2025-09-02
RTX(旧レイセオン・テクノロジーズ)は、世界有数の防衛・航空宇宙企業であり、戦闘機やミサイルシステム、航空機エンジンなど幅広い分野で事業を展開しています。防衛需要の高まりや航空需要の回復を背景に、業績は市場から注目されており、RTX株価動向は投資家にとって重要な関心事となっています。
RTX株価の最新動向
1.株価水準
直近(2025年8月29日終値)でのRTX株価は約158.60USDです。
2.最近のトレンド
8月26日には前週比で上昇し、52週高値を更新して159.57 USDに達しました。
その後、8月29日にかけて若干の調整が入り、終値は158.60 USD。これは一日の下落(−1.28%)となりましたが、依然として高水準を維持しています。
その直前にあたる8月28日に記録された52週高値は161.26 USDであり、現在はわずかに下回る水準にあります。
3.過去数カ月~1年のトレンド分析
中期~長期の上昇トレンド
今年(2025年)の株価は、下期にかけて順調に上昇し、4月7日に記録した安値 112.27 USD から、7月〜8月にかけて高値更新が続いています。
7月のブレイクアウト
7月23日には、RTX株価が約 156.49 USD に急上昇し、52週高値を更新。取引量も50日平均(5.6M株)を大きく上回る8.6M株となり、強い買いが入ったのが窺えます。
技術的指標の強さ
相対強度(Relative Strength, RS)レーティングが 80以上(正確には81)に向上し、市場内での強さが際立っています。多くの上昇相場の株はRSが80を超えてから上昇トレンド入りする傾向があります。しかし、現時点では「買いゾーン」には入っておらず、今後のベース形成後のブレイクアウトに注目が集まります。
3.他の防衛関連銘柄や市場全体との比較
対市場の比較
8月26日には、S&P 500が+0.41%、ダウ平均が+0.30%の中でRTX株は+2.11%と相対的に上昇しましたが、ボーイング(BA)+3.51%など他銘柄には劣後しました。
一方で、7月23日はS&P +0.8%、ダウ +1.1%の中で、RTXが+4.9%と大きくアウトパフォームしました。
競合銘柄との比較
8月26日:RTXは+2.11%だったのに対し、ボーイング(BA)+3.51%、TransDigm(TDG)+1.68%、Textron(TXT)+0.77%。
8月29日:RTXは−1.28%下落する一方で、ボーイング −0.63%、TransDigm +0.06%、Textron −0.37%と、RTXはやや下振れした動きでしたが、大崩れは回避しています。
業績・財務状況
最新の決算内容
RTXの2025年第2四半期決算は、売上高が前年同期比で約1割増と堅調でした。EPS(1株当たり利益)はアナリスト予想を上回り、利益面でも力強さを示しています。また、受注残高は過去最高水準を維持しており、今後の収益の下支え要因となっています。
主力事業の収益動向
防衛関連:世界的な地政学リスクの高まりを背景に、防衛システムの需要が拡大し、安定成長を続けています。
航空エンジン(Pratt & Whitney):旅客需要の回復により、エンジンの販売・整備需要が増加。ただし一部ではコストや供給網の制約が課題。
アビオニクス(Collins Aerospace):商用機アフターマーケットの伸びが顕著で、業績にプラス寄与しています。
財務健全性
負債水準は比較的高めではあるものの、利息支払い能力や現金保有額は十分で、短期的な資金繰りに不安はありません。キャッシュフローについては、一部の事業停止やコスト増の影響で四半期ごとの変動が見られますが、通期では安定的にプラスを確保できる見通しです。
成長要因と強み
世界的な防衛需要の拡大(地政学リスクの影響)
世界各地での地政学的緊張の高まりを背景に、防衛予算の拡大が続いています。特にアメリカや欧州ではミサイル防衛システムや先進兵器の需要が増加しており、RTXは政府との長期契約を通じて安定的な収益基盤を確保しています。この需要の底堅さは、景気変動の影響を受けにくいという強みでもあります。
航空旅客需要回復による商用航空部門の成長
コロナ禍以降の航空需要回復が進み、新造機向けエンジンや部品、さらにアフターマーケット(整備・修理)の需要が拡大しています。RTX傘下のPratt & Whitneyは主要航空機向けエンジンを供給しており、航空会社からの発注増加が収益拡大につながっています。商用分野の成長は、防衛分野と並んで同社の二大柱となっています。
技術力・長期契約による収益安定性
