調整される可能性があります。そのため、中央銀行の金融政策や金利動向は、金価格を考えるうえで常に注視すべきポイントとなります。


2.株式市場回復時の資金流出

金は「リスク回避資産」として買われることが多いため、株式市場が回復基調に入ると資金が流出しやすいという特徴があります。景気回復が明確になり、企業業績や株価の先行きに対する安心感が高まると、投資家はより高いリターンを期待できる株式へ資金を移す傾向があります。その結果、金ETFや先物市場から資金が引き揚げられ、金価格が緩やかに下落することがあります。特に「リスクオン」の相場環境では、金は一時的に存在感を失いやすくなる点に注意が必要です。


3.短期投資と長期投資の考え方の違い

金価格の下落リスクを考える際には、投資期間の違いを明確にすることが重要です。短期投資では、金利発表や経済指標、地政学ニュースなどをきっかけに、金価格が急落・急騰するリスクがあり、タイミング次第で損失が発生する可能性があります。一方で長期投資の視点では、金はインフレ対策や資産保全を目的とした「守りの資産」として位置づけられることが多く、短期的な下落は想定内の値動きと捉えられます。そのため、短期的な価格変動だけを理由に判断するのではなく、自身の投資目的や保有期間に応じて、金の値動きをどう受け止めるかを考えることが重要です。


金投資を考える人への実践的アドバイス

1.金投資は「保険」か「リターン狙い」か

まず最初に考えるべきなのが、金投資の目的です。


金は株式のように企業成長による利益を生む資産ではなく、基本的には「価値を守る資産」としての性格が強いです。そのため、金投資は大きく分けて以下の2つの考え方に分かれます。


一つ目は、資産を守るための「保険」としての金投資です。インフレや金融危機、地政学リスクなど、将来の不確実性に備え、資産価値の目減りを防ぐ目的で金を保有します。この場合、短期的な価格変動はあまり気にせず、長期的に持ち続ける姿勢が基本となります。


二つ目は、価格上昇によるリターンを狙う金投資です。金価格が上昇トレンドにある局面や、金融不安が高まるタイミングを捉えて利益を狙います。ただし、この場合は相場の変動を受けやすく、購入や売却のタイミングが成績を左右するため、株式投資と同様にリスク管理が重要になります。


どちらの目的なのかを明確にすることで、適切な投資方法や保有期間が自然と定まります。


2.分散投資における金の役割

金は、分散投資において非常に相性の良い資産とされています。


その理由は、金が株式や債券、通貨と異なる値動きをする傾向があるためです。株式市場が大きく下落する局面でも、金は比較的値崩れしにくい、あるいは逆に上昇するケースもあります。


資産の大部分を株式に集中させていると、市場全体の下落時に資産が一気に目減りするリスクがあります。そこに金を組み入れることで、ポートフォリオ全体の値動きを緩やかにし、リスクを分散する効果が期待できます。


一般的には、資産全体の一部(例:5〜15%程度)を金に配分することで、リスクと安定性のバランスを取りやすくなります。


3.現物・ETF・金関連株の違い

金投資には複数の手段があり、それぞれ特徴と向き・不向きがあります。


現物の金は、金地金や金貨などを実際に保有する方法です。信用リスクがなく、長期的な資産保全に適している一方で、保管コストや売買の手間がかかる点がデメリットです。インフレや通貨価値の下落に備える「最終的な資産」として考える人に向いています。


金ETFは、証券口座を通じて金価格に連動する商品に投資する方法です。少額から投資でき、売買も簡単なため、個人投資家にとって最も利用しやすい手段といえます。短期から中長期まで柔軟に対応でき、価格変動を活かした投資にも向いています。


金関連株は、金鉱山会社や資源企業の株式に投資する方法です。金価格が上昇すると業績が大きく伸びる可能性があり、高いリターンを狙える反面、企業経営や株式市場全体の影響も受けるため、価格変動は金そのものより大きくなりがちです。リスク許容度が高く、積極的にリターンを狙いたい投資家向けといえます。


よくある質問(FAQ)

Q1. 金価格は本当に上がり続けるのですか?

金は安全資産として注目されることが多いですが、必ず上がり続けるわけではありません。金利上昇やドル高、株式市場の回復などにより、一時的に価格が下がることもあります。長期的にはインフレや地政学リスクにより上昇圧力がかかる可能性がありますが、短期的な値動きには注意が必要です。


Q2. 金はどのくらい保有すればいいですか?

金は資産全体の一部として保有するのが基本です。一般的には総資産の5〜15%程度を目安にする投資家が多く、目的によって増減します。保全目的であれば長期保有を前提にし、リターン狙いであれば短期的な値動きを意識した戦略も検討できます。


Q3. 金現物と金ETFの違いは何ですか?

  • 金現物:金地金や金貨を直接購入する方法で、信用リスクはなく保全性が高いですが、保管コストや売買手間がかかります。

  • 金ETF:証券口座で金価格に連動する商品に投資する方法で、少額から始めやすく売買も簡単です。短期・中長期どちらにも対応可能です。

  • 金関連株:金鉱山や資源企業の株式で、金価格に連動しますが企業リスクもあるため、値動きは金現物より大きくなる傾向があります。


Q4. 金投資で気を付けるべきリスクは?

金は価格の変動や流動性リスク、為替リスクの影響を受けます。特に短期的には金利や株式市場、政治リスクの変化で価格が上下するため、投資目的や保有期間に応じた戦略を立てることが重要です。


Q5. 金価格の上昇が期待できる条件は?

  • 中央銀行が金を買い続ける場合

  • 地政学リスクや経済不安が高まる場合

  • 実質金利が低下する場合

これらの条件が揃うと、金への需要が強まり、価格の上昇が期待できます。


結論|金価格はどこまで上がるのか、どう向き合うべきか

金価格には明確な上限は存在せず、状況次第でさらに上昇する可能性があります。そのため、価格予想に一喜一憂するよりも、自分が金を保有する目的を明確にすることが重要です。例えば、資産の保全やインフレ対策として持つのか、短期的な値上がり益を狙うのかで戦略は変わります。


また、不透明な経済環境や地政学リスクが続く時代において、金は「安定資産・リスク分散の手段」としての位置づけが大切です。金は万能ではありませんが、資産全体の安全性を高める一部として活用することで、投資ポートフォリオをより安定させることができます。


免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。