ドル円が155円台に下落した原因は、介入兆候なく戻ったことにある。
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ドル円が155円台に下落した原因は、介入兆候なく戻ったことにある。

公開日: 2026-09-04   
更新日: 2026-09-04

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  • ドル円は9月4日、一時155.25円まで下落した。7月の為替介入後に円が付けた155.20円をわずかに上回る水準だ。

  • 公的な為替介入は確認されていない。日銀の当座預金データによると、水曜日の急伸の背景に財務省による円買いはなかった。

  • 9月の日銀利上げ観測は75%前後で、8月27日時点の87%を下回る。より大きな織り込み直しが起きているのは9月以降の道筋だ。

  • 高田創審議委員が9月2日、会合ごとに機動的に利上げすべきだと訴えたことで、日銀の引き締めペースに関心が集まった。

  • ウォラーFRB理事の発言を受け、9月のFRB利上げ観測は約50%に低下し、ドル側の支えが後退した。


ドル円は9月4日(金)のアジア時間に一時155.25円まで下落し、7月の日米による為替介入後に円が付けた155.20円から155.21円の水準にわずかに届かなかった。今回の動きの背景に公的な介入は確認されていない。


ドル円が155円台に下落した原因は、単一の要因ではなく、日米双方の政策金利パスに対する見方が同時に変化したことにある。


8日前の8月27日時点では、ドル円は159.2円近辺で推移し、短期金融市場は9月の日銀利上げ確率を87%と織り込んでいた。この一会合に対する確率は現在75%前後まで低下している。それでも円は週間で約2.5%の上昇となる見通しだ。

ドル円が155円台に下落、新たな為替介入の動きは見られない

論点は変わった。もはや日銀が今月動くかどうかではなく、米金利観測が逆方向に転じたのと同じタイミングで、トレーダーがついに日本の利上げペース加速を織り込み始めたかどうかが焦点となっている。


ドル円、介入後の戻りを帳消しに

円は7月31日に日米が協調行動を取る前、1ドル=163.98円と40年ぶりの安値を付けていた。その後は155.21円まで値を戻したが、この動きはやがて失速した。


8月27日までにドル円は159.2円まで戻し、月末には160円台を上抜けた。9月2日(水)には円が急伸し、0.94%高の158.67円となった。翌木曜日にはさらに2%超上昇し、取引時間中に一時156.15円を付けたのち、ニューヨーク市場では155.47円まで円高が進んだ。これは8月3日以来の円高水準だった。金曜日には一時155.25円まで下落し、その後アジア時間には155.7円近辺まで値を戻した。


わずか3営業日で、4週間かけて積み上げてきた戻りのほぼ全てが失われた形だ。155.21円を明確に上回れば、円は5月6日以来の高値水準となる。


今回の円高が7月と異 なる理由

7月の円高は人為的に演出されたものだった。今回はそうした痕跡が見当たらない。


CIBCキャピタル・マーケッツのジェレミー・ストレッチ・チーフインターナショナル・ストラテジストによると、水曜日分の日銀当座預金データには財務省によるドル売り・円買いの形跡はなかった。同氏は、市場参加者からもレートチェック(通貨当局による相場確認)の報告はなかったと付け加えた。


ゴールドマン・サックスのアナリストは、木曜日の円高は急激にではなく徐々に進んだものであり、過去の介入局面と比べて他のドルペアへの波及も大幅に抑えられていたと指摘した。


これは介入がなかったことを示す状況証拠であって確証ではなく、日本の当局は選択肢を温存し続けている。三村淳財務官は木曜日、足元の値動きについて「満足もしていないし、安心もしていない」と述べ、当局は引き続き警戒レベルを高めていると語った。


三村財務官は金曜日、日本は米国当局と常時連絡を取り合っていると発言し、その直後にドルは155.305円まで下落した。


高田委員発言で「利上 げの有無」から「速度」へ論点転換

日銀の高田創審議委員は9月2日(水)、札幌で講演し、市場が想定してきた半年に1回という固定的なペースにこだわらず、強まるインフレ圧力に対応するため機動的に利上げすべきだと主張した。同氏は2026年を転換点と位置づけ、利上げのペースと幅の両方で柔軟性が必要だと述べ、適切な速度は各会合ごとに判断すべきだとの考えを示した。


高田委員は7月会合で、政策委員会が1.0%での据え置きを決めた中、唯一1.25%への引き上げを主張して反対票を投じた人物だ。ロイターは別途、日銀が早ければ9月17日から18日の会合での利上げに応じる用意があり、その後は年2回程度だった最近のペースよりも速い利上げの連続実施を検討していると報じている。


