简体中文 繁體中文 English 한국어 Español ภาษาไทย Bahasa Indonesia Tiếng Việt Português Монгол العربية हिन्दी Русский ئۇيغۇر تىلى

インバウンド株の動向を解説|現在大きな逆風に立ち向かう

著者: 高橋健司

公開日: 2025-11-19

近年、訪日外国人はコロナ後の回復で増加しているものの、市場ではインバウンド株が伸び悩む場面が目立っています。「訪日客が増えれば株価も上がる」という従来の流れが崩れつつあり、投資家の間では警戒感が高まっています。その背景には、爆買い需要の鈍化、中国からの訪日客減少、円安効果の弱まりなど複数の逆風が重なっていることが要因です。こうした変化によって、インバウンド関連企業にも明暗がはっきり出てきています。


インバウンド株とは?構成と代表的銘柄

インバウンド株とは、訪日外国人の旅行需要によって売上が大きく左右される企業群を指します。訪日客の増減がそのまま業績に反映されやすいため、為替相場や海外経済の動向とも密接に関係しています。構成セクターは幅広く、単なる観光業だけではなく、小売からサービス業まで多岐にわたります。


●主なインバウンド関連セクター

① 小売(ドラッグストア・百貨店)

訪日客の「買い物需要」を取り込むセクターで、化粧品、医薬品、家電などの購買が中心です。


  • ドラッグストア:インバウンド消費比率が特に高い

  • 百貨店:高付加価値の商品・ブランド品の取り扱いで強み


② 宿泊(ホテル・旅館)

訪日客の増減が最も直接的に反映されるセクター。客室単価(ADR)や稼働率が業績の鍵となります。


  • 都市型ホテルはビジネス+観光の二軸需要

  • ラグジュアリーホテルは高単価客層に支えられやすい


③ 交通(航空・鉄道)

訪日需要に依存する割合が高く、国際線の回復が株価に直結します。


  • 航空:外国人観光客の増減が最も顕著に影響

  • 鉄道:都市圏交通に加えて観光特需の恩恵を受ける


④ 体験・サービス(テーマパーク・観光事業)

「モノ消費」から「コト消費」へのトレンドを追い風にして成長します。


  • テーマパーク:世界からの観光客を吸引

  • 観光施設:地方経済と連動して動く


● 代表的インバウンド銘柄

  • HIS(旅行)

  • JAL/ANA(航空)

  • JR東日本(鉄道)

  • 資生堂・花王(化粧品)

  • エービーシー商会(小売)

  • 阪急阪神HD・京王電鉄(鉄道+ホテル)

  • パーク24(駐車場・モビリティ) など


これら企業は、訪日客数の変動や購買行動に敏感で、「インバウンド需要が増えているかどうか」が業績に直結します。

インバウンド株が苦戦

現在の逆風:インバウンド株が苦戦する主な理由

インバウンド関連株は訪日客数が回復しているにもかかわらず、株価は必ずしも上昇していません。その背景には、需要・コスト・為替といった複数の要因が同時に重なり、企業の収益環境が圧迫されている現状があります。以下では、その逆風の正体をより具体的に解説します。


1. 円安のピークアウト懸念

円安は訪日客の購買意欲を高め、インバウンド企業に追い風をもたらします。しかし、足元では 「円安効果が既にピークを迎えたのではないか」 と市場が警戒しており、円高方向への転換リスクが株価の重しになっています。


  • 爆買い鈍化の兆候

    円安のメリットに慣れた訪日客の購買行動が落ち着き、ドラッグストアや百貨店では単価の伸び悩みが見られます。


  • 円高へのシフト不安

    日銀の政策転換観測や金利正常化により、円高に触れればインバウンド消費は一段と後退する可能性があり、投資家心理を冷やしています。


2. 中国・アジアからの需要減速(地政学的要因を含む)

訪日客の中心である中国・アジア地域の需要が大きく鈍化しており、インバウンド関連企業の業績に直接影響しています。特に地政学的リスクや政策変化が影響を増幅させています。


