公開日: 2025-11-18
ビリビリ株価(NASDAQ:BILI)は直近約26ドル前後を推移しており、過去1年間で約+40%超の上昇を見せています。
株価上昇の背景には、最新の第3四半期決算で広告収入が強く伸びたことやアナリストによる目標株価の引き上げが挙げられます。
一方で、売上成長ペースに対して慎重な見方も浮上しており、今後の成長維持に対する疑問が投資家の懸念材料となっています。
一、最新ニュースの要点

1.決算内容と市場反応
売上高は人民元76.9億元(約10.8億米ドル)で、前年同期比で+5%の増加となりました。
広告収入が76.9億元中25.7億元(約3.61億米ドル)となり、前年同期比+23%と力強い伸びを記録しました。
総粗利益は28.2 億元(約3.96億米ドル)で+11%増、粗利益率も36.7%へと上昇しました。
調整後純利益は7.863 億元(約1.105億米ドル)で、前年比+233%と急拡大しました。
一方で、モバイルゲーム収入は前年同期比-17%と減少しており、ゲーム部門の苦戦が目立ちます。
同社のDAU(1日あたりアクティブユーザー数)は1.173億人、前年同期比+9%、月間有料会員数は3.500万人で+17%というユーザー拡大の流れも確認されました。
市場では、この決算発表を受けて株価がプレマーケットで約-4.8%下落したと報じられています。
2.アナリスト・目標株価の動き
CFRA Researchは、ビリビリの12ヶ月目標株価を32ドル→29ドルに引き下げ、評価を「Hold(据え置き)」としました。理由としては「トップライン成長ペースの慎重な見方」を挙げています。
同時に、Benchmark Co.は目標株価を28ドル→29ドルに引き上げ、「買い(Buy)」評価を維持しました。こちらは「広告およびゲーム部門の成長見通し改善」を根拠としています。
投資家としては、こうしたアナリスト間の評価の「温度差」も注目すべき材料です。
3.短期的に注目すべき点
ユーザー伸び・広告収入増という「質的成長」のシグナルは明確ですが、売上全体の伸びが5%と比較的控えめであるため、「成長の鈍化懸念」も同時に噴出しています。
アナリストが目標株価を下げる一方で、別のアナリストが引き上げるという二極化した見方は、「今後の実行が市場の信頼を左右する」ことを示唆しています。
短期的には決算内容に対する反応で株価の上下が出やすいため、出来高やチャートの動きを注視する価値があります。
二、決算の中身
1.売上・利益・ユーザー指標
Bilibili Inc.(NASDAQ:BILI)が発表した2025年第3四半期(9月30日終了)の業績では、売上高が人民元 76.9 億元(約10.8億米ドル)と、前年同期比+5%の増加となりました。
粗利益は人民元28.2億元(約3.96億米ドル)で、前年同期比+11%。粗利益率も36.7%に改善しました。
調整後(non-GAAP)純利益は人民元7.863億元(約1.105億米ドル)で、前年同期比+233%。調整後純利益率は10.2%となりました。
ユーザー指標も好調:1日あたりアクティブユーザー数(DAU)が1億1.700万人で前年同期比+9%、月間アクティブユーザー数(MAU)が3億7.600万人で+8%、月間有料会員数(MPU)が3.500万人で+17%。平均1日あたり滞在時間は112分と、前年同期から+6分。
2.成長分野の内訳:広告、ゲーム、サブスクリプション等
広告収入が特に伸びており、広告セグメントの売上高は人民元 26 億元(約3.64億米ドル)前後で、前年同期比+23%。
モバイルゲーム収入は前年同期比-17%と減少しており、ゲーム部門が全体成長を抑える要因になっています。
VAS(付加価値サービス:動画視聴・プレミアム会員等)収入は人民元 30.2 億元(約4.24億米ドル)前後、前年同期比+7%。
3.注目点:粗利益率の改善・AI投資・収益構造の変化
粗利益率の改善(34.9%→36.7%)により、収益性改善が見られ、13四半期連続で改善していると会社側が述べています。
同社は「高品質コンテンツとコミュニティ強化を通じて、ユーザー増加・滞在時間増加・有料会員増を実現し、商業化への流れを強めている」とコメントしています。
一方で、ゲーム部門の収益減少と売上スピードの鈍化という「成長ペースの鈍化懸念」も浮上しており、広告以外の部門の強化・収益多様化が今後の焦点となります。
三、市場とアナリストの見解

1.主要アナリストの格付け・目標株価の変化
CFRA は、Bilibili Inc.(NASDAQ:BILI)に対して 12 ヶ月目線の目標株価を32ドル→29ドルに引き下げ、格付けを「Hold(据え置き)」としています。これは、収益性改善が確認される一方で「トップライン成長(売上やユーザー拡大ペース)に対して慎重な見方」が出てきたため、という解説があります。
他方、Benchmark Co.は同社の目標株価を28ドル→29ドルに引き上げ、「Buy(買い)」の評価を維持しています。こちらは「広告・ゲーム部門の成長見通し改善」というポジティブ材料を挙げています。