市場は現在、今月0.25%の利上げが実施される確率を約75%と織り込んでいる。一部のトレーダーはより大幅な利上げの可能性も話題にしているが、それをメインシナリオとしているわけではない。10月の追加利上げは可能性としてはあるものの、公算は大きくないとみられている。この織り込み直しは債券市場にも表れており、2年物日本国債利回りは1995年以来の高水準となる1.83%まで上昇し、10年物利回りは3%に達した。


米金利観測、ドルに 逆風

クリストファー・ウォラーFRB理事は木曜日、今後発表されるデータでインフレ圧力の鈍化が確認されれば、今月はFF金利誘導目標を3.50%から3.75%で据え置くべきだと主張したい意向を示した。


この発言直後、9月利上げの織り込み確率は59%から48%に低下し、金曜日には約50%となった。ケビン・ウォーシュ議長がタカ派的な内容で臨んだジャクソンホール講演の前、8月下旬時点では確率は40%に近い水準だった。ドル指数は木曜日に0.69%下落して98.91となり、金曜日は99.01でほぼ横ばい、週間では0.7%の下落となる見通しだ。


ドル円が織り込むのは、現在の政策金利差そのものではなく、両国の政策金利の今後の道筋である。金利差は依然として約2.5から2.75ポイントと大きく、どちらか一方の一度の利上げや利下げで縮まるものではない。今週変わったのは、双方の金利パスの想定される方向が、そろって円高方向を指し始めたという点だ。


ドル円はなぜ今動き、8月にはほとんど反応しなかったのか

8月27日、氷見野良三副総裁は追加利上げを支持する姿勢を示し、政策当局は物価の上振れリスクにこれまで以上に注意を払う必要があると述べた。しかしドル円の値動きは0.1%未満にとどまった。既に87%が織り込まれていた以上、タカ派的な当局者の発言は、トレーダーが数週間前に到達していた結論を追認したにすぎなかった。


高田委員が取り上げたのは、まだ未確定だった変数、すなわち次回会合以降に何が起こるかという点だった。続いてウォラー理事は、ジャクソンホール以降円の重荷となっていたもう一つの変数を動かした。どちらも9月会合そのものの確率ではない。


円高が進むために必要だったのは、一回の会合に対する確率の上昇ではない。必要だったのは、次回利上げ以降の日本の動きの速さを市場が見直すことと、米国側の引き締め観測がそれ以上強まらなくなることだった。この二つが今週そろって実現した。ドル円が155円台に下落した原因は、まさにこの日米政策パスの同時再評価に帰着する。


ドル円の次なる試練 は155円

155.20円から155.25円のレンジは、構造的な支持線というより直近の参照点にすぎない。これは7月に当局の後ろ盾を受けて円が達成した最高値であり、金曜日には後ろ盾なしで同じ水準を再び試したことになる。


この水準を明確に下回って推移すれば、介入以上に市場自身の力で円高を進められることを示すシグナルとなる。雇用統計の弱さ、FRB利上げ観測のさらなる後退、日銀の正常化加速を裏付けるより確かな証拠、そして米10年債利回りの約4.77%からの低下、いずれもこうした展開を後押しする材料となる。


この水準を維持できなければ、ドル円は今週前半に取引されていた156円から158.7円のレンジへと押し戻されるリスクがある。ストレッチ氏は現在の織り込みをすでに「タカ派的すぎる」と評しているが、利上げペース加速をめぐる思惑が続けば、まずドルの買いポジションが先に踏み上げを迫られる可能性もあると警鐘を鳴らしている。


まずは雇用統計、そして 2つの中銀会合へ

本稿執筆時点で8月の雇用統計はまだ発表されていない。市場予想は7月の2万3000人減少の後、5万5000人から5万8000人程度の増加を見込んでおり、失業率は4.1%で横ばいとの見方が多い。ADP民間雇用統計は3万8000人増と、市場予想を下回った。


市場の反応パターンはここ数年とは逆転している。強い結果が出ればタカ派的な材料となり、9月のFRB利上げ観測が息を吹き返してドルを押し上げる。逆に弱い結果ならその観測は後退し、155円が再び視野に入る。来週には消費者物価指数と生産者物価指数の発表が控え、続いて9月15日から16日にFOMC、その2日後に日銀会合が開かれる。


ドル円の今後 の焦点

8月下旬時点での謎は、日銀利上げが大幅に織り込まれていたにもかかわらず、なぜ円が160円近辺に低迷したままだったのかという点だった。この問いには、次回会合以降のあらゆる材料が織り込み直されたことで答えが出た形だ。


円がこの水準を維持できるかどうかは、今や財務省ではなくデータ次第だ。7月に介入によって到達した水準に、今回は介入なしで並んだことになる。この水準を割り込んだ状態を維持するには、日米の金利パスの想定が引き続き収斂していく必要があり、まずは雇用統計がその最初の判断材料となる。ドル円が155円台に下落した原因を突き詰めれば、それは介入ではなく、日米両中銀の政策軌道に対する市場の再評価にこそ求められる。


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