  • 中国経済の停滞

    経済減速や不動産不況によって海外旅行への支出を控える動きが広がり、個人旅行でも訪日客数が戻りきらない状況です。


  • 体旅行規制など政策要因

    中国政府による海外団体旅行の規制・管理強化も影響し、かつての“爆買い層”が戻りにくくなっています。これにより小売、免税店、百貨店などが特に打撃を受けています。


  • 地政学的リスク

    東アジア地域の緊張(台湾海峡情勢、南シナ海問題など)が高まると、旅行安全に対する懸念が強まり、団体・個人旅行の計画が延期・キャンセルされるケースが増えます。


    特に中国や韓国からの訪日客数に短期的な影響が出やすく、航空・ホテル・観光施設の業績に直結します。


このように、経済要因だけでなく地政学的リスクも含めて、アジアからの訪日需要は変動しやすく、インバウンド株にとって逆風となっています。


3.旅行単価の伸び悩み

訪日客の数は増えているものの、「どれだけお金を使うか」 という点では明確に鈍化が見られます。


  • 宿泊費の高騰 → 節約行動へ

    円安の影響、需要の集中、人件費上昇により宿泊価格が大幅に上昇します。


    訪日客は宿泊費に予算を取られることで、買い物・外食への支出を抑える傾向が強まっています。


  • 購買単価の低下

    ドラッグストアや百貨店では化粧品・医薬品などの高単価商品が売れにくくなり、客単価は全般的に低下します。


    「モノ消費」より「コト消費(体験)」へのシフトも影響しています。


4.国内人材不足・コスト増

需要が回復した一方で、供給側の体制が追いついていないことも企業の負担を増やしています。


  • 人件費の増加

    ホテル、飲食、交通など観光業全体で慢性的な人手不足が続いており、採用・維持にかかるコストが上昇。利益を圧迫する要因となっています。


  • サービス提供能力の制約

    スタッフ不足により客数が増えても十分に対応できず、稼働率を上げにくいケースも存在します。


    特にホテル業界では「満室にできない満室(人手が足りず部屋を販売しない)」が問題となっています。


それでもインバウンド株にチャンスが残る理由

逆風がある一方で、インバウンド株には中長期的に成長の余地が残っています。訪日需要の構造的な増加や企業の戦略転換、政府の支援策が支えとなり、今後の回復を期待できる理由を整理します。


1. 回復の長期トレンドは依然強い

訪日外国人の旅行需要は、コロナ禍からの回復だけでなく、構造的に増加するトレンドが続いています。


  • 旅行需要の「構造的増加」

    日本は安全性、観光資源、交通網の利便性で国際的に高評価を受けており、長期的に訪日需要は増加傾向にあります。


    短期的な逆風があっても、基盤需要は揺るがない構造です。


  • 東南アジア・欧米客の増加

    中国依存型から市場が多様化しつつあり、タイ、ベトナム、米国、欧州などからの訪日客が増加します。



    非中国市場の成長が、インバウンド株の収益を支える重要な柱となります。


2. 企業のビジネスモデル転換

多くの企業が逆風をチャンスと捉え、従来のモデルを見直して収益力を高めています。


  • 体験型消費・高付加価値戦略

    商品販売中心から、観光体験や高価格帯サービスの提供へシフトします。


    テーマパークや宿泊業は、単価を上げることで外国人客の減少リスクを吸収可能です。


  • デジタル化・効率化の加速

    キャッシュレス対応、予約システムの自動化、マーケティング分析の高度化などでコストを抑制します。


    人手不足や運営コストの上昇に対抗します。


  • 非中国依存のマーケット戦略

    中国以外のアジア圏や欧米市場を狙った商品・サービス開発。


    地政学リスクや経済変動への耐性が向上します。


3. 政府の観光戦略(観光立国推進)

