2025-10-01
FXアリゲーター手法は、ビル・ウィリアムズという有名な相場理論家が考案したトレンドフォロー型の分析方法です。彼は「相場の混乱(カオス)」を見抜くための理論を提唱し、その中の代表的なツールのひとつが「アリゲーター」です。
この手法は、3本の異なる移動平均線を使い、相場が「眠っている(レンジ)」のか「目を覚まして捕食する(トレンド発生)」のかを分かりやすく示してくれます。線の動きをワニの口(あご、歯、唇)にたとえているため「アリゲーター」と呼ばれています。
FXアリゲーター手法の基本構造
アリゲーター手法は、3本の移動平均線を組み合わせて相場の方向性を読み解くインジケーターです。それぞれの線は「ワニのあご・歯・唇」にたとえられており、相場が静かな時(レンジ)と、活発に動き出す時(トレンド)を直感的に理解できるように工夫されています。
3本の移動平均線
1.ジョー(Jaw)=長期移動平均線
一番長い期間を基にした線で、ワニの「あご」に例えられます。
市場の大きな流れ(長期トレンド)を示し、相場の土台となる部分です。
2.ティース(Teeth)=中期移動平均線
中くらいの期間を基にした線で、ワニの「歯」にたとえられます。
長期の流れと短期の動きをつなぐ役割を持ち、相場のバランスを取る線です。
3.リップス(Lips)=短期移動平均線
最も短い期間を基にした線で、ワニの「唇」に例えられます。
値動きに素早く反応し、トレンドの始まりや方向転換のシグナルを出す重要な線です。
設定方法
一般的には 13期間(ジョー)・8期間(ティース)・5期間(リップス) の平滑移動平均(Smoothed Moving Average, SMA)を使用します。
さらに、それぞれ数本のローソク足を未来方向にシフトさせて表示することで、トレンドの動きを先取りして見やすくしています。
トレンドの判断方法
アリゲーター手法の最大の特徴は、相場の「眠り」と「目覚め」を視覚的に判断できる点です。3本の移動平均線(ジョー・ティース・リップス)の位置関係を見るだけで、レンジ相場なのか、それとも新しいトレンドが始まっているのかを判断できます。
① 3本の線が交わっている状態=レンジ相場(アリゲーターが眠っている)
3本の線が絡み合い、方向感がなく横ばいになっているときは「レンジ相場」です。
この状態ではワニ(アリゲーター)が眠っていると表現され、無理に取引すると「ダマシ」に遭いやすいのが特徴です。
トレンドフォローを狙うなら、この段階では様子見するのが賢明です。
② 線が開き始める状態=トレンド発生(アリゲーターが目覚める)
短期線(リップス)が中期線(ティース)と長期線(ジョー)を突き抜け、3本が同じ方向に並び始めると「トレンド発生」のサインです。
上昇トレンドの場合:リップス → ティース → ジョーの順で上から並ぶ
下降トレンドの場合:リップス → ティース → ジョーの順で下から並ぶ
この段階は「アリゲーターが目を覚まし、捕食を始める」と例えられ、積極的にエントリーを検討できるポイントです。
③ 線の広がり具合でトレンドの強さを把握
3本の線の間隔が広がるほど、トレンドが強いことを意味します。
特にローソク足が線の外側で推移している場合は、強いトレンドが続いている可能性が高いです。
一方、間隔が徐々に縮まってきたら、トレンドが弱まりつつあり、利確や手仕舞いを検討するタイミングとなります。
エントリーとエグジットの方法
アリゲーター手法では、3本の移動平均線(リップス・ティース・ジョー)の位置関係を利用して「どのタイミングで入るか、どのタイミングで出るか」を判断します。特にリップス(短期線)の動きは、エントリーの初動をとらえる重要なサインとなります。
① 上昇トレンドでのエントリー
条件:リップス(短期)がティース(中期)とジョー(長期)を下から上に抜ける。
解説:この瞬間、短期的な買いの勢いが中期・長期の流れを上回ったと判断でき、上昇トレンドが始まるサインとされます。
具体例:
リップス → ティース → ジョー の順で上から並んだら、上昇の勢いが強まっている証拠
ローソク足も3本の線の上側で推移していれば、さらに信頼性が高い
戦略:この場面で買いエントリーを検討
② 下降トレンドでのエントリー
条件:リップス(短期)がティース(中期)とジョー(長期)を上から下に抜ける。
解説:短期の売り圧力が強まり、中期・長期の方向性も下向きに傾いたサイン。下降トレンドの初動をとらえることができます。
具体例:
リップス → ティース → ジョー の順で下から並んだら、強い下落トレンドの可能性
ローソク足も3本の線の下側で推移していれば、売りエントリーの信頼度が高まる
戦略:この場面で売りエントリーを検討
③ トレンド収束時のエグジット(決済)
サイン:3本の線の間隔が徐々に狭まり、再び絡み合い始める
意味:トレンドが弱まり、相場がレンジに移行する可能性が高い
ポイント:
利益を確定する絶好のタイミング
ローソク足が3本の線の内側に入り込んでしまった場合は、トレンド終了の可能性が強いため早めの決済を検討
④ 応用的な使い方
エントリー直後に損切りポイントを設定(例:直近安値や高値を基準にする)
他のインジケーター(RSIやMACD)と併用して「トレンド強度」を確認することで、ダマシを回避できる
FXアリゲーター手法のメリット・デメリット
FXアリゲーター手法は、トレンドフォローを前提としたシンプルな分析手法ですが、得意な場面と苦手な場面がはっきりしています。ここではその長所と短所を整理します。
メリット
トレンドフォローに強い
トレンドが発生すると3本の線が同じ方向に並ぶため、方向感が視覚的にわかりやすいです。
特に強い上昇・下降トレンドでは、シンプルに従うだけで大きな利益を狙えます。
視覚的でシンプル
線の広がり=トレンド、線の収束=レンジ、と直感的に把握できます。
初心者でもチャートに慣れるための教材として活用しやすいでです。
相場の「休むべきタイミング」がわかる
線が絡み合っているときは「レンジ相場=エントリーを避けるべき局面」と判断できます。
「いつ入らないか」を明確に示してくれる点は、無駄な取引を減らす助けになります。
他のインジケーターと組み合わせやすい
RSIやMACD、フラクタル指標などと一緒に使うと、ダマシを減らし精度を高められます。
単体よりもフィルターとして活用することで、戦略の幅が広がります。
デメリット
レンジ相場ではダマシが多い
価格が横ばいのときは、リップスが頻繁にクロスするため、誤った売買シグナルが増えます。
特に短期足では、細かい上下動に振り回されやすいです。
遅行性がある
移動平均線を使うため、トレンド発生の初動をとらえるのがやや遅れます。
出遅れによって、エントリーが遅くなり、利益を取り逃がす場合があります。
決済タイミングが難しい
トレンド終了を見極めにくい場面があります。
線の収束を待ちすぎると、せっかくの利益が大きく削られてしまいます。
結論
FXアリゲーター手法は、相場の流れをシンプルに捉えられるトレンドフォロー型のツールです。3本の線の動きを見るだけで、今が「トレンドが始まる局面」か「レンジで休むべき局面」かを判断しやすくなります。
ただし、レンジ相場ではダマシのシグナルが出やすいため、注意が必要です。そのため、RSIやMACDなど他のインジケーターと組み合わせて使うことで、精度を高められます。
結論として、FXアリゲーター手法は「トレンドをしっかりとらえる」ための強力な味方になりますが、万能ではないので、相場状況に応じて柔軟に使うことが大切です。
免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。