公開日: 2026-01-25
株式市場では、株価が急激に下がると投資家心理が不安定になり、市場全体が混乱することがあります。そこで導入されているのがサーキットブレーカーです。これは、株価指数が一定以上下落した場合に取引を一時的に停止する制度で、まるで市場の「安全装置」のような役割を果たします。
例えば、米国株ではコロナショック時や2020年の急落時に発動され、投資家が冷静に判断する時間を確保する効果がありました。日本でも同様の仕組みがあり、市場の急激な変動を和らげる目的で使われています。
サーキットブレーカーの仕組み

サーキットブレーカーは、株式市場が極端に変動した際に市場を安定させるための仕組みで、主にトリガー条件、段階的停止、時間の設定の3つの要素で構成されています。
トリガー条件
サーキットブレーカーは、株価指数の下落幅が一定の割合に達したときに発動します。たとえば米国株式市場では、S&P500の下落が7%、13%、20%のいずれかに達すると、それぞれのレベルに応じた取引停止が行われます。これにより、急激な暴落による市場のパニックを緩和できます。
段階的停止
サーキットブレーカーは1回の停止で終わらず、複数のレベルが設けられています。米国株では、最初の下落7%で15分間の取引停止、次の13%下落でさらに15分間の停止、20%下落でその日の取引が終了する、といった形で段階的に発動します。これにより、暴落の初期段階で市場を落ち着かせつつ、さらなる急落に備えることができます。
時間の設定
一時停止の時間も事前に決められています。短時間(例:15分)の停止で市場心理を落ち着かせる場合もあれば、最終的な停止では終日取引停止になることもあります。時間を区切ることで、投資家が冷静に状況を判断し、過剰な売買を避ける時間を確保します。
日本のサーキットブレーカー制度
日本の株式市場でも、株価が急激に下落した際に市場を安定させるためのサーキットブレーカー制度が導入されています。主に日経平均株価やTOPIXなどの株価指数に適用され、東京証券取引所(東証)が運用ルールを定めています。
日経平均やTOPIXにおける発動条件
日本の場合、株価指数が一定の下落率に達したときに取引が一時停止されます。具体的には、下落幅が前日終値比で**7%、13%、20%**などの段階で発動することがあります。これにより、投資家が慌てて売ることによる過剰な混乱を防ぎます。
東京証券取引所のルール
東証では、サーキットブレーカーが発動すると、指数先物や現物株式の取引が一時的に停止されます。停止時間は15分程度が基本で、場合によってはその日の取引全体に影響することもあります。さらに、取引再開前には価格の基準や注文方法が調整され、暴落の連鎖を抑える工夫がされています。
米国や欧州との違い
日本の制度は米国に比べて発動条件や適用範囲がやや慎重に設定されています。米国市場では段階的に複数レベルの停止があり、場合によっては終日の取引停止になることがありますが、日本では主に指数に限定され、停止時間も短めに設計されています。また、個別株には適用されない場合が多く、国際市場の動きによる影響も考慮されています。
サーキットブレーカーのメリットとデメリット
サーキットブレーカーは、市場の急激な変動を抑えるための重要な制度ですが、メリットとデメリットの両面があります。投資家や市場関係者は、それぞれの特徴を理解した上で活用することが重要です。
メリット
市場の急落を緩和
株価が短時間で大幅に下がると、投資家心理がパニックに陥り、売りが連鎖することがあります。サーキットブレーカーは取引を一時停止することで、こうした急落の連鎖を防ぎ、市場全体の混乱を緩和します。
冷静な判断の時間を確保
取引が一時停止されることで、投資家は慌てずに情報を整理し、冷静に売買戦略を考える時間を持つことができます。短期的な感情に流されず、より合理的な判断を行う手助けとなります。
不合理な投売りを防ぐ
過剰な恐怖や誤解によって引き起こされる売り注文(フラッシュセールや過剰反応)を抑制できます。これにより、市場価格の急激な歪みをある程度防ぐことが可能です。
デメリット・批判
市場価格形成を一時的に阻害
サーキットブレーカーが発動すると、正常な価格形成が一時的に止まります。そのため、市場価格が「本来の需給」を反映できず、短期的な不透明感が生じることがあります。
投資家心理に悪影響
取引停止は安心材料である一方、逆に「市場が危険な状況にある」と認識させて恐怖感を増幅させる可能性があります。特に初心者投資家にとっては心理的な負担になることがあります。
停止後のリバウンドによる混乱