政府も訪日需要を長期的に押し上げる政策を推進しており、インバウンド株に追い風となります。


  • 地方創生施策

    地方観光地のプロモーションやインフラ整備により、地域への外国人誘致を促進します。


     大都市依存のリスクを分散し、宿泊・観光施設の稼働率改善につながります。


  • 新空港・インフラ強化計画

    国際空港の拡張、鉄道・道路整備でアクセス向上します。


    観光客の利便性が上がることで訪日客数の増加が期待されます。


  • 免税制度の見直しなど

    消費税還付制度や免税品の拡充で購買意欲を刺激します。


    小売やドラッグストア、百貨店などのインバウンド関連売上にプラス効果があります。


セクター別の動向と注目ポイント

インバウンド株はセクターごとに影響の出方や回復スピードが異なります。それぞれの特徴を把握することで、投資判断の参考になります。


1.ドラッグストア/小売

インバウンド消費の象徴ともいえるドラッグストア・小売業では、爆買い需要の鈍化や客単価の低下が顕著です。


  • 爆買い鈍化の影響

    中国人旅行者の爆買いが以前ほど見られず、売上の伸び悩みが続いています。特に化粧品や医薬品の高単価商品で影響が大きく、売上構成の見直しが迫られています。


  • 化粧品・医薬品の需要変動

    為替や訪日客の国籍構成の変化により、人気商品の売れ行きが不安定です。


    一時的な特需に頼らない、長期的な販促戦略の重要性が増しています。


2.ホテル・宿泊

宿泊セクターは訪日需要の回復が直接的に業績に反映されますが、供給面の制約が課題です。


  • 客室単価は高止まり

    コロナ後の需要回復で宿泊料金が上昇し、高単価客層をターゲットにしています。


    一方で一般旅行者の宿泊数減少や単価調整の難しさが収益の制約要因となっています。


  • 人手不足が最大の課題

    ホテル業界全体で慢性的な人手不足が続き、稼働率を最大化できないケースが多いです。


    自動化・省人化の取り組みや、外国人労働者活用の戦略が鍵となります。


3.交通(航空・鉄道)

交通セクターは訪日客の移動に直結するため、国際情勢や燃料コストの影響を強く受けます。


  • 国際線回復と燃料コスト問題

    国際線の需要は回復傾向ですが、燃料費の高騰が利益率に影響をあたえます。


    為替や地政学リスクも収益に直結するため、安定的な運営が求められます。


  • 旅行単価の回復速度

    航空・鉄道ともに、訪日客1人あたりの消費単価の回復が株価動向を左右します。


    高単価旅行需要への対応力が、企業ごとの明暗を分ける要因になります。


4.観光サービス・テーマパーク

テーマパークや体験型観光施設は、安定した顧客層と長期的な需要が強みです。


  • 欧米ファミリー層の安定需要

    欧米からの家族旅行客は購買力が高く、季節や為替の影響を受けにくい。


    非中国依存型の収益源として、安定性が高いです。


  • 為替に依存しにくい長期顧客基盤

    国内外のリピーターや長期滞在型旅行者の取り込みにより、短期的な円高・円安リスクを緩和します。


    施設運営やサービスの質向上が、持続的な収益に直結します。


今後の見通し:逆風はいつまで続くのか

日本の風景

インバウンド株への逆風は確かに複数存在していますが、それぞれの要因には“期限”や「転機」があり、今後の方向性を読むことで投資環境を理解しやすくなります。ここでは、円相場、海外需要、国内コスト、そしてセクター別の回復スピードから今後の見通しを整理します。


  • 円相場の見通しがインバウンド株に与える影響

    円安はインバウンド企業にとって追い風でしたが、近年は円安のピークアウトが意識され、為替の揺り戻しが議論されています。日銀の政策転換が加速する場合、円高方向に振れる可能性があり、訪日客の購買意欲の低下や旅行単価の下押しを招く懸念があります。ただし、もし円安基調が続けば、インバウンド消費は再び押し上げられ、関連株への見直し買いにつながる可能性も残ります。今後の焦点は、日銀と米国の金利差がどこまで縮小するかにかかっています。


  • 中国需要の回復タイミング

    中国からの訪日需要はインバウンド市場の大きな部分を占めてきましたが、経済減速や政策要因、地政学的緊張により回復が遅れています。短期的には大きな回復を期待しにくいものの、個人旅行は徐々に戻り始めており、団体旅行の制限緩和が実現すれば需要が大きく戻る余地があります。中国経済の底打ちや政策変更のタイミングが、インバウンド株の本格回復につながる重要なポイントとなるでしょう。