また、Citigroup は、ビリビリに対して「Neutral(中立)」の評価を維持し、株価予想レンジの中での位置付けとしています。
過去数か月を振り返ると、例えば Bernstein SocGen が 10/23/2025 に目標株価を 28ドル → 32ドル に引き上げ「Outperform(優秀)評価」を付けたという報道もあります。
2.分析・解釈:二極化する見解が示すもの
上記のように、同じ企業・同じ決算をめぐって「目標株価を上げる」アナリストと「引き下げる」アナリストが混在しており、これは「成長ドライバーは見えてきたが、節度ある成長を維持できるか/収益化ペースが速いかどうか」という点で見方が割れていることを示しています。
特に、ゲーム事業の減速や売上成長率の低下懸念が、慎重派アナリストの警戒材料として取り上げられています。これがCFRAの目標引き下げ理由の一つです。
一方、広告収入の拡大やユーザー増加というポジティブなトピックを強調するアナリストは、目標株価の引き上げを行っています。
このような「評価が揃っていない」状況は、短期的には株価のボラティリティ(変動)を高める要因になります。投資家は、どちらのシナリオ(成長維持 or 成長鈍化)を採るかでポジションの取り方が変わってきます。
3.投資家視点からの注目ポイント
アナリストが「Buy」「Outperform」など強気評価を付けている場合、その根拠として「新ゲームタイトルのヒット」「広告単価の上昇」「ユーザーマネタイズの改善」などが挙げられています。
一方で「Hold」「Neutral」の評価では、「成長鈍化」「収益構造の転換リスク」「競争激化」「規制リスク」などが警戒材料になっています。
したがって、投資家は「そのアナリストがどの要素(成長・収益化・リスク)を重視しているか」を見極めた上で、自分の投資期間(短期/中長期)・リスク許容度に応じて利用することが重要です。
また、アナリスト評価の更新タイミング(決算発表直後、通期予想引き上げ/引き下げ時)や、その背景となる会社コメント・市場環境も追って確認しておくと良いでしょう。
四、資本政策・財務面
ビリビリは、2025年5月に5億7.500万ドルの転換社債(Convertible Notes)を発行しました。これは同社にとって重要な資金調達施策であり、財務基盤の強化と今後の成長戦略を進めるうえで大きな意味を持ちます。
まず、転換社債の発行目的としては、
オリジナルコンテンツやIP投資などの成長領域への積極投資
既存の借入金の再調達による財務コストの最適化
市場状況を見た自社株買い(買戻し)の実施余地を確保
などが挙げられます。
一方、投資家にとっては 「希薄化リスク」 が重要な論点となります。転換社債は将来、株式に転換される可能性があるため、発行済株式数が増えると既存株主の持分比率が低下する可能性があります。しかし、ビリビリとしては、
調達した資金を成長投資へ充てることで企業価値を引き上げる
将来的に売上・ユーザー数が拡大すれば希薄化を上回る株価上昇余地が生まれる
という、長期的なメリットを投資家へ示しています。
総じて、今回の転換社債発行は、短期的には希薄化の懸念があるものの、ビリビリが長期成長へ向けて財務戦略を明確に進めている証拠とも言え、同社の事業拡大にとってプラス材料と考えられます。
五、成長ドライバーとリスク
▶ 成長ドライバー(ビリビリ株価を押し上げる要因)
1.AIによる広告精度の向上
ビリビリは近年、AIレコメンドやユーザーデータ解析を強化しています。これにより、
広告のターゲティング精度が大幅に改善
広告主にとって費用対効果(ROAS)が向上
広告単価(CPM)の上昇が期待
といった構造的メリットが生まれ、広告事業の収益性向上につながっています。
2.プレミアム会員(有料会員)の増加
アニメ・ゲーム・エンタメを中心に「独自性の強いコンテンツ」が多く、ビリビリはコアファンを惹きつける力が強いサービスです。
有料会員が増加すると、
安定したサブスクリプション収益の確保
広告依存度を下げられる
LTV(Lifetime Value)の改善
が可能になり、収益基盤が強固になります。
3,高品質オリジナルコンテンツへの投資
ビリビリはアニメ制作や自社IPへの投資を継続しており、これが新規ユーザー獲得の原動力になっています。
高品質作品がヒットすれば、
新規ユーザーの流入
継続視聴によるアクティブ率向上
関連グッズ、イベントなど周辺収益の拡大
など、多角的なメリットが生まれます。
4.中国若年層に強いブランド力
「Z世代のニコニコ動画」ともいえるコミュニティ性が強く、若年層の支持が厚いため、長期のユーザーベース形成に優れています。
▶ リスク(投資時に注意すべきポイント)
1.ゲームセグメントの成長鈍化
ビリビリの収益の一定割合を占めるゲーム事業は、タイトル依存度が高く、新作がヒットしない場合に成長が停滞するリスクがあります。
また、中国国内のゲーム許認可(版号)政策の影響も避けられません。