一時停止後に取引が再開されると、パニック売りが落ち着いた反動で価格が急反発することがあります。この「リバウンド現象」により、一部の投資家にとっては再び混乱を招くリスクがあります。
サーキットブレーカーの活用例・歴史
サーキットブレーカーは理論上の制度だけでなく、過去の株式市場の危機的状況で実際に発動され、市場の安定に貢献してきました。ここでは代表的な事例と、日本・米国市場での比較を紹介します。
1987年ブラックマンデー
1987年10月19日、米国株式市場は「ブラックマンデー」と呼ばれる大暴落」を経験しました。この日、ダウ平均株価は約22%下落し、当時はサーキットブレーカー制度が十分に整備されていませんでした。この急落を契機に、米国では段階的なサーキットブレーカー制度が導入され、将来的な急落時の市場安定化に備えるようになりました。
2020年コロナショックでの発動例
新型コロナウイルスによる世界的な経済不安により、2020年3月の米国株式市場では、S&P500指数が短期間に大幅下落しました。このとき、サーキットブレーカーが複数回発動し、取引が一時停止されました。これにより、投資家は冷静に情報を整理する時間を持ち、暴落のパニック売りをある程度抑制することができました。
投資家にとってのポイント
サーキットブレーカーは市場の安全装置として有効ですが、投資家が過信することなく、自身の取引戦略に組み込むことが重要です。以下の3つのポイントを押さえておくと、急落時でも冷静に行動できます。
1. 発動を前提にしたリスク管理
サーキットブレーカーは市場の急落を緩和する仕組みですが、必ず株価を守るわけではありません。そのため、投資家は下落リスクを前提にしたポジション管理や損切りラインの設定を行うことが重要です。例えば、現物株やETFの保有割合を調整したり、信用取引でのレバレッジを抑えることで、急落時の損失を最小限にできます。
2. 急落時の対応戦略(長期投資 vs 短期取引)
長期投資家:短期的な急落に惑わされず、サーキットブレーカーによる取引停止をチャンスと捉え、冷静に保有資産を見直すことが大切です。市場の一時的な下落に過剰反応する必要はありません。
短期取引家(デイトレーダーやスイングトレーダー):取引停止後の再開タイミングや価格変動を見極め、迅速な対応が求められます。サーキットブレーカーの発動により流動性が一時的に低下するため、注文の出し方やリスク管理に注意する必要があります。
3. サーキットブレーカーが必ず下落を止めるわけではない
サーキットブレーカーは市場の混乱を和らげる手段であって、株価の下落を根本的に止めるものではありません。取引停止後に再開すれば、下落が続くこともあります。投資家は発動の有無に安心せず、自分のリスク許容度に応じた行動を常に意識することが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. サーキットブレーカーは誰が決めるの?
サーキットブレーカーの発動条件や運用ルールは、各国の証券取引所や金融当局が決定します。たとえば日本では東京証券取引所が指数ごとの発動条件を設定し、米国ではニューヨーク証券取引所やCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)がS&P500などの指数に応じたルールを定めています。
Q2. 株価はサーキットブレーカー後に必ず上がるの?
いいえ、サーキットブレーカーはあくまで市場の混乱を一時的に緩和する制度です。取引再開後に株価がさらに下がることもあります。投資家は発動後も冷静に情報を確認し、感情に流されずに判断する必要があります。
Q3. 海外株と日本株で条件は違うの?
はい、違います。米国株式市場では段階的に複数の停止レベルがあり、場合によっては終日取引停止になることもあります。日本株は主に指数に限定され、個別株には適用されないことが多く、取引停止時間も短め(約15分)に設定されています。
Q4. 個別株にも適用されるの?
原則として、日本のサーキットブレーカーは指数のみに適用されます。一方、米国市場では一部の個別株に対しても「ストップ・サーキット」という制度があり、急激な価格変動があった場合には取引が一時停止されます。
結論
サーキットブレーカーは、株式市場の急激な下落から市場や投資家を守る安全装置です。
投資家は、どのような条件で発動するのか、どの程度の効果があるのかを理解しておくことが大切です。
そして、取引が一時停止された場合でも、慌てずに情報を整理し、冷静に判断する姿勢を持つことが、損失を最小限に抑えるポイントとなります。
免責事項:この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。