  • 国内コストの正常化シナリオ

    観光業界では人手不足や物価上昇によるコスト増が続いていますが、企業の自動化投資や外国人労働者の活用が進めば、運営コストは徐々に安定する可能性があります。宿泊業などでは、レベニューマネジメントの強化で客室単価を維持しながら稼働率を最適化し、利益率を改善できる余地があります。これらの取り組みが進展すれば、コスト上昇による逆風は中期的に緩和されると期待されます。


  • セクターごとの回復スピード比較

    インバウンド株はセクターごとに回復のスピードが異なります。ホテル・テーマパークなどの「体験型サービス」は需要が底堅く、比較的早期に業績が戻る傾向があります。一方、ドラッグストアや百貨店など小売は購買単価の回復に時間がかかり、中国需要が戻らない限り本格回復は限定的です。航空・鉄道は地政学リスクや燃料費の影響を受けやすく、回復までに時間がかかる可能性があります。このため、今後の投資ではセクター内の“回復速度の違い”を見極めることが重要になります。


よくある質問(FAQ)|文での詳細展開

Q1:インバウンド株は今買い時?

インバウンド株は現在、円高・中国景気減速・地政学的リスク(台湾海峡緊張、中東情勢など)の影響で短期的には逆風が強い状況です。しかし、訪日観光の長期トレンド自体は強く、政府の観光戦略やインフラ投資も進んでいます。短期では慎重姿勢が必要ですが、中長期視点では押し目の投資機会として捉える投資家も増えています。リスク要因を理解した上で「長期で持てるか」が判断のポイントになります。


Q2:円高でも強いインバウンド銘柄はある?

円高は訪日客の消費額を押し下げやすい一方で、富裕層向けサービスや国内需要も併せ持つ企業は比較的強さを保ちやすい傾向があります。例えば、高級ホテル、プレミアム型の商業施設運営、免税依存が低いテーマパークなどです。また、東南アジア・欧米からの観光客は為替感応度が低く、円高局面でも訪日意欲が大きく落ちにくい点も特徴です。円高に左右されにくいビジネスモデルを持つ企業を選別することが重要になります。


Q3:中国依存度はどの程度見るべき?

インバウンド需要は依然として中国の存在が大きく、特定銘柄では訪日客の3〜4割が中国に依存しているケースもあります。しかし、足元では中国の海外旅行規制・景気鈍化・地政学的対立の影響で回復が遅れています。そのため、投資判断においては「中国依存度の高さ=業績の変動リスク」として慎重に評価する必要があります。


一方で、政府は東南アジア・北米・欧州へのマーケティングを強化しており、訪日客の多様化が進む可能性もあります。依存度が高すぎる企業か、バランス良く分散されている企業かを見極めることが重要です。


Q4:投資する際の注意点は?

インバウンド株投資では以下の点に注意が必要です。


  • 為替リスク:円高進行は業績にマイナスに働く。

  • 地政学リスク:台湾海峡や中東の緊張は国際旅行全体に影響を与える。

  • 感染症・自然災害リスク:外部要因で急速に需要が冷え込む可能性がある。

  • 国別依存度の偏り:特定地域への依存が高い企業は回復の遅れに影響を受けやすい。

  • 季節性とイベント要因:大型連休やスポーツイベントなどの時期需要を読み違えないこと。


総じて、インバウンド株は成長余地が大きい一方、外部環境の影響を強く受けるため、リスク管理と分散が欠かせない投資ジャンルと言えます。


まとめ

インバウンド株は現在、円高や中国需要の鈍化など逆風が続いていますが、訪日観光そのものの長期的な成長力は揺らいでいません。今後は、ホテルやテーマパークなどセクターごとの明暗をしっかり見分けることが重要になります。また、為替の動向、アジア諸国からの訪日需要、そして各企業が打ち出す新しい成長戦略が、今後の株価を左右する大きなポイントとなるでしょう。


免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。