2.トップライン(売上)の成長鈍化
ユーザー数は増加しているものの、収益化の伸びが市場の期待に追いつかない可能性があります。
もし広告事業やサブスクの成長が鈍化すると、株価にも圧力がかかります。
3.市場センチメントの影響(中国株全体の風向き)
中国テック株は、政策発言、米中関係、景気指標などでセンチメントが大きく変わります。
個社の業績が良くても、外部環境で株価が押し下げられることがある点は注意が必要です。
4.米中リスク・規制リスク
データ規制
未成年向けコンテンツ管理強化
中国政府によるプラットフォーム監督
など、政策一つで事業環境が変わる可能性があります。
5.希薄化(転換社債)リスク
ビリビリは2025年に転換社債を発行したため、将来これが株式に転換されると 発行済株式数が増え、既存株主の持分比率が低下する恐れ があります。
ただし調達資金を成長投資へ使うことで、株価上昇が希薄化を吸収できるかどうかが焦点です。
結論
▶ 短期視点(1〜3か月)
ビリビリ株価は、決算内容やアナリストの目標株価変更などのニュースで大きく動きやすい状況です。
そのため短期では、
好材料が出たときの押し目買い
ネガティブ材料へのヘッジ(短期の利益確定など)
といった柔軟なトレード戦略が必要になります。
▶ 中長期視点(半年〜数年)
中長期では、ビリビリが進める
AI活用による広告収益の強化
コンテンツ(アニメ・ゲーム)への投資
コミュニティ基盤の強さ
この3つが成長のカギになります。
これらが順調に進めば、広告やサブスク収益の拡大につながり、長期的な株価上昇のシナリオが描けます。
一方で、
コンテンツ投資の回収が進まない
ユーザー成長が鈍化
中国テック規制の強化
などが起こると、成長が想定より遅れ、株価の重しになる可能性があります。
よくある質問
Q1. 今すぐ買いなのか?
現時点では「中立~慎重な買い検討」が妥当です。
直近の決算ではユーザー数・粗利益率改善などポジティブな面がありますが、売上成長率が市場期待にはやや届かないという見方もあります。
また、主要アナリスト(例:CFRA Research)が目標株価を引き下げています。
これらを踏まえると、短期では「決算発表直後の反応を見てから」ポジションを取るのがリスク管理上賢明です。
中長期で「広告収益や有料会員拡大が順調に進む」という筋道を信じるなら、将来の収益拡大を織り込む買いも検討できます。
Q2. 発行された転換社債はビリビリ株価にどんな影響を与えるの?
希薄化リスクと成長支援の両面があり、どちらが勝るかがカギです。
この転換社債により、将来的に株式に転換される可能性があり、発行済株式数が増えることで既存株主の割合が低くなり得ます(希薄化)。
一方で、調達された資金がオリジナルコンテンツや広告プラットフォーム強化といった成長戦略に使われれば、企業価値が上がり株価の上昇につながる可能性があります。
したがって、投資家としては「この資金がどこに、どれだけ効率的に使われるか」をモニタリングすることが重要です。
Q3. 成長鈍化懸念って具体的に何が問題なの?
主に以下の3つに集約されます。
モバイルゲーム収入の落ち込み:同社のゲーム部門で収益減少が報告されており、このままだと成長ポートフォリオの一角が弱くなります。
売上成長率の低下:ユーザー数や会員数は増えていますが、売上ベースでの伸びが期待を下回ると「成長モデルの持続性」に疑問が出ます。
外部環境の悪化:中国テック規制、広告景気の後退、米中間の地政学的リスクなどがあるため、企業努力だけではカバーしきれないリスクがあります。
Q4. 長期(1〜3年)でこの株を持つなら、どんな条件が整えば上手くいく?
以下の条件がクリアできれば良好な成長シナリオが描けます。
広告事業が高成長を維持し、広告単価の上昇や広告主数の拡大が確認されること。
プレミアム/有料会員の増加が加速し、サブスクリプション収益比率が高まること。
コンテンツ投資(アニメ・コミュニティ・IP)からヒット作品が出て、ユーザー基盤の強化と収益化拡大につながること。
転換社債発行に伴う希薄化効果を上回る株価上昇が実現すること。
中国およびグローバルな規制・競争環境が優位性を保てるものとなること。
Q5. 今後半年で注意すべき株価トリガー(きっかけ)は?
次のイベント・指標がトリガーになります。
次回決算発表:特に「広告収益」「有料会員数」「ゲームセグメントの動向」の発表内容。
アナリストによる目標株価・格付けの更新。強気/慎重どちらに転ぶか。
中国国内および国際的な規制発表(例:未成年規制、プラットフォーマー監督強化)や広告市場の景気動向。
株価チャート上の重要価格帯(支持線/抵抗線)のブレイク。出来高の急増など技術的なサイン。
免責事項: この資料は一般的な情報提供のみを目的としており、信頼できる財務、投資、その他のアドバイスを意図したものではなく、またそのように見なされるべきではありません。この資料に記載されている意見は、EBCまたは著者が特定の投資、証券、取引、または投資戦略が特定の個人に適していることを推奨するものではありません。