公開日: 2026-05-23
2026年は中東情勢の緊迫化やホルムズ海峡リスクを背景に、石油化学の基礎原料であるナフサの供給不安が急速に強まっています。日本はナフサ輸入の多くを中東に依存しており、供給停滞によってエチレン設備の稼働率低下や樹脂価格の上昇が発生しています。実際に、2026年3月の国内エチレン設備稼働率は68.6%まで低下し、過去最低水準となりました。
こうした影響は、包装材・建材・自動車部品・食品容器など幅広い業界へ波及しています。TOTOの一部製品受注停止や、ラップ・シンナー・テープ類の値上げ報道も出ており、企業のコスト負担増加が鮮明になっています。さらに、ナフサ由来製品の価格上昇による家計負担は年間2万〜3万円超との試算もあります。
その一方で、「ナフサ不足で上がる株」として注目される銘柄も増えています。特に、原油高メリットを受けやすい石油元売り、資源権益を持つ総合商社、価格転嫁力の高い化学メーカー、リサイクル素材関連企業などには資金流入期待が高まっています。市場では、ENEOS、信越化学、レゾナック、三井化学などの関連株に注目が集まっています。
ナフサ不足とは?なぜ今問題視されているのか

1.ナフサ不足とは?なぜ日本経済に影響するのか
ナフサは原油を精製する際に得られる石油化学の基礎原料で、エチレンやプロピレンなどを生産するために使われます。これらはプラスチック、食品包装、自動車部品、半導体材料、医療用品など幅広い製品の原料となるため、ナフサ不足は日本の製造業全体に波及します。
特に日本はナフサ輸入の7割超を中東に依存しており、ホルムズ海峡を通る輸送ルートへの依存度も極めて高い状況です。2026年は中東情勢の悪化によって物流が混乱し、国内石化メーカーが減産対応を進めています。
2.最新データで見る2026年の深刻な供給不安
石油化学工業協会によると、2026年3月の国内エチレン設備稼働率は68.6%となり、1996年以降で過去最低を記録しました。エチレン生産量も前年同月比38.8%減の27万2600トンまで落ち込んでいます。稼働率が70%を下回るのは初めてで、市場では「危機的水準」とも言われています。
また、日本国内のナフサ在庫は約20日分程度との試算もあり、供給停止が長期化すると石化プラント停止リスクが急拡大します。三菱ケミカルなど大手化学メーカーではすでに減産が始まっており、設備停止リスクも警戒されています。
3.ナフサ不足で上がる株と市場の注目テーマ
こうした状況から、「ナフサ不足で上がる株」として注目されているのが、石油元売り、総合商社、高機能素材メーカー、代替素材関連企業です。原油価格上昇メリットを受けやすいエネルギー企業や、価格転嫁力の高い化学メーカーには資金流入期待が強まっています。
一方で、包装材や樹脂製品、建材関連では値上げや供給制限が広がっており、シンナー・ラップ・テープ類の供給不安も報じられています。信越化学では塩ビ樹脂の約2割値上げも伝えられ、市場では素材価格上昇が企業業績へ与える影響に注目が集まっています。
ナフサ不足で上がる株の特徴
1.価格転嫁できる企業は「ナフサ不足」で強い
「ナフサ不足で上がる株」としてまず注目されるのが、原材料高を販売価格へ転嫁できる企業です。2026年はナフサ価格高騰を受け、化学メーカー各社で値上げが相次いでいます。特に高シェア企業や生活必需品向け素材メーカーは、需要が安定しているため価格改定を進めやすい状況です。
例えば、塩ビ樹脂・半導体材料・包装材向け素材を扱う化学メーカーでは、原料コスト上昇分を製品価格へ反映する動きが加速しています。一方で、中小メーカーや競争の激しい業界では価格転嫁が難しく、利益圧迫リスクが高まっています。市場では「価格転嫁力」が銘柄選別の重要テーマになっています。
2.代替原料を持つ企業への評価が上昇
ナフサ依存を減らせる企業も投資家の注目を集めています。特にLNG由来原料、バイオ原料、リサイクル樹脂などを活用できる企業は、供給不安の影響を相対的に受けにくいと見られています。
現在、日本の石化業界はエチレン原料の大半をナフサへ依存しており、ホルムズ海峡リスクが直接経営へ影響する構造です。そのため、原料多様化を進める企業には資金流入期待が高まっています。実際、各社は中東以外からの調達やリサイクル素材活用を急いでいます。
また、脱炭素政策やESG投資の流れも追い風となり、ケミカルリサイクル関連やバイオプラスチック関連株への関心も強まっています。
3.資源・エネルギー関連株にマネー流入
ナフサ不足局面では、原油価格上昇メリットを受けやすい資源・エネルギー関連株も買われやすくなります。特に石油元売り、総合商社、資源開発企業は、エネルギー価格上昇が収益拡大につながりやすい特徴があります。
2026年3月以降、中東情勢悪化を背景に国内エチレン設備稼働率は68.6%まで低下し、1996年以降で最低を記録しました。エチレン生産量も前年同月比38.8%減となっており、供給不安が市場心理を強く刺激しています。
この影響で、エネルギー権益を持つ総合商社や、精製マージン改善が期待される石油元売り株へ資金が流入しています。市場では、原油価格とナフサ価格の連動性を意識したテーマ投資が活発化しています。
ナフサ不足で上がる株一覧
1.石油元売り・資源株|原油高メリットで注目される銘柄
ENEOSホールディングス