RTXはミサイル防衛、航空エンジン、レーダーシステムといった先端技術に強みを持ちます。これらの製品は代替が難しく、長期契約に基づいて供給されるため、収益の安定性が高い点が特徴です。また、政府や大手航空会社とのパートナーシップによって、長期的なビジネス継続性が保証されている点も投資家から評価されています。
リスク要因
供給網問題や部品不足
RTXは高度に複雑な部品・素材を世界中から調達しています。半導体や特殊合金などの供給が滞れば、生産遅延やコスト増に直結します。特に航空エンジンや防衛システムの納期は契約上厳格に管理されるため、サプライチェーンの混乱は収益性や信用に影響を及ぼすリスクがあります。
国防予算の変動や政治的リスク
同社の収益の大部分は政府系契約に依存しています。米国議会での予算編成や国際的な政策の転換によって、契約規模や新規受注が左右される可能性があります。また、政権交代や外交政策の変化によって、防衛関連の需要が一時的に抑制されるリスクも存在します。
為替や金利の影響
グローバルに事業展開しているため、為替変動が収益に影響します。特にドル高局面では、海外収益の目減りにつながる恐れがあります。また、金利上昇局面では資金調達コストが増加し、設備投資や株主還元余力に影響を与える可能性があります。
技術開発競争
防衛・航空宇宙産業は技術革新のスピードが早く、競合他社(ボーイング、ロッキード・マーチン、GEなど)との競争が激化しています。研究開発投資が不十分であれば、競争力低下につながり、長期的なシェア喪失や収益性悪化のリスクがあります。また、新技術の開発に失敗した場合、多額の損失や評価減を計上する可能性もあります。
アナリスト評価・市場予測
1.アナリスト評価と目標株価
多くの証券会社はRTXを「買い」または「やや買い」と評価しています。
目標株価は 158〜182ドル の範囲に集中しており、現在株価(約156ドル前後)からは 数%〜10%弱の上昇余地 があると見られています。
2.配当と株主還元
RTXは 31年連続で増配 を実施しており、2025年も配当を約8%引き上げました。
配当利回りは 1.7〜1.8%程度 と安定的で、潤沢なキャッシュフローを背景に株主還元姿勢を維持しています。
3.株価予想レンジ
短期(数カ月):160ドル前後
中期(1年程度):165〜170ドル
長期(2〜3年):180ドル近辺も視野
総じて、市場は「防衛需要の拡大と安定した配当」を評価しており、中長期的な堅調推移が期待されています。
今後の見通しと投資戦略
1.RTX株価の中長期的な見通し
RTX株価は、防衛関連需要の強さと航空需要の回復を背景に、中長期的には堅調な上昇基調が期待されます。短期的には金利や為替の影響で値動きが不安定になる場面も想定されますが、政府契約や受注残高の厚みが下支えとなり、安定した成長が見込まれます。アナリストの目標株価レンジ(160〜180ドル前後)を踏まえると、数年スパンでは着実な株主リターンが期待できる状況です。
2.投資家にとっての注目ポイント
防衛関連需要:米国や同盟国の国防費拡大が続き、ミサイル防衛や航空機システムの需要が追い風
航空需要の回復:民間航空分野では旅客数増加に伴い、エンジン販売や整備需要が拡大。防衛と商用の二本柱で収益を分散できる強み
配当利回りと還元姿勢:31年連続の増配実績を持ち、2025年も配当を増加。キャッシュフローの安定性から、長期投資家にとって魅力的なインカムゲイン源
3.リスクを踏まえた投資スタンス
投資家は以下のリスク要因を意識しておく必要があります:
サプライチェーンの混乱による生産遅延
国防予算の変動や政治的リスク
技術開発競争の激化によるシェア変動
為替・金利変動の影響
したがって、長期保有を前提に、分散投資の一部として組み込む戦略が有効です。配当を受け取りつつ、将来の株価上昇を狙う「インカム+キャピタルゲイン型」の投資が望ましいと考えられます。
結論
RTX株価は、防衛需要の拡大と航空需要の回復という追い風を受けて、安定した成長基盤を持っています。一方で、サプライチェーンの課題や国防予算の変動といったリスク要因も存在します。
投資家にとっては、
成長機会:防衛分野の長期的需要、航空旅客回復、安定的な配当
リスク要因:政治・経済の影響、技術競争、為替や金利動向
の両面を意識することが重要です。
総じて、RTXは長期投資に適した銘柄候補といえ、配当を受け取りながら着実な成長を期待する投資家に向いています。
免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。