国内最大の石油元売りであり、ナフサ供給の中核企業として市場の注目を集めています。中東情勢悪化による原油価格上昇局面では、精製マージン改善が期待されやすい点が強みです。市場では「ナフサ不足 で上がる株」の代表格として取り上げられています。

INPEX
原油・天然ガスの上流権益を持つため、資源価格上昇の恩恵を受けやすい銘柄です。特にアブダビなど中東権益比率が高く、原油高局面では収益改善期待が強まります。資源安全保障関連としても資金流入が続いています。
三菱商事 ・ 三井物産
総合商社はLNG・原油・化学原料の調達網を持つため、供給不安局面で存在感が高まっています。2026年は「現物を確保できる企業」が評価されやすく、エネルギー権益を持つ商社株へ資金流入が続いています。
2.代替原料・高機能素材株|ナフサ依存が低い企業に注目
信越化学工業
市場で「ナフサ不足の本命株」とも言われる注目銘柄です。米国子会社シンテックがエタン原料を活用して塩ビを生産しており、ナフサ依存度が相対的に低い点が強みです。ナフサ価格高騰時には競争優位性が高まりやすいと見られています。
さらに2026年4月には塩ビ樹脂を約2割値上げし、価格転嫁力の高さも市場で評価されています。インフラ向け需要も強く、利益確保能力に注目が集まっています。
ダイセル
バイオプラスチックや生分解性樹脂を手掛ける企業として注目されています。ナフサ由来素材の代替需要が拡大する中、環境対応素材関連としても期待されています。ESG投資との相性も良く、中長期テーマ株として評価されています。
日本製鉄
石炭化学由来のコールタール副産物を供給できる点が注目されています。ナフサ代替原料への関心が高まる中、BTX原料関連として評価される場面が増えています。
3.逆風と回復期待が交錯する石化株
三井化学
ナフサ依存度が高いため、2026年3月には国内証券会社が投資判断を引き下げました。エチレン稼働率低下や原料コスト上昇が業績圧迫要因とされています。
ただし直近では、同社CFOが「ナフサ調達は2カ月先まで目途が立ちつつある」と説明しており、供給改善期待も出始めています。市場では「悪材料織り込み後の反発余地」を意識する投資家も増えています。
三菱ケミカルグループ
エチレン設備減産の影響を受けやすく、ナフサ不足の逆風銘柄として警戒されています。一方で、高機能材料や半導体素材分野の成長期待もあり、短期悪化と中長期成長が混在する銘柄として見られています。
レゾナック・ホールディングス
ナフサ由来原料への依存度が高く、原料調達リスクの影響を受けやすい企業です。ただし、半導体材料事業の成長期待が根強く、AI・データセンター関連需要との両面で注目されています。
逆に注意したい「ナフサ不足で下がる株」
1.包装材・食品容器関連|コスト増が利益を圧迫する銘柄
カルビー
2026年5月、主力ポテトチップス製品の包装を白黒仕様へ切り替えると発表し、市場で大きな話題となりました。背景には、ナフサ不足による包装用インクやフィルム材料の調達不安があります。包装コスト上昇は食品メーカー全体の利益率を圧迫する要因として警戒されています。

大日本印刷
食品包装や機能性フィルムを手掛ける大手企業です。ナフサ由来の樹脂・インク・接着剤価格上昇の影響を受けやすく、包装材コスト増が収益圧迫要因になっています。食品・飲料業界では価格転嫁に時間差があるため、短期的には利益率悪化懸念があります。
TOPPANホールディングス
包装フィルムやラベル事業を展開しており、原材料高の影響を受けやすい銘柄として注目されています。特に食品容器・軟包装分野では、顧客との価格交渉にタイムラグが生じやすく、ナフサ高騰局面では利益圧迫リスクが意識されています。
2.日用品・衛生用品関連|樹脂依存度が高い銘柄に逆風
ユニ・チャーム
紙おむつや生理用品には、ナフサ由来の不織布・吸水材・樹脂素材が大量に使われています。2026年は原材料価格上昇が続いており、吸水材価格の値上げも進行しています。生活必需品のため需要は安定していますが、価格転嫁が遅れる局面では利益率低下リスクがあります。
花王
洗剤・シャンプー・化粧品容器などでプラスチック使用量が多く、ナフサ価格上昇の影響を受けやすい企業です。界面活性剤やボトル素材価格の上昇がコスト増要因となっており、原材料インフレへの対応力が注目されています。
ライオン
歯磨き粉・洗剤・ハンドソープなど幅広い製品を展開しています。包装材・容器・物流資材価格の上昇が利益を圧迫する可能性があり、市場では「価格転嫁力」が重要視されています。
3.自動車部品・建材関連|合成樹脂・ゴム依存が重荷に
ブリヂストン
タイヤ原料には合成ゴムが使われており、ナフサ不足によるブタジエン供給不安の影響を受けやすい銘柄です。2026年はタイヤ・ゴム部材価格の上昇懸念が強まっており、自動車向けコスト増が課題となっています。
豊田合成
内装材・樹脂部品・エアバッグ関連製品を手掛けており、ナフサ由来樹脂価格の上昇が収益へ影響しやすい企業です。自動車メーカー向け部品は価格転嫁が難しいケースも多く、利益率悪化懸念が意識されています。
TOTO
ユニットバスや住宅設備には樹脂・接着剤・断熱材が多用されています。2026年には一部製品の受注停止も報じられ、建材・住宅設備業界への供給不安が顕在化しました。建設業界ではシンナー価格が最大80%上昇したとの報道もあり、コスト高が大きな課題となっています。
ナフサ不足はいつまで続く?
1.短期見通し|2026年夏までは「供給不安は続く」が、一部緩和の兆しも
2026年春以降のナフサ不足は、ホルムズ海峡リスクによって急速に深刻化しましたが、足元では政府主導の備蓄放出と代替輸入によって、最悪期を回避する動きが出ています。
経済産業省は2026年5月、民間備蓄義務を通常70日分から55日分へ引き下げる措置を継続すると発表しました。また、中東ルートを通らない代替調達について、5月時点で約6割、6月には7割超の確保に目途が立ったと説明しています。
ただし、市場では依然として「時間稼ぎ段階」との見方が強く、日本の石化産業が直接使えるナフサ在庫は約20日分程度との指摘もあります。特にエチレン原料の95%をナフサへ依存する日本の構造は非常に脆弱で、供給が再び滞れば減産リスクが再燃する可能性があります。
そのため短期的には、
国家備蓄放出
非ホルムズ航路の活用
米国・東南アジアからの代替輸入
によって急激な供給崩壊は回避される一方、価格高騰や一部製品不足は2026年後半まで続く可能性が高いと見られています。ラップ、シンナー、包装フィルム、物流資材などでは既に値上げや供給制限が発生しています。
2.中長期見通し|地政学リスク定着で「脱ナフサ」が加速へ
中長期では、今回のナフサ不足をきっかけに、日本企業の「脱中東・脱ナフサ」が急速に進むとの見方が強まっています。
現在、日本のナフサ輸入に占める中東依存度は約7割超とされ、2020年以降むしろ依存度は上昇していました。しかし今回の危機によって、「調達先分散の必要性」が経営課題として一気に浮上しています。
今後は、
LNG由来エタン活用
バイオプラスチック
ケミカルリサイクル
再生可能エネルギー活用
国内サプライチェーン再構築
などへの投資が加速すると予想されています。特に米国型の「エタン原料モデル」への注目が高まっており、日本企業でも原料多様化の動きが広がっています。
また、市場では「ナフサ不足 で上がる株」として、
資源権益を持つ総合商社
LNG関連企業
リサイクル素材企業
バイオ素材メーカー
エタン活用企業
への中長期資金流入期待が強まっています。一方、ナフサ依存型の汎用石化企業には構造改革圧力が続く可能性があります。
よくある質問(FAQ)
Q1.ナフサ不足で最も恩恵を受ける業界は?
ナフサ不足では、原油価格上昇の恩恵を受けるエネルギー・資源業界が最も有利で、特にENEOSホールディングスやINPEX、さらに三菱商事などの総合商社が「ナフサ不足で上がる株」として注目されます。
Q2. ナフサ不足関連株は短期向き?
ナフサ不足関連株はニュースや原油価格の動きに反応しやすく短期資金が入りやすい一方、脱ナフサや代替素材の進展により中長期テーマとしても継続する可能性があります。
Q3. 半導体関連にも影響はある?
半導体製造にはナフサ由来の高機能樹脂や化学材料が不可欠なため影響は大きく、信越化学工業やレゾナック・ホールディングスなどの材料メーカーが注目されています。
Q4. 今後ナフサ価格はさらに上がる?
中東情勢や原油価格の動向次第では高止まりまたは再上昇の可能性があり、短期的な供給対策が進んでも構造的な供給不安は残ると見られています。
Q5. 初心者でも注目しやすい関連株は?
初心者には値動きが比較的読みやすく配当も期待できる三井物産やENEOSホールディングスなどの大型資源・商社株が注目しやすい銘柄とされています。
まとめ
ナフサ不足は石油化学業界にとどまらず、包装材・自動車・建材・日用品など日本の製造業全体にコスト上昇と供給不安を広げています。その一方で、「ナフサ不足で上がる株」としては、原油高の恩恵を受けるエネルギー企業や、資源権益を持つ総合商社、さらにナフサに依存しない代替素材を持つ企業に資金が流入しています。今後の銘柄選別では、原材料高を製品価格に転嫁できる力と、エタンやバイオなど代替技術を持つかどうかが重要なポイントになります。